柴田愛子 

 


 9月2日土曜日、日本外来小児学会の集まりに呼ばれました。といっても、「小児科医と絵本」という分科会で、絵本好きのお医者さんが集まってのワークショップです。
 私へのご依頼は「今のお母さんと子どもに感じていること」でした。小児科医の集まりに話させていただくことなんて、一生ないことでしょうから、言いたいことを山ほど抱えて行きました。

 会場は「みなとみらい」にある「パシフィコ横浜」
 みなとみらい駅は新しい駅です。おりてビックリ仰天。いったいここはどこと思うほど、外国のような街でした。りんごの木のある横浜と同じとは思えない都会で、ホントの横浜って感じでしたね。
 道を尋ねながら会場にたどりついたら、小児科医ってこんなにいるの? と思うほど、人がいっぱい。看護師さんや薬剤師の方たちもいたようですが、ともかく、どこもかしこも人だらけ。そして、「安全な予防接種をめざして」「抗インフルエンザ薬の使い方のこつ」とか「ぜんそく・・・」とかなんて、私にはちんぷんかんぷんの展示をみなさん熱心に読んでおられる。人をぬって、お知らせいただいた会議室に着いた頃には、くたくたで喉はカラカラ。
 集まっていらしたお医者さんは、くだけた雰囲気でやれやれ。
 長野、山口、宮崎、千葉、兵庫、福岡、鹿児島、新潟・・・と、様々なところで開業している方々です。
 待合室にどういう絵本を置くかというような話題ではなく、みんな絵本を読むことにはまっているようです。園医や校医をしている方は、検診に行ったときに子どもたちに絵本を読ませてもらっていると話していました。
「どうしても、受けのいいものを読んでしまいがちなんだよね」・・なんて、和気あいあいと話しているのを見て、今までの私の勝手な医者観が和らぎましたね。

 グランパパ社(子どもの本の出版社)の田中尚人さんもいらして、子どもに絵本を読むことの楽しさをお話しなさいました。
 彼の話で印象的だったのは、あるとき家に帰ったら、妻と子が身を寄せ合って本を読んでいた。すごくいい雰囲気でジェラシーを感じ、自分もやろうと思ったのが自分の子どもに絵本を読み始めるきっかけだったということでした。
 私は、今のお母さんが一生懸命子育てをしていること、どうしても頭でっかちになりがちな社会状況であることなどを、感じているままにお話ししました。
 沖縄からいらしている方が、「私は子どもが4か月の時に転勤で沖縄に行きました。何もかも初めてでとても苦しかったです。でも、地域の方々が『なんとかなるさぁー』と言ってくれて救われました。そして、3人の子どもをもうけました。これからは、私が何とかなるさと言ってあげたいと思っています」と、おっしゃいました。
 そういえば、日本で最高の出生率、一人の女性が産む子どもの数が3.14は沖縄の宮古島と石垣島の間にある多良間島だそうです。
 子育て支援と行政が叫びながら、私の周囲を見る限りでは、子どもが育つ環境が好転しているようには思えません。ほんとの子育て支援は、地域のおとなたちが「なんとかなるさね」と肩を叩くことなんだと、改めて思いました。

 会の後、アトラクションで歌や絵本の読み聞かせがありました。男性医師たちの読み聞かせは、普段見聞きする女性のとは、選ぶ本も読み方もひと味違って、それは楽しかったです。
「小児科はこわいところじゃないと、お母さんたちにお伝え下さい」と、ことづかってきました。あなたのかかりつけはいかが?
 そうそう、お父さんに絵本読んでもらいましょうね!(9月3日 記)

 

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