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 山梨県北杜市清里にある「キープ自然学校」に5歳児と一泊で行ってきました!
 本来は雪遊びを楽しむつもりなのですが、このところは雪が少なく、今回も全く望めないとの情報でした。
 けれど、宿舎の入り口近辺には新しい雪が! 前日に降ったそうで、足跡ひとつありません。だから、すぐ子どもは歩きます。あっというまに雪がペッタンコ。だって、あったといっても数センチですからね。
 宿舎は貸し切り状態なので子どもに任せていますと、ほんとに走りっぱなし。止まれない動物たちのようです。同時に声も出ます。
 着替えて森を散歩します。登りやすそうな木を見ただけで、登りはじめます。大きな木は難しい子は、ちゃんと側のほどよい木を見つけて鈴なりになっています。遠くには八ヶ岳連峰が見えているというのに、だれも気がつかないようす。
 雪を集めて丸く固めた子どもたちは手放せません。まだ歩き始めから胸に抱え込んでいます。川の氷の上を滑り、森の中でたき火をしようと、案内人の小西貴士さんが誘導してくれます。

「火を焚くから燃えそうなのを集めてね」の声かけで、私がすかさず落ちている小枝を拾おうとしたら「落ちているのは火が着きにくいから、こういうのがいいよ」と枯れている草、葦のようなのを折ります。

 あ〜そうか。

 こんなことも考えていない私? 子どもたちと同じようにいろんなことを知っていきます。マッチ一本で紙も使わず、火種を作り起こします。ボーボーと燃えます。もう燃えているけど、マッチを擦りたい子は順番に回しています。

 雪だるまを抱いて顔色が真っ白になっていた子は、冷え切ってしまったようです。ビニール袋に入れて寒いところに置き、本人は火を囲んで温まりました。やっと暖かくなってきたかと思うと、周辺に散っていく子ども。川を見つけ、木の一本橋を渡る。子どもたちを見ていると確かに頭と心と体が一体化しているように見えます。そして、その子どもの気持ちは、言葉ではなく、全身で表現しているのを実感しました。
 帰ってきても走り回ります。おやつもなしでしたから、お腹はぺこぺこ。食堂に行くと、新鮮な野菜、ポテト、鶏肉の焼いたもの、グラタン、味噌汁。まあ、その食べっぷりのいいこと。このときばかりは静かでした。出されたおひつの中のご飯は空っぽ、どれもこれも空っぽ、調理の方々も驚くほど「すごい食欲ですね」。これは翌日の朝も、昼もでした。よくあそび、よく食べ、そして、大騒ぎで風呂に入り、寝る。健康な子どもたちです。どの子も自分を開き、安心し、輝いていました。
 夜の散歩も小西さんが来てくれました。残念ながら鹿には会えませんでしたけれど、満天の星、一番星の金星はすごい輝きでした。
 実は若者不足で18歳の大学生に同行してもらいました。その人が「ぼく、いままで、こんな星を見たことがありません」と感激し、子どもたちを寝かせてから30分くらい寝転んで見に行ったそうです。初めてということに、私は驚いてしまいましたけど、確かにまだ18年しか生きていないんですものね。そんな歳から感激の始まりだったかもと振り返りました。
 翌日はみんなソリあそび。建物前が程よい傾斜です。私は見ていようと決め込んでいました。だって、寒いせいか膝が痛いんです。ソリに座るときがスムーズに行かないに決まっています。

「さ、そろそろ帰るよ。お終いにしよう」と保育者の声。

「このまま一回もソリをやらずに帰るのですか? あいこさん」と自問自答。一回はやることにして、ソリにどんとぶざまな格好で座りました。うまくありません。方向が右に行ってしまいます。これで終わりは許せないと、肩にかけていたポシェットをおろし、どんと座り・・・さっきよりいい感じ。とうとう子どもたちがほぼいなくなったときに3回できました。座るときだけ痛いけど、滑っているのは気持ちいい。歳をとって身体の自由が損なわれるのがいちばんいやです。身体は退化していく。だけど、どこか進化しているとこだってあるはずです・・・・・そうね、口かしら?

 一緒に行っても、自分のことで精一杯。まめに動かず、役に立たないおとなです。保育者スタッフの皆さん、連れて行ってくれてありがとう!


 実は今回行かなかった子が二人いました。5日間くらいかけて、子どもたちはどんなところで、どんなあそびができるのか聞いて想像してきました。前日、自分で行くか行かないかを決めて宣言します。この二人は決心できませんでした。みんなが寂しくなったときの対策を提案しました。一緒に行きたいと誘いました。でも、とうとう当日まで迷い、バスの中まで入ってきて「いかない」という結論を出しました。ぎりぎりに自分が実感しなければ出せなかった結論なのでしょう。
 行けるか行けないかが問題ではないのです。自分の気持ちに向き合って、自分で結論を出して、行動することが大事だと考えています。行くのも勇気、行かないのも勇気なんです。こんなときおとなは辛くなります。特に親はね。背中を押して行かせたくなってしまいます。それを引き受けてもらい、置いてく保育者も実は重いです。
 でも帰ってきたとき、その子のスッキリした笑顔が迎えてくれました。自分の出した結論を、たぶん初めて実行した落ち着きを感じました。決めてからは「いま、なにしているかなぁ」と口にしていたそうです。他の子どもたちは拾ってきた松ぼっくりや氷のおみやげを渡していました。
 行くも良し、行かないのも良し、その子自身の育ちの足しになればいいのです。心の体験も大事な体験です。 (1月24日 記)

                                  

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