おおしま

はな

柴田愛子

 5歳クラスの子どもたちと、西丹沢・ペガススの家に日帰りで行って来ました。
「あついねぇ」が口癖になっている毎日ですが、さすがに森があり、川があり、土があると暑さが違います。風が空気の移動のようなのではなくて、ちゃんと風と感じます。
 川あそびをしている子どもたちは、すぐに「さむい」といって、震えてお風呂に入りに来ます。五右衛門風呂をわかしっぱなしでした。ちいさな五右衛門風呂に5人も子どもたちが入っている様子は、かわいいこと、かわいいこと。

かわ 川にはオタマジャクシがたくさんいました。
 オタマジャクシをとって、バケツに入れのぞいている子が「おはなしした、おはなしした」と言います。オタマジャクシが二匹向き合って、頭を前後にゆするのです。
「ほら、こっちは、さんかい。ほら、こっちはにかい」。確かに。
 石をどけるとカニもいました。しゃがんで、ずっとカニ捕りをしている子もいます。
 さかなをとろうと、網を持って深めの所に行く子もいましたが、今日は収穫0でした。
 川あそびにはなれていないので、歩き方が難しく、すぐにバチャンと転んでしまいますが、泣く子はいません。びっくりした顔で起き上がります。
 その場でジャンプして撥ねをあげてあそんでいたかと思えば、次はそっとお尻を水面につける、やがて、堰の上に座って流れる水に座り込む。
 川あそびの仕方はそれぞれです。
 あそんで、お昼を食べて、またあそんで、帰る時間になりました。
 バケツにとったオタマジャクシをゆりかちゃんが川に流しに行きました。ずーっと、ひとりでとり続けていた姿を見ていたので、どんな思いで放すのかと話しかけてみました。
「オタマジャクシ、返したの?」
「あのね、うちにはすいそうがひとつしかないの。それにはカメがいるの。いっしょにはいれないでしょ? だから、もってかえれないの」と言います。
「そう、でも、オタマジャクシは川にかえれてうれしかったと思うよ」と言いますと、驚いた顔で、
「オタマジャクシはね、ゆりかがとったときも、うれしそうだった」と、きっぱり返してきました。
 思いがけない答えに驚きました。子どもはとっているとき、捕獲するような気持ちではなく、コミニュケーションしながらとっているのかも知れません。発見。

 つれづれの271回に、さきちゃんが不本意ながらお母さんに言われて、カエルになりそうになったオタマジャクシを池に放したことを書きました。その、さきちゃんはオタマジャクシをたくさんとって、バケツに入れて持って帰ってきました。
 それを見たお母さんは「やりなおしです。今回はちゃんとさきにまかせます」と苦笑していました。
 この同じ場所に2週間後、泊まりに行きます。
 そのころには、川のオタマジャクシは減って、カニが多くなっているかも知れません。子どもたちの変化も楽しみです。

 最近「もりのようちえん」という活動が、全国に展開されています。
 ほんとに、自然の中にいると、子どもは自分の興味や力量にあったあそびをします。
 空間が広く、声も気にならず、もめ事も少なく、自然の中での保育はいいだろうな。
 こんなところがりんごの木だったらいいなぁと頭をかすめます。
 しかし、ここに毎日親が送ってくることは出来ません。
 そうなると、寄宿舎幼稚園? 泊まって週末に帰る? 
 いえいえ、とんでもない、想像しただけでも恐ろしい。あわてて思いを打ちけしました。(7月10日 記)

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