大きな反響 患者の思い感じた

川崎病の原因を特定した塩野義製薬研究グループのリーダー
鈴木 隆二(すずき りゅうじ)さん

川崎病の孫を持つ女性から泣きながら謝礼の電話がきた。
「長い間、原因不明のままでどんなに不安だったか」と。

人の免疫にかかわるリンパ球T細胞の解析から細菌毒素を突き止めた。「未解明という理由で始めた研究だったが、反響の大きさに、患者の思いをあらためて感じた」と言う。

T細胞の解析技術を確立し、全国の大学と共同で川崎病やリウマチ、白血病など多くの免疫性疾患を手掛けてきた。独自技術のため研究協力の依頼は多いが、大学教授の申し込みをはねつけることもある。

「データを得るだけでは意味がない。研究は予防や診断、治療につながる病気の解明が使命。ブームのテーマを追いかけ論文を書くことではないはずだ」

強い信念が厳しい言葉となって飛び出す。高校までは勉強嫌い。日大獣医学科で「発想次第でさまざまなアプローチができる幅広い学問」免疫学に出会った。卒業後は東北大微生物学教室の研究生に。文字通りぞうきん掛けから始めて十年。教授に生活費を援助してもらいながら、研究を続けた。

研究室で一緒だった仲間たちは、全国の大学医学部で要職にある。人とのつながりが現在の財産だ。

「研究で評価される世界で育ったので、上司の言うことを聞かない”規格外”社員。はっきりものをいうので、上司と対立したこともある。研究を支えてくれた部下と会社にとどまり、その後の研究で認められましたが・・・」と振り返る。

日本刀など古美術収集が趣味。「本物と偽物を瞬時に見分け価格をつける厳しい目利きを必要とする世界。研究にも通じます」。神戸大大学院教授も務める。四十四歳。長野市出身。

2000年1月19日・北國新聞(きょうの人)より