柴田 愛子                

 2月21日の日曜日は保護者の有志による「ステージ・ステージ」がありました。日本的に言うと「演芸会」といった感じです。企画、ポスター、進行・・と、すべて母たちの手で進められました。
 演目はコーラスあり、チアーダンスあり、大人と子どものパネルシアターあり、バイオリンの四重奏、ジャズのバンド、様々ですが、玄人はだしとはいきません。20年ぶりにドラムを叩いた人、りんごの木に来てからウクレレにはまった人など、やりたいことを自由に実現、とにかく一生懸命です。そして、まぶしいように輝いていました。
 その姿を見ながら、なんとも胸に迫るものがありました。
 りんごの木の保育は、たった二人の子どもから始まりました。それが、今、こんなに多く人たちの出会いの場になって、こんな大きな輪ができていることに感無量といった思いでした。卒業生や引っ越していった母たちも混ざっています。
 一人ひとりにはそれぞれに、いろんな事情もあるし辛いこともあるでしょう。けれど、いま明るく突き抜けるように輝く親たちに拍手を送りたい思いでした。
 
 さて、その週、4、5歳児は「とことん週間」というのをやっていました。自分がずっと続けてやりたいことを一つ決めて、一週間やるのです。途中に他のものに変更することはできません。
 この週、私は残念ながら保育にはいることができませんでした。「ステージ・ステージ」の翌日の月曜日、各グループが過ごした日々の報告会に参加しました。
『ばけものさがし』は、地下駐車場、お寺、林を巡り、とうとう電車に乗って大船の洞窟まで探しに行ったそうです。発見できたかどうかは、人によって言うことが違いました。その経過を写真で説明してくれました。
『ロボットづくり』(写真)は自分より身長の高いロボットです。ひとり一体ということもあり、存分にイメージを膨らませたようです。細部までこだわって作られていました。
『ビーズ』の人たちの細工は、とても綺麗。『布の袋物』を作った子は、すぐに外出に使えそうです。ともに根気のいる仕事だったでしょう。
『基地づくり』は、ダンボール35個を使ったそうです。
 基地といっても家のようなもので、台所には流しからガス台、食洗機までありました。もちろんトイレも洋式が。ワイワイがやがやの日々が目に浮かぶようです。
『跳び箱』は跳べない3人の子が挑戦。三段、五段を跳べるようになっていました。跳べたときの笑顔は、なんと表現していいのやら……そう、宝石が降ってきたようでした。
『コマ回し』は糸で回すコマで、技も披露してくれました。
『サッカー』は、この日、親たちと対抗戦をやり1対0で子どもの勝ち。お父さんも参加しましたが、子どもは疲れ知らずで、散らばって妨害するので点が入りません。お母さんたちは疲れて、5分もするとタッチ交代をしていました。
 報告の会で、やってきたことをつぎつぎ話したり見せたりしている子どもたちの表情は、はにかみながらも充実感に満たされた表情でした。

 好きなことをとことんやることが、こんなに人を輝かせるということを、親子を通して感じさせられた連日でした。
『人間、好きなことがひとつあれば、生きていける』と、亡き母に言われてきた言葉が改めて心に響いていました。(2月28日 記) 

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