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日常、私は朝、ラジオを聞きながら身支度をしています。その日は高齢者の介護についての話題でした。ふむふむと聞いていましたら、司会者が「高齢者って、何歳からをいうのですか?」と質問しました。「65歳からです」という答えを聞いたとたん、手が止まりました。 両手はもう、高齢者にかかっている。あと一年で体ごと持ち上げられて高齢者。 だいたい、自分の歳は自覚がない。客観的に見られないので、いくつになっても若いつもり。 ショウウインドウに写った自分を見たときぐらいギョッとすることはありません。 でも、それ以上にギョッとしました。
さて、その日は電車で出かけました。シルバーシートに堂々と座っていいような気がするのですから、なりきるのが早い。 残念ながら席は空いていなかったので、立っていました。 やがて、私の前が空きました。ラッキー! こんな事を思いながら席を譲る人っているんですね。ちょっと、自分にあきれましたが。 左手で前のおばさんをよけて、背中をトントンとたたきました。 振り返った顔は、案外つやつやしていました。 「どうぞ、おかけください」と言うと「大丈夫です」と返ってきました。 「でも、立っているのはしんどくないですか?」と言うと「ありがとう。でも、大丈夫です」とおっしゃるので、私は座り続けました。その人は立ち続けました。 びっくり仰天。 背筋もまっすぐ、歩き方もしゃんしゃん、ちょっとダンディーな服装。 「すごいですね。おみ足もしっかりしていて、若々しいです。どうぞ、お元気で」と、お別れしました。 私と年の差25歳。 高齢者という言葉に浸っていないで、あの人みたいに生きましょうと思いました。
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