〜序章「奴等」〜



 人間になりた〜い。
 それが彼らの願いだった。別に某妖怪人間三人組ではないので、
あしからず。
 まあ、三人――と言うより三匹ではあるのだが……。

 十数年前、ある小島に突如「鬼」が出現した。鬼たちは近くの村や町を襲い、実に多くの人々の命を奪っていった。
 そして物資を貯えた鬼たちは一年後、ヤマト列島各地へ侵攻する。その時、最も被害を受けたのが本州を支配するニホン国であった。満足な船を持たない鬼たちが、ヤマト列島各地へ侵攻するため主に陸路を選んだ結果であった。
 更に一年後、ついにニホン国の中心地「京の都」にまでもその侵略の手を伸ばしていった。小島の近くにあるこの都を、鬼たちが何故最初に落とさなかったのかというと、ニホン国全兵士の実に七割が都に駐留していたからである。
 鬼たちはニホン国全土に散っている三割の兵を先に潰すことで、都を攻めた時に後方からの増援を断ったのである。正確には後方から来ることでの挟撃を嫌ったのだが。
 一方、都の者たちは、七割の兵が集中する所にそう簡単に攻めて来れるものではないとタカをくくっていたため、対応が遅れ最初の戦闘で多くの兵を失ってしまった。
 しかし、国としても「負けたらシャレならんわ」と(言ったかどうか定かではないが)態勢を整え鬼の侵略を防ぎ続けた。が、結局そこまでで、国は鬼の本拠地に攻め込む余裕が無く、長い膠着状態に陥っていった。
 そのいつまで続くとも知れない睨み合いは、意外な形で決着がつく。鬼の本拠地「鬼ヶ島」に乗り込み、鬼の大将を打ち負かした者がいたのだ。
 それを成し遂げたのは、驚くべきことに一人の少年と人語を解す三匹のお供であった。

 話を戻そう。「人間になりたい」と言っているのは、その三匹である。一匹は犬、一匹は猿、一匹は雉。
 そして今、彼らは「願いが叶う山」と言われている「不死山(フジサン)」に向かっているのだ。
 主である少年と鬼退治をした時からすでに四年経っている。少年の元を離れてからは二年。その間に手に入れた情報でこの山に来たのである。