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 夏休み最後のイベント、卒業生のキャンプに行ってきました。
 毎年同じ、丹沢山麓・皆瀬川上流にある「ペガススの家」でのキャンプは、今年で20回目になります。8月18日から20日まで、21日から23日までとふたグループに分かれて小学生が参加、中学生以上(高校生〜社会人も)は希望すれば両方続けて行けます。
 今年も前半は60人、後半は74人、全部合わせるとおよそ134名の子どもが参加しました。

 仕事や部活で一泊や日帰りの子どもも加わりました。
 ご飯作りや五右衛門風呂はすべて薪を使います。半端じゃない量の食事は、卒業生のお母さんたちが協力してくれます。スタッフは、子どもたちの安全を配慮しながらあそび続けます。

 とにかくスケジュールは朝、昼、晩のご飯の時間と小学生は就寝時間があるだけ。

 やってきた日に、何をやりたいかを子どもたちに相談します。例年出されるのは「きもだめし」と「人間綱引き」。

 ほとんどの時間は、自分がやりたいことをやるだけです。

 宿泊棟が広いわけではないので、混んでいるときの山小屋状態。荷物と寝袋と子どもがぐちゃぐちゃで、ごろごろしています。


 今年は気温が高く、朝晩の冷え込みもありませんでした。川の水量も少なく、私などは以前の豊富な水量ばかり思い浮かんで残念に思いますが、子どもたちはそんなことはへいっちゃらでよくあそびます。
ジャンプ 魚捕りやカニを捕まえた子は唐揚げにして食べます。石を集めている子もいます。滝ジャンプに挑戦し続ける子、川も上流から3カ所くらいに分かれてあそんでいます。毎年同じ場所なので、安心して同じあそびを繰り返している子もいますし新しいあそびも生まれてきます。
 燃やし続けているたき火の中に、石を入れていた中学生がいました。取り出したときは、まるで透き通るような火の塊でした。その美しさに、小学生もまとわりつきます。そして、水を入れたバケツの中に入れます。ジューという音と煙がでると、目を丸くしています。バケツの中の水はお湯になっていました。
 下流の比較的水量のある場所に行き、川に添って歩いていました。すると、50センチくらいの木の棒が流れているのを見つけ、それを2本運んで少し深いところにもって行きました。木が浮くのでその上に乗りますが、沈んでしまいます。
「もっと、大きい木をみつけよう」となり、100メートルくらい上流の山の中に直径30センチ、長さ2メートル近い丸太を見つけました。伐採された杉でしょうか。それをまず転がして川に落とします。水深が浅いのでうまく流れません。二人の子が石をどけては押し、二人で持ち上げとあきらめずに運びます。私の手伝いなんて役にも立たず、腰が痛くなりそうで見ているだけでした。子どもってすごいです。身体が冷えても、力一杯やっても、腰が痛くならないんですから。
 とうとう、行き着いたときには「やったー!」と大喜び。早速乗ってみると、浮きます!

 ひとりで抱え込むようにすると、くるくると回ってしまいますが、ラッコのように喜んでいます。 近くで堤防を作っていた低学年の子が5人乗っても大丈夫だったのです。もちろん、私だって浮きました。
 ところが、木の皮でお腹をすりむいてしまいました。次には木の皮をむくことになりました。

 こんなふうに、時間も気にせずあそび込んでいる子どもたちの表情は、すばらしく輝いています。
 私が見ていられた子どもたちは数人です。雑用もしながらつまみ食いのように見ていただけです。でも、きっと、それぞれの場で、子どもたちは自分に満足するあそび方をしていたでしょう。そしていっしょにいたおとなたちは、私のように興奮したことでしょう。
「あそびはどうして必要なのか」なんて、頭で考えるより、子どもたちの輝いた笑顔をみれば納得です。自由な時間、監視ではないおとなのまなざし、自然環境が子どもを活かすのです。
 たまたま、滝ジャンプをしていたところに、よその親子が来ました。子どもは5歳くらいでしょうか。りんごの木の子どもたちがジャンプしているのを見て、その子も寄ってきました。すると、お母さんがビデオ?(携帯のようでしたが)を構えました。

 ところが、以外と高いのです。その子は緊張した顔になり、下を見下ろします。

 なかなか挑戦する勇気が出ません。

 ちなみにりんごの木の子どもだって、すぐに飛び込める子は少なく、何度も下を見てやめて、でもまた行ってと繰り返し、飛び降りるには時間がかかるのです。
 何年もそこの場に立って、やっぱり勇気が出ずに、3年間見送っていた子がいました。その子は今年18歳、とうとう念願を果たしジャンプに成功したのです。そのくらい、自分に向き合って勇気を振り絞ることは大変なことなのです。
 ところが、ビデオを構えていたお母さんはなんと怒り始めたのです。

「なにやってんの、さっさとしなさい! もう、撮るのやめます。時間の無駄、もったいないから撮らない!」と。

 わが子の緊張した表情、でも、挑戦したい気持ちに気づいて楽しめないのかなぁと切なくなってしまいました。この子は結局飛び降りずに、折角あそびに来たのにお母さんの顔色が気になってしまいました。子どものためにと思いながら、子どもを脅迫してしまう事ってありますよね。気をつけなくちゃ!


 室内では、トランプ、将棋、漫画の読書、おしゃべり。

 おとなの評価とは無関係に、子どもたちは好き勝手を過ごしていました。
 そうそう、今年高校生になった子どもがふたり、自転車でやってきました。自宅から7時間かかり最後の登りはきつかったそうです。まさに青春は昔も今も変わらない。子どもたちはちゃんと今を生きていると、うれしいキャンプでした。

 しかし、今を選べない子どもたちだからこそ、子どもたちにとって豊かな環境を残さなければと思わざるをえないことでした。
 帰宅後、あちこちが痒い。ブヨやらアブやら・・・痒がりながら、余韻に浸っています。

                                     (8月25日 記)

 

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