おおしま

はな

柴田愛子

 先週の木・金曜日は、伊豆大島の保育士さんたちの研修会にうかがいました。10年ほど前に数回うかがったことがありますが、保育士さんたちも交代なさっていて、顔見知りの方は数人でした。
 大島は竹芝桟橋から高速船で1時間半くらいで、東京都です。
 ちょっと雨模様ということもあったでしょうけれど、大島は緑が多く紫陽花が美しく咲いていて、島というより森に入ったような気分でした。

 木曜日は夜の集まりでした。保育士の研修会は、ほとんど夜です。保育終了後に来るのですから感心します。明日のことを考えると、早く時間通りに終わらないと、と思いながら口が止まりません。この日も、宿に帰ったのは11時少し前でした。
 翌日、保育園を見学させていただきました。
 保育園は島に5園あります。そのうち3園しかお邪魔できなかったのですが、一様に人数が少ない。園舎が広い。それ以上に園庭が広い。
 都内でしたら100人くらい遊んでいそうな園庭に、30人程度? おまけに周りは森。ときには猿やリスが園の近くまで来るそうです。
 ある園で、午后、5歳児が、昼寝ではなく、出かけていきました。確か9人くらいでした。山道を歩き、びわの実と桑の実と木イチゴを摘んでくると言っていました。
「いきますよー」の保育士の声かけで、散らばっていた子が何気なく集まって出かけていきました。私が大好きな自然な風景でした。
「たまには車も来るんですよ。そういうときは壁に張りつくようにしています」と園長先生。
「りんごの木もそうです」と、話に花が咲きっぱなし。
 歩いて山へ、歩いて海へとうらやましい環境です。
 園全体の空気がゆったりしています。
 子どもを育てるならここがいい! と言いたいですが、大人の仕事を考えるとむずかしいのかもしれません。
 子どものみんながこの環境を手に入れることはできません。
 都会は少人数がいいと言っている状況にはありません。待機児も多く、マンションの一室や交通量の多い通りに面している園だってあります。夜10時まで預かるところはざらです。
 人数が多ければ「おやくそく」が増え、子どもの行動を規制せずにはいられないことも多くなるでしょう。
 人口密度が多ければ、不必要なトラブルの発生率もあがります。並ばずに散歩なんて、夢の夢と思う人の方が多いかも知れません。

 保育は、施設環境と、子どもの人数と、保育者の資質によって変わってくると思います。同じ東京都といえども、これだけの違いがあるのですから、一概に保育内容や生活を同じに考えることはできません。
 けれど、どこであっても、保育者はその条件の中で最良の保育を考えなければなりません。
 多様化した分、多様な保育がうまれていることでしょう。
 子どもはいつだって、客観的にみての比較なんてしません。自分の置かれている状況を受け入れるだけです。
 だからこそ、子どもを囲むおとなたちは、保育者も保護者も支え合いながら、子どもにとって最良の過ごし方を考えていかなければいけないと思います。
 保育は親の要望に応えるサービス業ではないのです。子どもを育む仕事なのです。
 それこそ、親と保育者とが力を合わせなければできない大仕事なのです。
 さてさて、それにしてもお昼の給食の鰺の干物は、すごくおいしかったです。とれたびわの実も甘かった! (6月19日 記)

       

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