ぬぬ

 新型コロナの感染拡大、大雪、津波と、つぎつぎ被さるように災害が押し寄せてきます。
 行動が制約され、家族がいっしょにいる時間が増えてきたかもしれませんね。
 コロナ以前からいつも時間を気にし、セカセカと、効率よく暮らすことばかりに追われて来たような気がしませんか?
 この頃こんなことを考えています。
 今は私の子どもの頃より、ずっと、数字に脅かされている気がします。
 かつては縄跳びにも歌があって、あそびになっていました。「一羽のカラスがかぁーか」とか「ゆうびんやさん おとしもの……」なんてやりませんでしたか? 今や何回跳べたかの数に挑戦し、競い合っているように思います。
「いちりっと らんらん……」「いちもんめの いーすけさん……」と、歌にあわせてまりつきをしました。何回という数字の目標を掲げてがんばるのもいいけれど、楽しみながら、あそびながら上手になっていくのもいいですよね。
 お風呂に父といっしょに入ると「坊さん坊さんどこいくの・・・」とわらべ歌をうたって、最後の「うしろのしょうめん だあーれ」で、タオルを空気で膨らませたのをぶちゅぶちゅとつぶすのが大好きで「もういっかい!」とねだったものです。「五十まで肩までしずんでね」より楽しい。
 1970年代くらいから、地域の子どもの群れがなくなったと言われています。あそびが伝承されなくなりました。さらに、おとなが忙しい生活になったことで、ゆとりの時間や気持ちまでもが消えてきた気がします。
 特に子どもは、朝から晩まで時間に追われています。早く起きなさい! 遅刻するでしょう! 早く食べなさい! お風呂入って! もう、寝なさい。学校でも然り、給食でさえ「20分で食べましょう」。
 成績の評価は点数、テストをもらってくれば点数に一喜一憂し、誉められたり励まされたり、叱られたり。
 そして、ストレス解消は家族で外に出かけて、楽しんでくる。
 かつては一家団欒という言葉がありました。家の中で家族で楽しむ時間です。オランダの子どもの幸福度が高い理由の一端に、家族の時間がたっぷりあることが関係しているように思います。
 コロナのせいで外に制約が多くなった今、わが家の文化を創っていきませんか? 家での過ごし方にメリハリをつけて、仕事、勉強、家事だけでなくあそぶ時間を作るのです。
 子どもに折り紙を習って、いっしょにするのもいいですよね。だって、おとなは鶴しか折れなくなっていませんか? 子どもって本を見ながら、スイスイ折っていきますよ。
 縫い物や編み物も好きです。針と糸は4歳くらいでも大丈夫です。危険を伴うことには集中力が発揮されますから。指編みというのもあります。指と毛糸があればいけます。みんなで編んだのを繋げて敷物にするのも素敵。
 絵本を読みっこしてみませんか? 絵本は文字を読めるようにするためのものではありません。字が読めても読んでもらうのはずっと楽しいです。おとなだってね。今日はお母さんが選んだお母さんの本、今日はお父さん、今日は子ども……とそれぞれが見せたい本を家族で読み聞かせごっこ。絵本を通して、それぞれの人柄やメッセージも伝えていくことになります。
 いっしょにトランプだっていいですよね。子どもは神経衰弱が得意です。真剣にやり合いましょう。すごろくやゲームだっていいです。鉛筆と紙さえあればできるものもありましたよね!
 子どもをだしにして、子ども心の復活です。おとなも、子ども心は持っています。きっと、いっしょに夢中になれます。その時間をつくる気にさえなればいいのです。
 親の趣味に子どもを巻き込むのだっていいですね。
 私の母は絵を描くのが好きでした。掘りごたつの真ん中に花を置き、それぞれのスケッチブックに描いたものです。父は「ラジオを作ろう」と言い出して、一週間に一回ラジオの先生がやってきて、みんなで完成させて聞き入ったものです。
 お風呂のスイッチを押す人を、ジャンケンやくじ引きで決めませんか? 
 食器を流しに運ぶのをジャンケンにするのもいいかも。
 毎日のメニュー決めや料理作りに参加してもらうのもいい。
 たぶん、そんなことが子どもにとって『楽しかった子どもの頃』となる気がするのです。思い出すと温かい気持ちになる、そんな人にとってのふるさと時代が、外の制約がある今だからこそ、つくりやすいのではないかと思うのです。
 いかがでしょう? 豊かさは足元に……。 
 

注意:はじめからうまくはいきません。いきなりだと子どもも戸惑います。けれど、日々やっていくうちに馴染んでいけます。それが、文化というものです。(1月16日 記)

 

●最近のバックナンバーはここをクリックしてください。