〜序章「衰退」〜



 ニホン国。ヤマトと呼ばれる列島に栄える国の一つであり、ヤマト四州――本州、北州、南州、西州の内、最大の陸地本州の大半を治めているため、ヤマトで最も大きな勢力を誇る国であった。
 長い間、戦らしい戦が起こっていないのも勢力拡大に一役買っていた。そのおかげで領地を広くしてこれたのだ。
 北州は極寒の地であり自然との戦いが常にあった。南州は九つの勢力が争い会い、今では九州と呼ばれているし、西州も四つの国が西州の覇権を巡って戦が絶えず、今では四国と呼ばれていた。
 そんな中で順調に栄えていったのがニホン国であった。
 そのニホン国最大の都「京」。この都こそ、ニホン国の政治の中心地であり、国を統治する者――即ち「皇」が居を構える所であり、東の青龍、西の白虎、南の朱雀、北の玄武という四方の神に応じた最良の地相を有する場所に造られていた。
 その恩恵もあってか、都は長きに渡ってニホン国最大の都として、ひいてはヤマト最大の都として繁栄してきた。
 しかし、日羅多暦五十五年。
 本来ならば都中に人々が溢れ商店は軒を連ねて賑わっている京だったが、この時は違っていた。賑わいなど見る影もなく、商店はそのほとんどが閉まっていた。道を行き交う人も数えるほどに減っていたし、その表情も何かに脅えているような感じだった。
 これがニホン国最大の都かと、目を疑うばかりの様子である。最盛期の華やかさなどどこにも見られず、深い翳りが支配しているように見える。
 まさに今、京は衰退の一途をたどっていたのである。
 京がこの様になった原因は三年前に遡る。
 日羅多暦五十二年のある日、西の小島に突如「鬼」が出現したのだ。
 それからというもの、鬼たちは近隣の村を襲い、何人もの命を奪い、食料や財産を根こそぎ奪っていったのだ。
 何度か討伐隊を組織し出兵させてはいたが、現場に着く頃には鬼たちの姿はどこにも無かった。
 鬼の行動は素早く、また、出兵するまで色々と手続きを踏まねばならない組織の特性も裏目に出ていた。さらに、鬼たちの「根こそぎ奪う」というのが討伐隊の出兵を無意味にしていた。
 他国の侵略ならば、襲った村を自分たちの領地にするため、軍を駐留させることでもしただろうし、山賊の類なら根こそぎ奪う真似などしなかっただろう。そんなことをすれば「獲物」を減らすだけで、ひいては自分たちの首を絞めるだけだ。
 鬼たちは根こそぎ奪うと、どこかへ姿をくらましていた。西の小島へ帰っているのか、あるいは辺りに潜んでいるのか。
 いずれにせよ、国側は深追いすることはしなかった。「戦に慣れていない兵たちにそれをやらせても大した成果は出せないだろう、最悪の場合返り討ちにされるのでは」と懸念していたし「人的余裕もない」とゆうのが理由であった。
 だからいつも後手へ後手へと回っていた。
 そしてついに昨年あたりから、京にも鬼が出没するようになったのである。