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 先週の日曜日(運動会の翌日)、卒業生数人と会いました。みんな26歳前後です。夏のキャンプのときに二人が船舶の免許を持っていることがわかりました。一人は何度もクルージングしているというので、私が「行きたい。行きたい」と言ったので企画してくれたのです。


 当日は雲一つない秋晴れでした。小さな船を借りて横浜港を巡りました。

 海側から見る横浜は、なかなか素敵。船で遊んだ後、バーベキューと鍋が用意されました。
「あいこは座っていていいから」の言葉に、ありがたく幸せな気分でした。

 男の子たちは「あいこ」と呼び捨てにします。女の子は「あいこちゃん」と言います。いつから、そうなったのか誰も思い出せません。
 りんごの木時代のことを話していると、みんなも次々と思い出し話に花が咲きました。

「楽しかったね」「わたしたち、不思議な関係だよね」「また、会おうね」

 と、それぞれに別れていきました。
 この人たちが幼児のときも、それぞれの個性は違っていました。個性的でありながら、バランスよく仲間になっているのは今も同じかもしれません。

 二十代後半を迎えている彼らの職業はばらばらです。造園業、サラリーマンで営業担当、事務職、ネイルサロンの店長、国家公務員、今日は参加しなかった連中もまちまちです。
 
 さて、話は子育て中の幼稚園選びにとびます。
 幼稚園の募集が間近になったこの時期、考えれば考えるほど迷ってしまうという親御さんからの質問を受けます。
 そこで、ちょっと押さえておきたいことがあります。
 どの幼稚園に入れたからといって、その子の人生が保証されるということはありません。

 そんなに幼稚園は偉大ではありません。魔法も使えません。
 説明会や園の方針を読んで、ご自分に近い考え方を選びましょう。でも、方針はそんなには当てになりません。園長先生が担任するわけではないのでね。
 次に、子どもが毎日行くところなのですから、無理のないところがいいでしょう。自分に置き換えて考えるといいです。じっとしていない子に、スケジュールびっちりで、座る時間が長いのは苦痛です。
 親の都合も考慮にいれたらいいです。
 そして、忘れて欲しくないのは、教育・保育の内容の前に、託すことができる、信頼できる園であるかどうかです。契約関係ではなく、信頼関係があってこそ、大事な我が子を託せるのではないでしょうか。
 子どもは子どもを見て育ちます。子ども集団の仲間関係の中で育つ部分は大きいです。おとなが教えることより、はるかに多くのことを群れの中で学びます。ですから現代の状況では、園生活はした方がいいと思います。
 しかし、そのとき、子どもがありったけ学んでいくのを支えているのは家庭です。
 幼稚園や保育園よりはるかに影響力のあるのは親です。
 数年ではなく、一生の関係が続くのは親子です。
 親の価値観、親の人格、親の生活習慣のほうが遙かに、子どもの育ちには影響力があります。
 ですから、多くの得になる事を考えずに、安心して預けることができるところがいいのではないでしょうか。たぶん、カンが一番です。
 
 冒頭に卒業生の話を書きました。
 かつて、ひとりの子は造形の時間になると机の下に隠れてしまいました。なんと、一年も机の下から見ていました。小学校中学年になったときに「造形が一番好き!」と言いました。

 ある子は高校を辞めてしまいました。自分の居場所が見つけられなかったようです。そのあと、通信で学び、納得できる大学に入り、今があります。

 何もなく人生をたどっている子はいません。みんな、いろいろありました。そして、今を必死で生きているのです。その子はその子の人生を歩んでいるのです。

 

 保育園、幼稚園がどれだけ子どもに影響力があるのかは、残念ながらわかりません。

 なにがその子にとって成功なのかもわかりません。

 長いスパンで考えると、「安心して過ごせた」「大事にしてもらえた」「思い出すとホッとする」と思えるような、そんなふるさとのような幼児期を保証することしかないような気がします。いえ、それが、子ども自身の根を張ることになるのだと私は思います。(10月28日 記)
 
 


 
 

 

 

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