川崎病 原因は細菌毒

京大名誉教授ら究明 治療の可能性に道

これまで原因不明とされていた幼児の急性熱性疾患「川崎病」は、体内に普通に存在する連鎖球菌が出す毒素によって起きる、との研究結果を日沼頼夫京都大名誉教授をリーダーとする塩野義製薬医科学研究所(大阪府摂津市)と和歌山県立医大の共同研究グループがまとめた。19日から広島市で開かれる日本川崎病研究会で発表する。

同研究所の鈴木隆二免疫研究部門長は「原因不明で治療法もなかった川崎病だが、原因の毒素を特定したことで治療の可能性も開けるだろう」と話している。
鈴木部門長によると、研究グループが川崎病の急性期の患者の血液を解析した結果、免疫にかかわるリンパ球T細胞表面の受容体のうち特定の二種類が反応し、T細胞が分裂、増加していることが判明。さらに、病原性がある連鎖球菌の毒素の一つ「SPE−C」も、T細胞に同じ反応を起こさせることを突き止めた。今年、川崎病を発病した患者数十人の白血球と、試験管内でこの毒素を与えた白血球を比較した結果、T細胞で同じ受容体が反応、活性化していることを確認。和歌山県立医大の調査で、患者は血清中のSPE−C抗体がすべて陽性になったことなどから、この毒素が川崎病の原因としている。
免疫の過剰刺激により、T細胞などのリンパ球が異常に増殖する現象が起きると「スーパー抗原」と呼ばれ、かえって高熱や発疹(はっしん)などを引き起こすことが知られている。
研究グループは今後、患者の血液からの毒素分離を急ぐとともに、常在菌の連鎖球菌の毒が人により川崎病を引き起こす理由を突き止めたいとしている。

川崎病 急性熱性皮膚粘膜リンパ節症候群(MCLS)の別名。川崎富作医師が1960年代に発見。日本では年間約五千人の患者が発生し、3、4年ごとに流行が繰り返されている。主に4歳以下の幼児に発熱や発疹(はっしん)、首のリンパ節がはれるなどの症状が現れる。自然に治ることが多いが、心臓の冠動脈に異常を起こすことがあり、千人に一人が死亡するといわれる。原因は化学物質、ウィルス、細菌毒素など浮上していたが決め手がなかった。

1999年11月19日・北海道新聞より