柴田 愛子                

 20日から22日まで札幌にうかがいました。「札幌友の会」によんでいただいたからです。
「友の会」は全国にあります。

『全国友の会は昭和5年、羽仁もと子が創刊した雑誌「婦人之友」の愛読者によって創られました。札幌友の会には現在、札幌、北広島に約800人の会員がいます。20代から90代まで年齢を超えた交わりの中で、衣・食・住・家計・子どものこと、高年の生活、環境のことなど学びあっています。子どもグループでは子育ての悩みを話し合ったり、生活リズムや食事のことなどを勉強しています。』(札幌友の会ホームページから)

 『婦人の友』に書かせていただいたのがご縁で、よんでいただきました。
 当日は会からの提言が30分あり、その後に1時間半話しました。

 なんといっても驚いたのは、21、22日両日共に、300人の参加者です。(参加者は会員ばかりではありません)
 そして、参加者の子ども100人を「託児」なさいました。生後3ヶ月の赤ちゃんからです。
 託児をなさったのは会員の方々100人。100人の子どもを、100人の大人でという発想は驚異です。
 お年を召した方が、赤ちゃんをおんぶ紐でおんぶして、歩き回っていました。
 年配の方は入り口に座り、子どもが出て行くのを防いでいらしたようです。
 若い子育て中の人を、こうして支えようとしている先輩たちがいらっしゃることに感動でした。
 二日間で600人の参加者。託児数約200、保育を担当した人も約200人ということになります。

 子どもの生活リズムや食事を考えるというまじめなグループです。かんたんなおやつづくりのセレモニーもありました。
 お母さんたちが手を省いて楽になることのサービスではなく、きちんと教えることによって楽しめる方向を示しているのだと思います。
 羽仁もと子というひとりの女性が始めたことが、全国に広がって、受け継がれているのかと思うと、これまた、組織の偉大さを感じました。

 この3日間の滞在の間、私はどんどん母のことを思い出してしまいました。
 母は長男を1936年に産みました。5人の末っ子である私を産んだのが1948年です。
『婦人之友』の創刊は1930年です。情報の少ない時代に、母が教科書のように参考にしたのがこの本だったように思います。
 家の中には『婦人之友』があり、母はそれを見ながら、私たちの洋服を作っていました。
 料理やおやつも参考にしていたのでしょう。おやきやホットケーキ、ドーナツ、今川焼きを、家族で作ったことが鮮明に思い出されました。朝、ロールパンのいい香りがしてきて飛び起きる時期もありました。
 貧しい時代、出来合いなんてない時代、経験のない母を支えた本だったのかもしれません。不思議なご縁を感じます。
 
 24日からは富山にうかがいました。かつて登った山々が懐かしく広がっていました。
 25日は、いままでもなんどかうかがった幼稚園。元気溌剌の園長先生です。
 その方が、「0、1、2歳の保育園をやろうと思っているのよ」と言います。
 年齢は私と同じか少し上?
 予定地には、まだ、小さな苗木や花が植えられたばかりでしたが、そこを歩く先生の胸は弾んでおられました。

 26日は保育園にうかがいました。2年前に公立を民営化した園です。
 今回ずっと同行してくださったその方は、長年勤めた幼稚園の退職金をつぎ込んで、保育園を買ったそうです。法人が買う事の多い中で、個人でというのはめずらしいそうです。
 理想の保育を求めて、自分の力でと燃えているその方の目は、ギラギラと輝いていました。その方は五十代後半。
 この一週間の旅回り。熱いおとなたちとの出会いばかりでした。
 元気を頂くと同時に、ちょっとだらしない自分を考えさせられました。(6月27日 記) 

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