おおしま

はな

柴田愛子

 21、22日は年長児いちばん組が西丹沢・ペガススの家に一泊で行く予定でした。
 週の初めに台風が近づいてくると天気予報が報道していました。「だいじょうぶ! それるから」と、いつもの楽観的な私。
 しかし台風は、のそのそと、ゆっくり近づいてきました。
 19日、ペガススの家に問い合わせると、川は水量が増していて、あそべるようになるのは台風が去ってから三日はかかるということでした。
 さあ、どうする! 
 7月末に台風なんて、初めてです。
 おとなで相談する前に、子どもといっしょに考えることにしました。「どうする?」のままぶつけることにしたのです。
 私の心情は、台風が去ってしまったら、川であそべなくてもいいかも。すごい川なんてめったに見られないし。
 でも、行くまでの細い道を食料を積んで車で行くのは少々恐いと、どっちつかずでした。

 まず、天気予報のこと、ペガススの状況を話しました。
「たいふうがいなくなって、てんきになってからにしよう」という子どもが大半でしたが「たのしみにしていたんだから。あきらめられない。たいふうで、かわであそべなくても、いく」と言った子どもが8人。
 まつも(保育者の愛称)が、川の水が多くなって茶色の水になっている絵を描きました。そんなときに子どもを連れて行くのは、恐くてできない。「21日はやめにしてとお願いしたい」と力を込めて言いました。
 その言葉に動かされたのでしょう、8人は、「やめにしてもいい」と言いました。
 次は代わりの日程です。私たちとペガススの両方が空いている日は、7月23、24日。そして、9月の7、8日です。7月は、まだ、水が濁っているでしょう。これは9月でいいと、案外スムーズに決まりました。
 しかし、9月は予測できないほど遠い。
「なにかいいことなければ、あきらめられないよね」と言うと、「りんごのきにとまるのは、どお?」とまゆちんがつぶやきました。
 みんなの顔がキラン!
 いつものようにりんごの木に来て、夜までいて、お泊まりして帰るというわけです。
 実は数年前は、りんごの木で泊まってから、ペガススに行っていました。そのことを知っていたのかと思って「まゆちん、泊まるって、どうして言ったの?」と聞くと「いちどやってみたかったの」と返ってきました。
 というわけで、予定の日は、りんごの木のお泊まり保育となりました。
 ペガススなら泊まれるけど、りんごの木は無理という二人は、夜遅く帰っていきました。

ふろ 子どもは台風で増水した川を知りません。この前あそびに行ったときの川しか知りません。
 そこで、ほとんどの場合、おとなが危険を察知して判断をします。子どもはわけのわからないまま、その決定に従うよりありません。
 経験の少ない子どもは判断ができないので、保護すべきおとなが判断します。
 それは、当然なことなのですが、子どもの気持ちはどうなるのでしょう?
 行くはずだったのは子どもです。客観的な判断はできないけれど、楽しみにしていた気持ち、あきらめられない気持ちは、口にすることもなく子どもが飲み込むより仕方ないのです。
 でも「どうする?」から、子どもに問いかけて、決定までの流れを共有することで、子どもは納得するだけでなく、気持ちを落ち着かせる素敵なアイディアを思いついたりするのです。
 子どもって、すてきでしょう?
 困ったときは、子どもに相談しよう!(写真=お風呂代わりのお湯プール。7月25日 記)

 新しい絵本が出版されました。「バナナこどもえん ざりがにつり」童心社
 文 柴田愛子 絵 かつらこ。 見ていただけたらうれしいです。
 http://www.doshinsha.co.jp/search/newbook.php

●2011年のバックナンバーはここをクリックしてください。
●「つれづれAiko」連載の05年1月〜07年12月から53編を選んで一冊にまとめました。詳しくはここをクリックしてください。