柴田 愛子                

 先週に変? と感じたあれこれ‥‥

〈その1〉
 今月2日、雪が降りました。関東には珍しく、朝、一面の雪景色。まあ、べたべたで午後には溶けてしまいましたが、子どもにとってはうれしい雪であることは確か。
 ところが、りんごに木に向かう途中の小学校や中学校の、校庭一面の真っ白い雪に、足跡ひとつない‥‥??? 
 唯一、公園を通りがかったら小学校のひとクラスが先生に引率されてあそびに来ていました。
 子どもが外に出ようとしないのかしら? と思ったら、学校では雪あそびをしないからと、りんごの木にやってきた小学生が‥。
 親たちに聞くと、「雪あそびをすると、校庭があれて、そのあとが困るから、雪の時は出てはいけないことになっている」そうだ。
 なーるほど、確かに校庭は整備しているのだから、一日のあそびでダメになるのは、お金も労力もかかるのだろう。
 しかし、誰の庭? 誰のための庭? 
 一年に一、二度しかない子どものあそびのチャンス。
 なんか、静かに、場所を取らずにあそべる、ゲームに子どもを追いやっているのと共通する気がしました。
 りんごの木の子どもたちは、また、食べました。
 その感想は清里(前回参照)と味が違うそうです。あっちのほうが「おいしかった!」って。

〈その2〉
 このごろ、年長児の親は小学校説明会に行きます。
 行ったひとりの親から聞きました。
「名前を、読んで書けるようにしてください」と言われたそうです。
 プリントなどをもらったらすぐ書かないと、落としたらわからなくなるということのようでした。
 違う方法はないのでしょうか。
 初めての義務教育で、「読める・書ける」という前提でスタートするというのは、どこか変ですね。 
 りんごの木では、書けずに入学していく子がいます。
「住所と名前が言えるようにしてください」といわれたと言います。
 名前はだれでも言えるでしょう。住所も言えると「迷子になったときに便利?」かと思いきや「知らない人には話さない指導もしてください」ですって。
 迷子になったときには、たいてい知らない人が助けてくれるのですが……。
「給食の方から、子どもは新しい物を口にしなかったりするので、献立を見て、食べたことがないものは、家で作って食べておくようにしてください」といわれたそうです。
 確かに、子どもたちが残したものが大量に破棄されているようです。
 昔と違って、衛生面のことがあるので、残した物を家には持ち帰っていけないそうですね。
 まあ、「ご協力いただければうれしいです」くらいのことでしょうけど。
「鉛筆は、キャラクターの絵があるともめるので、無地にしてください。2Bを4本入れてください。下敷きは透明の無地。色鉛筆は……」という指示があったそうです。
 細かいなぁ、と私は思いました。
 これは学校によっても違うようで、親たちの話に花が咲いていました。
 小学校って、ありのままの親子がすんなりと門をくぐっていってはいけないのでしょうか? 
 入って不都合を感じてから考えてはいけないのでしょうか? 
 口うるさい親たちの上に、口うるさい学校があって、子どもはますます考える隙間がなくなりそうな気がします。

〈その3〉
 中学校の部活の話を聞いて、びっくりしてしまいました。
 毎日授業の後に部活があり、終わるのが5時半。さらに土日も部活に出て行くそうです。
 りんごの木のスタッフに聞いたら、すでにずいぶん前からそうだったとか。
 それが普通と、みんな思っているそうです。
 でも、私からしたら異常だと思います。だって、自分の時間や家族との休みがないじゃないですか。
 もちろん、入らないのもありだし、土日は休んでもいいと言われているそうですが、みんな休日ではないのだから運動関係などは行かざるをえない気持ちになるでしょう。
 どんなに気のあった仲間だって、毎日毎日顔を合わせるのは苦しくなりませんか? まして、関係が良くなかったら最悪。
 だいたい、先生だって、自分の人間性を取り戻す時間がないじゃないですか。
 部活優先で、家族そろって出かけることもなく、兄弟の下は動物園も行ったことがないなんて話さえある。
 義務教育の公立の学校が、ここまで生徒や教師の時間を縛っていいのでしょうか? 
 私が中学になったとき「自分の下着を人に洗ってもらうのは恥ずかしいことですよ」と母に言われました。料理の手伝いもしたり、生活の自立をこのころからしつけられたのだと思います。
 部活から帰ってきて、疲れてテレビを見て寝る。いえいえ、宿題をやって寝る。子どもは家での暮らしをしているのでしょうか? 
 どうして、こんなことになっているのでしょう。
 自分の気持ち、自分の時間、自分の生活……自分の人生の主役として、自覚して生き始める年齢ではないでしょうか。
 子どもに自由を与えると、騒動がおきかねません。
 でも、自由の使い方をそうやって知っていくのだと思うし、そうやって家族や友だちの関係が濃くなっていくのだとも思います。

 子どもたちは、おとなたちにいろいろ決められて、不自由に生きているんだなぁと感じます。
 そして、たぶん子ども自身は、不自由という自覚はなく受け入れているのでしょう。(2月7日 記) 

お知らせ
「浜名湖わくわくセミナー」2月13・14日(土・日) 
会場・浜松市雄踏文化センター 
講師・柴田愛子・新沢としひこ・谷口国博・中川ひろたか・長谷川義史
参加費・10000円 
お問い合わせ ?&fax054-641-9749 ピーマンズクラブ杉山まで。

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