先週は月・火曜は金沢市の私立幼稚園協会の保護者の方にお話に行きました。木曜日は千葉県佐倉市の私立幼稚園協会の保護者に、土曜日は子育て広場のスタッフやボランティアの方たちに。その間にご相談やらで、自分でもあきれるくらいしゃべり続けています。耳を貸してくださる方がいるのですからありがたいことです。
そして、今週新しい絵本が発売になりました。
ポプラ社から「わたしのくつ」という絵本です。まるやまあやこさんが温かくてかわいい絵をつけてくれました。
もう、かれこれ30年以上も前のことです。まだ私が幼稚園に勤めていたときに、4歳の姪が入園して来ました。ある日、新しい靴を買ってもらった彼女は、うれしくて、うれしくて、幼稚園に着くと、靴を脱いでパタパタと汚れを払い、抱きしめました。汚れるからと外に出てあそぼうとしませんでした。すると、担任のまりこ先生がやってきて、
「その靴は、外でいっぱいあそんでねって、お母さんが買ってくれたんじゃないかな。だから、汚れてもうれしいと思うよ」
と話しているのが、私の耳に入ってきました。私はまりこ先生に近づいて「よけいなことを言わないで」と止めました。
だって、子どもが大事に思う気持ちは数日外であそばないことより尊いと思ったからです。やがて平気で外であそぶようになるんですから。
私自身も、物が自分のものになるまでに時間のかかる人です。新しい洋服はほとんど、すぐに手を通すことはありません。目のつくところにかけておきます。そのうち、着てみようかなと、手を通すけど、やめる。と言うのを繰り返しながら馴染んでいきます。ひどいときは、1年も着れないときがあります。
こんなふうに、大好きなものだから、汚れたくない、大事にしたいという思いもありますが、なんとなく空々しくて、気に入っているけれど自分のものにならないというときもあります。人とものとの関係には、向き合う気持ちと時間が必要という気がするのです。
物が豊富になった今、こんなふうに物と向き合っている時間を省略している気がしていました。使い捨てで、今必要な物をとっとと使って、いらなくなったらぽい! とする。でも、子どもたちを見ていると、やっぱり新しい靴をはいてきたときには、かつて30年も前の姪と同じ気持ちを持っているのです。その様子にうれしくなるのです。いまでも心に残っている30年以上も前に感じたことを思い出しながら絵本を作ったというわけです。
なんだか宣伝ぽくなってしまってごめんなさいね。
子どもの気持ちはゆっくり流れていることを忘れたくない、忘れて欲しくないと思っています。
そして、おとなたちが豊かさ、忙しさ故に失ってきたもののひとつでもあるような気がします。
(9月9日 記)
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