柴田 愛子    

パッチワーク=福島裕美子 
  


 秋晴れが続いています。

 ここでも何回か登場している通称「はたけ」で過ごす一日は、とってもたっぷりしています。
 ツリーハウスの下では、数人が泥団子を作っていました。泥の団子の上にかけていくきめの細かい、砂のような土の粉のようなのは、それぞれの子がふるいにかけて“マイバケツ”に入れています。
 小屋の中では、色紙に絵を描き本を作っている子とネコごっこをしている子。日向ぼっこのような空気が流れています。
 片隅の畑でとれたサツマイモがひなたに干され、数本を焼きイモにしています。
「やけたよー」と、まつのおっちゃん(スタッフの一人)が声をかけると、子どもが数人寄ってきます。新聞紙にくるんでもらって食べてます、「ほく、ほく、あっちっち」と言いながら。
 ままごとの所からは、餃子のような匂いがします。近づいてみると、おいしそうなニラがたくさん生えていて、ままごとに使われていました。
「たべます?」と声をかけられて、うそっこのニラ料理をご馳走になりました。
 お母さんのおみやげ用に、ビニール袋に入れている子もいます。柔らかくって、おいしいそうです。
 
 女の子数人が大縄跳びをしていました。
 近づいてみると、縄ではなくて水道のホースを回していました。重そうで、回す子も大変そう。
 跳んでいる子も、ひっかかるとバッタンと倒れます。でも、土なので怪我にはなりません。
「つかれちゃったから、まわしてくれない?」と頼まれ『おもち』になりました。
 ほんとに重い。子どもだけでよくやってるものです。
 始めは、「いち はいれ!」「にい はいれ!」「さん はいれ!」と子どもが増えていき、「いち ぬけろ!」と、だんだん出て行くというやり方です。
 なにしろ、縄跳びあそびを教えたわけでないので、縄跳び歌をしりませんが、これはシンプルでわかりやすい。
 やがて、ひとりが二回ずつ跳んで出て、一回間をあけて、次の子が入るというのを繰り返していきました。そのうちに間をあけずに二回ずつ、とうとう、一回ずつ間をあけないで跳んでいくという、私が小学生の時に流行った形の跳び方になりました。もう、私の心は小学生。
「おもち、代わって! 私も跳ぶ!」
 跳んで抜けると、駆けてきて並び、また跳んで……。
 早い! うそ! 疲れる! 
 まだ、数回しかしていないのに「タンマ!」
 歳を取ったと思い知らされた瞬間でした。

 近くで数人の子に囲まれて、みかちゃんが泣いています。行ってみました。
 どうやら6人で王様ゲームをやっていたようです。このゲームはなかなかむずかしいのです。
 2チームに分かれ、それぞれに内緒で王様を決めます。「はじめ」の合図で出陣、相手チームをタッチし、ジャンケンします。負けた子はその場に座る。
 座った子を助けられるのは王様だけです。だから、王様は捕まってしゃがんでいる子を、どんどん助けなければなりません。でも、王様がタッチされ、ジャンケンで負けると、ゲーム終了になってしまいます。そこで、相手チームに王様がばれないように動くのです。
 数年前から伝承されているので、上に兄姉がいる子や、年上と遊ぶのが好きな子は、経験を積んでおもしろさがわかっています。「かってにやめるなよな!」と、けいくんとひろきくん。
「だって、むずかしくって、わかんないんだもん!」と、みかちゃんは泣いています。
 どうやら、みかちゃんが勝手に辞めたと責めているのです。
「わかんなくても、やめちゃいけない」
 おやおや、無茶なことを。
 ところが、いちばん攻撃しているけいくんは、涙をぼろぼろこぼしながら、責めているんです。
「だって、みかちゃんやめたら、2たい3になってあそべないじゃないか! やめちゃいやだ」
 どんなに、このあそびがやりたいのかが伝わってきます。
 でも、みかちゃんのわからないから辞めたい気持ちもわかります。
 こんなときはどうしたらよいのでしょう。私は役立たずで、困って、泣く二人の子を代わる代わる眺めていました。
「はる、はいるよ」
 かっこよく、はるちゃん登場です。周りで様子を見ていた連中の中から、はるちゃんが前に出てきたのです。
「あー、よかった!」
 なんて、すてきな解決法。二人とも涙が止まりました。ゲームは再開です。

 視線を上げると、丹沢の山々の上に遠く富士山が見えます。青い空には飛行機が見えます。
 畑のカキの実もおいしそうに色づき、キウイもたくさん採れました。
 焼きイモの煙の臭いがしています。
 秋晴れの日、子どもたちがいる風景の中にあって、幸せな気分をいただきました。(11月13日 記) 

 

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