柴田 愛子    

パッチワーク=福島裕美子 
  


 10月29日から8日間、りんごの木は秋休みにさせていただいていました。
 春、夏、冬と休みがあるのに、季候のいい秋にないのはおかしいという、私の勝手な理屈で毎年つくらせてもらっています。(いっしょに、つれづれAikoも、お休みをいただきました。)

 昨年、沖縄本島から飛行機で1時間の石垣島に行き、人生初めてのシュノーケリングで海の世界をのぞかせてもらって感動でした。
 今年は、そこからさらに船で一時間、日本最南端の島「波照間島」に行ってきました。
 海はとてつもなく綺麗でした。サトウキビ畑は「ざわわ ざわわ」と歌っていました。
 夜空は満点の星でした。
 時がたつと共に、時間を忘れ、気持ちが解きほぐされていくのがわかりました。もちろんシュノーケリングもしました。

 そこでは民宿に泊まりました。
 朝、家の前に出ると、その宿の姉妹5歳と2歳の子が、手にかごを持っていました。
「どこへいくの?」と聞くと「おさんぽ」
「どこいくの?」と聞かれたので「海」
「じゃぁね、いってらっしゃーい」と彼女たちをお見送りしました。なんども振り返って、手をふっていました。
 その後ろ姿は、ちゃんと一人前でした。

 この光景、ありそうでないと思いません? 
 今や幼い子だけでお散歩に行ける地域は、どのくらいあるでしょう。

 私たちが帰ると、その子たちはビニール袋で遊んでいました。
 夕方出てみると、一緒に行った仲間と数人の子どもが遊んでいました。アイスクリームを食べていたら「あそべる?」って聞かれたそうです。
 6時になると、スピーカーから音楽が流れ「6時です。みんな家に帰って、お家の手伝いや勉強をしましょう。遊んでいる子がいたら声をかけてください」という声も流れました。
 島のおとなは愛想はないけれど、温かな気持ちがあちらこちらで感じられました。どの人が幼い姉妹の親かわからないほど、子どもは子ども同士でいましたし、おとなたちは自然に接していました。

 思い出しました。先日取材で東京の葛飾に住んでいる編集者と話していたときです。私が公園の水を使うのも、公共の水を子どもが遊びに使うことに後ろめたさを持っていて、お母さんたちは止めに入るという話をしていたときのことです。
 そう、お母さんたちは子どもが公園で水いたずらをするのを見ているのは、勇気がいると言います。
 私でさえ、一応周囲の人の顔色をうかがってしまいます。
 ところが、その人が「え?! 公園の水ですよ! 子どもがですよ!」と言うではありませんか。
「お宅の方はいいの?」と聞きますと、
「子どもが公園の水で遊んでいるときに、文句言う人なんていません。よほど、ジャージャー出していれば別ですけど」というじゃありませんか、そういえば大阪から引っ越してきた人も、ここ横浜に来て驚いたというのです。

 時代と国によって、子育て観や常識は違うと、常々言ってきましたが、同じ日本でも、地域によってずいぶん違うものなのですね。波照間にいって、より強く地域事情の違いを感じました。

 ちなみに、波照間は中学校までしかありません。高校からは石垣島の高校の寮にはいるか、下宿するかだそうです。でも、幼い頃にちゃんと自立心が育てられているから大丈夫という気がしました。
 子どもが安心して歩ける地域に、私たちはもどせるのでしょうか……。(11月6日 記) 

 

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