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 4、5歳児クラスで「とことん週間」という保育活動がありました。
 保育者が日頃の子どもの様子から6種類の活動内容を決めて、子どもたちに紹介します。子どもたちは自分で選択したものを、一週間変更なしで、とことん続けていくのです。というのも、この年齢の、この時期になると、同じ遊びをどんどん突き詰めていく能力が出てきます。

 あれもこれもとバランスが取れた一日ではなく、やりたいことにじっくりはまることの楽しさを味わってほしいと思っています。

 

 今回は「縫いもの」「電車」「大工」「オニごっこ名人」「お店屋さん」「劇」です。

 なんと、いちばん人数が多かったのが「縫いもの」でした。

 卒業生のお母さんに協力をあおいで、助っ人に入ってもらいました。

 その作品は、手提げのような大物から、小さな縫いぐるみまで様々。人数が多かったけれど、部屋の中はしーんとしていました。まさに根を詰めた日々です。

 電車は毎日お出かけです。路線地図を見ながらの旅です。電車好きはさすがに詳しく、新幹線ドクターの黄色い電車まで見てきたようです。

 大工はギコギコトントン。二人でほんとに乗れる車を作った子もいれば、個人でこんこんと取り組んでいた子もいます。椅子や滑り台というのもいましたが、蛇や蝶々といったユニークなのもありました。
 オニごっこは、なんと50種類もやったそうです。オリジナルのものもたくさんありました。

「ステージオニ」は、捕まったら、鬼を笑わせるかだじゃれを二個言うと、逃げられるというもので実演してもらったらおもしろかったです。

 基本がシンプルだからこそ、アレンジがいくらでもできる優れたあそびですよね。
 劇は、少し前に大学生が「エルマーの冒険」を見せてくれたのが刺激になっていたので「エルマーの冒険」でした。見ていたときに「エルマー」に釘付けになった子はエルマー役に、ライオンの奥さんに見せられた人はその役と、それぞれが気になる役が違うことと、惹かれたものを食い入るように見ていたことがわかります。
 お店屋さんは、ごっこ遊びの好きな連中がレストランを開きました。おいしそうなうどんやケーキが並んでいます。お金やチケットを作って招いてくれました。ほんもののゼリーもふるまわれ、長蛇の列になっていました。
 とことんの最後には、それぞれの一週間を報告しました。少人数で、同じ好きなことに夢中になった仲間の「間柄」が濃くなっていることが、いちばん目につきました。

 

 以前、保育者の研修会でこんな質問がありました。

「とことんあそばせたいと思う、とことんやらせてみたいと思う。だけれど、こわい。とことんの先にはなにがあるのですか?」

 私は驚いてしまいました。

「あなたは、なにか、とことんやったことがありますか?」と質問を返すと「ありません」。
 親たちもバランスを大事にしている人がたくさんいます。絵本も読んでほしいし、外遊びも活発に絵も集中して描いてほしいし、ピアノも弾けて、英語も興味を持ってほしい、そして、みんなといっしょに遊べる子どもでもあってほしい。

 こんなふうに隅々まで興味を持って、どれも楽しめる子なんていません。
 ひとつに偏ることはいけませんか?

 人生、結構長いです。ひとつがずーっととは限りません。

「今、自分の中で流行っている」ことに夢中になることありますよね。さらに、夢中になっていたらどんどん幅が広がっていくことはよくあります。
 とことんの後にはなにがあるか、自分で体感してみませんか。(2月26日 記)

 

 

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