柴田愛子 

●フラワーアレンジ  
   アトリエ レ・ポンム


 今年もプールが始まりました。
 3歳児は、庭にひろげたビニールプールで、存分にあそんでいます。
 ちょっと気温が低いと、プールの縁でビニール袋に水を入れたり、器から器に移したり、おもちゃを沈めたりしています。
 暑くなると、中に入ったきり出てこないのですから、まるで温度計です。身体で寒暖を感じるのはお手のものといった年頃でしょう。
 4歳、5歳はプールに出かけます。ありがたいことに、公共の室内プールも屋外プールも歩いて20分くらいの所にあります。準備体操代わりに歩いて行くのに、ちょうどいいのです。

 先週、5歳児といっしょに室内プールに行きました。
 そこには、深い大人用25メートルプールと、深さ1メートルくらいのと、30センチくらいで滑り台がついている幼い子向けのと、三つあります。
 驚いたことに、大人用は5レーンのうち泳いでいるのは2レーンだけ、あとは歩いています。結構の人数で、まるで銀座通りのようにおしゃべりをしながら歩いています。
 いつのころから、プールは泳ぐところではなくなったのでしょうね。

 子どもたちのほとんどは、中くらいのプールに入ります。
 子どもは歩いたりしません。バチャバチャ、手と足をめちゃめちゃに動かしている子、もぐれるようになって下にお尻をつける繰り返しをやっている子、「さかだち、できる!」と、足を水面から出す子。どの子も「みてて!」「みてて!」の連発。挑戦している自分を見てほしいのです。「すごいね」と言ってほしいのです。
 浮き輪を大事そうに抱えている子もいますが、ときどき浅い方に行ってみて、ワニのように身体を伸ばしてみたり、滑り台をしたり、それなりに、自分に挑戦をしています。

 ふと見ると、昨年、浮き輪をはずしてみごと泳げるようになったはずのりおちゃんが、両腕にヘルパーをはめて、大人にくっついているじゃありませんか。
「あら、りおちゃん、去年、泳げるようになったんじゃなかった?」と声をかけました。
 久しぶりだったので、ちょっと、めげていたようですが、声をかけられて勇気がわいてきたようです。腕のヘルパーをはずしました。
「プールの壁を蹴って、こっちへおいで!」と言うと、30センチくらい離れて手を差し伸べている私めがけて来ました。顔を沈め、手を伸ばし・・・・この一回で、感覚を取り戻したようです。
「もう、いっかい」「もう、いっかい」を繰り返しているうちに、すっかり、ひとりで「みてて!」になりました。
 りおちゃんを見ていてやってきたのが、みきちゃんです。みきちゃんは去年も、りおちゃんを見ていて浮き輪をはずしました。これまた、すぐに魚のようになり、息がながく、一回の呼吸でかなり進みます。
 次にはのんたんが来ました。のんたんは去年、顔に水がかかるのもイヤだった子です。2、3歳児のときはとても繊細で神経質でしたが、5歳児のいまは、挑戦する楽しさや人に見られる楽しさを感じているようです。何度も挑戦し、身体が完全に浮くようになりました。鼻をツンと上向きに、口はほころびそうに閉じて輝きました。
 次にやってきたのが、きわちゃんです。
 きわちゃんは比較的静かで、よく見ていて、しっかりものの長女です。あまり私に近づいてくることはありませんでした。でも、今日は違います。
「きわも、やりたい」と言ってきました。そして、見事泳げるようになりました。

 子どもたちとプールに入っていた時間は1時間半。その間、だれも休憩もせず、水であそび、挑戦をしていました。すごいです。
 りおちゃんは小柄ですから、さすがに疲れてきて、水に沈みやすくなっているので要注意でしたが、プールサイドに一回も上がりませんでした。
 この日、同行してくれたソマちゃんのお母さんは、「みて!みて!」のラッシュに大忙し。子どものパワーにあっけにとられていました。
 そして「子どもってすごいですね。意欲の塊なんですね」と、つぶやきました。
「親たちは、この姿をみたら、子どもにうるさく、あれこれ言わなくなるかも」とも言っていました。
 確かに、距離をあけないと見えないことってありますよね。

 そうです。子どもってすごいです。
 おとながあれこれ注文出さなければ、輝きながら自分に挑戦します。
「すごい!すごい!」と、感激するのが大人の役目です。
 今年も、私の大好きなプールの季節が始まります。
 それぞれのドラマを見せてもらえるプールです。(7月9日 記)

 ●バックナンバーもくじへ