ぬぬ

 季節の移り変わりの早いこと、この前桜の花だと思ったら、バラが咲き、ツツジになってきました。外出がめっきり少なくなって、たまに遠出したら緑が眩しいです。
 やっとゴールデンウイークになりましたね。ニュースを見るとみなさんお出かけ、私も気持ちは大自然を望んでいますが、現状は散らかった家の中でパソコン前に原稿書きに追われています。雨が降っていると「どこもいかないし、降ったらいいわ、緑が美しくなるしね」なんて、意地悪なことを思っています。

 先日、<動物村>と呼んでいる4歳児数人が、部屋の中で物を投げていました。同じ部屋には、布を数枚身体に巻きつけ、一枚を頭からかぶっているお化け姫がしずしずと歩いています。
 何でも次々投げている連中に言いました。
「柔らかいものは投げても痛くないけど、堅いものは痛いよ」って。
 だって、プラスチックの箱なども平気で投げているんですから。
 当然「わかった」と言うと思うでしょう?
 ところが「これは?」って聞いてくるんです。
「これは布だからだいじょうぶ」と言うと、また持って来るんです。「これは?」って、いちいち聞きに来るのをみて「わかっていないのかも?」と思いました。
 投げるとおもしろいという自分の気持ちはわかっている、だから、投げる。
 けど、当たった人が痛いか痛くないかなんて、想像もしていないのかも。
 え〜、驚きました。そうなんだ。<自分の気持ちに必死な3歳児>を過ごしてきたけれど、相手の気持ちを想像するってまだ難しいんですね。
 どうすれば、相手の気持ちに気づくのでしょう? この例で言うなら、「これが当たったら痛いかも」って、想像できるってことです。
 体験以外ないのかしら? 自分が人に当てられて「いたいからやめて!」と言う。当てられても痛くなかったから、これは投げてもだいじょうぶと思うようになる。そんなわかりかたって、すごーく手間暇かかりません? それに、ものを投げ続けていくなんて、たまんないですよね。
 そこで「それ投げたら痛いよ!」と、おとなが言葉でストップをかける。子どもは投げたら言われるから投げなくなっていく。そのうち投げたら痛いという想像ができるようになって、投げなくなるという経路でしょうか?
 知っていることとわかっていることは違うということを、子どもたちといると思うのです。物を投げて、相手が痛い思いをしたり、たんこぶできたり、怪我したら、物を投げたら文句なしに、痛いし、危ないと実感できる。
 けど、言われ続けた場合は<投げたら痛い>という言葉を知っているから、コントロールできるようになっていくけど、わかってはいない? 体験はわかることに繋がる、けど、そんなことやっていられないから、口を酸っぱくして言い続けて、わからなくてもいいから自分にストップをかけられるようにする。確かに、すべてに体験学習をして学んでいくわけにはいきませんよね。
 聞いて知っていくことの量の多さと比べると、わかっていることって少ない気がします。でも、生きていくうちには、知っていることがストンと自分の内面に落ちるようにわかっていくことがありますよね。
 かつて、初めてネパールの行ったときのことです。8千メートル級の山々が連なるエベレスト山脈を目の前にしました。片方には太陽が、反対側には月が出ていました。『神々しい』って、こういうことだったんだと衝撃が走りました。他の言葉では表せないのです。『神々しい』という言葉の意味が初めて身体で納得したのです。ここまでのことでなくても、こういう体験は何歳になっても、ときどきします。

 同じ日に、4歳の子が色水を作っていました。バケツに黄色と緑と……いろいろ混ぜてチョコレート色になっていました。私が「あら、チョコレートとみたいね」と声をかけたら「コーヒーなんだ」と言いました。そして、なんとバケツのコーヒーを一気に流してしまいました。
 せっかくつくった色水、ポスターカラーだっていっぱい使ったのに、なんてもったいないと即座に思う私。その子はこうつぶやきました「あつくて、のめないんだ」って。
 その子は色をつくることに夢中だったから、もう、満足したからいらなくなったのか、コーヒーをイメージして、コーヒー=熱いからいらないと思ったのかどうなんでしょう? 
 子どもを観ているといろんなことを思います。そして、正解にたどり着けないことばかり。子どもの頭の中をのぞいてみたいくらいになります。
 子どもをわかろうとするのはすごく難しいです。言葉での説明はないし、いっしょにいて想いを巡らしても、想像の域を脱しません。一人ひとり違うしね。
 果てしなく深い子どもの世界、だからおもしろいのかもしれません。
 いつか「子どもがわかった!」と身体の中にストンと落ちるときがくるのでしょうか? まず、無理でしょうね。  (5月2日 記)

 

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