柴田 愛子    

パッチワーク=福島裕美子 
  


 あいみちゃんが、ひとりで机に向かって、何やらシコシコやっています。
「なにやってるの?」と近づいてみると、いろいろな色と大きさの丸いシールを小さな折り紙に張り合わせて、ウサギの絵にしていました。それを何枚も作っています。
「あのね、これ、くじびきであたるの」
 脇にはティッシュペーパーの空き箱があり、その中にビー玉が入っていて、その色によって違うものが当たるそうです。くじ引き屋をやる前段階の作業なのですね。
「てつだってくれる?」と言うので「いいわよ」と丸いシールを見ていると、あいみちゃんと同じウサギを作るのはイヤだなと思いました。私はキリンが好きです。キリンにすることにしました。
 黄色いシールを長く続けて張り、半分に切ったのを顔にして・・・・と、ちょっとは変だけど、まあいいかと思い、
「はい、あいみちゃん」と渡すと、「あー、キリンなのね」
 ちょっと見たかと思ったら、
「これは、あいこさん、うちにもってかえって」とやんわりと返されました。
 どういうことかピンと来なくて、
「キリンだっていいでしょう」と差し出すと、困ったような顔で、
「これはいいわ」と返されました。
 えー! 信じられない、なにがいけないの? という気持ちと、いつも元気でやんちゃで自分本位だったりする彼女が、こんなふうに断る術を身につけていたかと思うと、これまた感無量って感じで、こちらも強引にできない。

 そこへ、さ−ちゃんと、ほのかちゃんがやってきました。
「あいみ、なにやってるの?」と、くじ引きのことを聞き、
「いれて」「いいよ」となりました。
 ほのかちゃんはウサギを作りました。あいみちゃんのとは違いますが、ウサギです。
「これ、だしてくれる?」と見せに行きましたら、
「いいよ」ですって。
 ほのかちゃんは、
「わたしのは、いいって」
と私に言いました。誇らしげに。
 さーちゃんは違う動物でした。何だったかちょっと忘れましたが、作りながら「これ、あいみ、いいって、いってくれるかなー」と言いながら作っています。さーちゃんは以前「風船バレー(第36回)」でも登場し、リレーでみつきちゃんを抱いて一周走った(第42回)先輩格のお姉さんです。やる気満々で、負けず嫌いで、強気です。取り仕切っていることが多いのです。その彼女が、「ドキドキするー」なんて言いながら、できあがりをあいみちゃんに見せに行きました。
 うれしそうな、誇らしそうな顔を私に見せ、
「いいって」と言いました。
 何やらしゃくぜんとしない私は「いいもん」と、カバンに自分のを入れました。
 うちに帰って見たら、全然かわいくなくて、すてました。

 子どもの関係って面白いですね。あるときは威張っていた子が、あるときは従順に従い、あるときは泣いていた子が、あるときはリーダーシップをとっている。
 たぶん、遊びを始めた子が、その遊びに関しては、いちばん決定権を持っているというルールが、口で決めたわけでもなく、自然と生まれているということなのでしょう。
 あいみちゃんは、私が子どもでも「おうちにもってかえって」と断ったのでしょうか。ぜひ、今度はそのへんを目撃したいものです。(12月25日 記) 

 今年も今週で終わりですね。
 今年は雪で年越しの地方も多いようです。みなさん、寒さに負けず、雪を楽しみ、お元気で新年をお迎え下さい。
 私の仕事始めは7日から、富山でスタートです。雪国、うれしい! 
 一週お休みして11日から始めるつもりです。来年もつれづれaikoをよろしく。


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