くちげんか

はな

柴田愛子

 日々の温度差が大きく、「体調を崩さないで過ごせるだけで偉い!」と自分を誉めています。

 さむーい日でした。畑で過ごしている子どもたちを見に行きました。
 保育者が大きな鍋に味噌汁をつくって、子どもたちにふるまっていました。
 私も味噌汁をいただくと、持っている手も身体の中も暖まります。ほっと、気分までやわらぎます。
 次々に子どもたちが「ちょうだい!」「おかわり!」とやってきます。
 ところが、少し離れたところに、女の子が三人、ぶらぶらしています。
「味噌汁、おいしいわよ」と声をかけに行くと、プーとほっぺが膨らんで、怒っている表情です。
「みそしるなんか、たべるきもちになれない」と言います。
「あら、そう。いやなことがあったのね」と言うと、 「わけは、はなしたくない」と言います。
「そう。そのいやなことは、だれかに怒っているの?」と聞くと「そう!」と言いながら、離れていきました。
 でも、三人の中のひとりが「○○におこっている」と言い残しました。
 そこで、味噌汁の近くにいる○○という男の子に、「女の子が三人、怒っているみたいね。何かあったの?」と聞くと「だってね…」と話し始め、あと二人男の子が加わって、男の子三人と女の子三人のいざこざであることがわかりました。
 男の子の話を要約すると、女の子たちと「プリキュアごっこ」をやっていたようです。事前に「本気では戦わない」という約束をしたのです。 ところが、やっている内にアクションが大きくなってぶつかってしまった。痛かった女の子たちは約束が違うと怒っりだしたというのです。
 男の子たちは「そのくらいのことは、いいじゃないか」と言う、女の子たちは「そのくらいのことと許せない」という訳です。
 六人が何気なく、私の近辺に来ました。
「六人で始めたところまでは、楽しかったの?」と聞くと「うん」
 ということは、やはり仲がよいのです。だから、険悪ムードになったからといって溝ができるわけではありません。
「どうする? イヤな気持ちをけんかしてスッキリしたい? それとも、このまま知らん顔している?」と聞きました。
 全員「ほっといて」でした。
 少し前は取っ組み合いが多かったのですが、最近はぶつかり合いを避けて、時間で気持ちを納める方法も多くなったような気がします。
 そういえば、このごろ、5歳児のけんかが多いです。どうしてでしょう?
 子ども同士の関係が濃くなって、ストレートに感情をぶつけてしまうから? いわゆる、けんかができる間柄?
 それとも、最近、就学時前検診が始まって、お母さんと小学校に行きます。もうすぐ、新しい世界に行く気配がどこか気持ちをガサガサさせている?
 この二つが思い浮かびます。でも、正解はわかりません。どっちかかもしれないし、両方かもしれないし、全く違うかもしれない。

 子どもの様子がちょっと違うと感じたとき、何があったのか訳を知りたくなります。
 原因がわかれば、何とかしてあげられるかもしれないと思うのです。でも、多くの場合は本当のことはわかりません。
 けんかの場合も、そのこと自体の表面的な原因はわかるかもしれませんが、背景があって起こることもあります。子ども自身さえ、説明不可能なことが多いのではないでしょうか。
「ほっといて」は、いい解決方法かも知れません。
 きっと、明日はもどっていることでしょう。(12月11日 記)

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