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 先週の4、5歳児は「とことん探検」でした。
 毎年この時期になると、あそびを継続して "とことん"やる一週間を設けています。

 今年はおとなから「探検しよう」と持ちかけました。


 かつては幼児でも「探検」とか「冒険」という言葉を知っていました。おとなに心配をかけてでもやったものです。ところが、この言葉が徐々に消えつつあります。今は探検とはなんぞやという説明をしなければなりません。

 地域の子どもの群れによる遊びの伝承がなくなったことばかりではなく、きょうだい間でさえ外遊びが伝承されていない気がします。きょうだいが少ないというのも一因でしょう。

 室内での製作や手仕事、ごっこ遊びは得意な今の「大きい組」(4、5歳児)の子どもたちを探検に引っ張り出すことで、あそびや発想を広げたいと思ったのです。


 5日間毎日、探検を続けていくのです。子どもたちからあげられた、やってみたい探検の中から4つに絞りました。
1「棒探検」(棒が倒れた方向に進む)
2「遠いお家探検」(比較的遠くから来ている子どもの家が、どのくらい遠いところにあるのか探検しながら探していく)
3「洞窟探検」(古墳から防空壕など暗い穴を見に行く探検です)
4「宝物(骨)みつけ探検」(光る石という子、骨を見つけたいという子、ともかく宝探しです)
 自分がしたい探検を選び18日からスタートしました。途中で違う探検には移れません。
 さて、初日の月曜日は寒い雨。翌日は雪、と過酷な探検の開始になってしまいました。
 水曜日は曇り、木曜はまぁまぁ、金曜日はかなり晴れと、尻上がりの一週間。


 私はすでに予定が入っていて、二日だけ「宝探し探検」に同行しました。

 一日は雪でした。「探検には時期が悪い」とやや反省気味ではありましたが、気分は前向き。寒い覚悟をして身支度をしていると、気持ちが張ります。そう、スキーに行ったときに寒いのに出て行くでしょ? あんな感じです。

 子どもたちについて黒曜石を探しに森に行きました。雪は気にならなくなり、冷たい空気が心地よいほどです。それでも、お昼に近くの住宅の集会室をお借りできたことはありがたい、ありがたい気持ちでした。
「光る石!」と見つけて掘った石。「ちょうだい!」と言われたって「絶対あげない」と持ち帰った石。家できれいに洗ったら、瓶の底? これなに? 黒曜石ではありませんでした。でも、宝の仲間にしました。
 4歳と5歳の体力と意気込みの差は歴然でした。手袋を持ってこなくて「さむい、さむい」と泣きそうな子に、自分の手袋を貸すかっこよい5歳児。年上の誇りなのでしょう。
 あと一日は最終日、江ノ島海岸に同行しました。この日はかろうじて晴れ。お日様のあるぶん、気温も10度くらいはあったでしょう。子どもは雪を見れば食べたがり、海を見れば入ります。ほとんどの子は膝上くらいまででしたが、大きな波が来たり、転んだりでびしょびしょ。やがて、ブルブルと震えてあがって、やっと着替えます。釣り場への岩伝いに飛び歩く子、浜で砂遊びをする子、波と遊ぶ子、宝探しはとんと忘れかけていました。「真珠を探したい」と海を提案した子は、さすがに珍しい品々を集めていましたが。


 異年齢の少人数集団のよさを感じた探検でした。毎日、同じ顔ぶれで行動を共にする。それも屋外を。それぞれの特徴をつかみ、自然と関係は深まります。そして、室内では見られない開放された笑顔が、たくさん見られました。はじけた子どもの笑顔は、ほんとにまぶしいです。素敵です。そしてこの笑顔を保障していかなければという、おとなの責任も感じます。

 毎日、子どもと共に探検した保育者は、さぞや疲れたことでしょう。でも、きっと私みたいにかけがえのない子どもの笑顔の宝物をもらったにちがいありません。(2月24日 記) 

 

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