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鬼太郎。外見は、人間で言うなら十二歳ぐらいの少年と同じだ。着ている服も、海の向こうにあるニホン国の村民のモノと大差ないこれで角さえ隠せば、そこらの村の子供と見られるだろう。 「さて、どうやって桃太郎を殺るか……」 決意はあったものの、実際どうするかまでは考えていなかった。行き当たりばったりな奴なのである。 「そうだ!」 ポンと手を打ち、何か閃いた様子の鬼太郎。 「奴は三匹の家来を連れていたはず。たしか──犬・雉・猿だったな。まずは俺も三匹家来を出すとしよう」 そう言って、やおら袖をまくり構える。 「奴を超える意味で、人間界の犬・雉・猿ではなく、魔界の犬・雉・猿を出すとしよう」 鬼太郎は、「三匹連れてくる」ではなく「三匹出す」と言ったがそれは彼が「召喚術」の使い手で、これから魔界より犬・雉・猿を呼び出そうとしているからだ。 「鬼族の下僕たる魔獣よ。我が呼びかけに応え、その姿を現せ!」 おもむろに呪文を唱える。この呪文は、ある一定クラス以上の魔獣を召喚するときに必要なモノで、一定以下の場合には唱える必要はない。 「いでよ、魔獣イヌ!」 ………………………………。 「なぜに、何も起きない?」 何の変化も無いことに、訳が分からず首をひねる鬼太郎。 もっとも、賢明なあなたならもうお気づきでしょう。そう、鬼太郎は「犬」を呼び出すつもりが「居ぬ」──つまり「何も居ない」を呼び出してしまったのだ。 「…………お、俺としたことが……ついつい失敗しちまった。まあ気にせず次だ」 少しは気にした方がいいと思うのだが、本当に気にしてない様子で、再び構える。 「いでよ、魔獣キジ!」 唱え終わると、彼の頭の上に何やら紙がフワリフワリと乗っかった。 「ん? 何だこの紙。なんか書いてあんぞ。え〜っとなになに『江戸で大火事。死者百三十人、放火の疑い!』うわ〜怖いねー。え〜『自営リーグ 火島鹿角VS裏和赤金剛石。3対0で鹿角勝利。獅子成土ハットトリック』鹿角強いね〜〜って、こりゃ『記事』やんか!」 自らにツッコミを入れる鬼太郎。虚しいこと、この上ない。 「俺としたことが二度も失敗するとは…………まあ、こんな日もたまにはあるさ。さて、最後は気合いを入れて」 たまに、かどうか怪しいトコだが、後がない鬼太郎は表情を引き締め集中する。 「いでよ! 魔獣サル!」 唱え終わった瞬間、確かに何か出てきた。が、それはあっと言う間に何処かへ行ってしまった。 「何だ? 今何か出てきたが……」 さぁ〜て、楽しい解説の時間だよ。と言っても、特に説明する事はなく、あなたの思った通り「猿」ではなく「去る」を呼び出してしまった訳だ。以上。 とまあ、古典的ギャグを三連発かましてくれた鬼太郎クン。これが江戸時代なら「おひねり」の一つでも飛んで来たやも知れんが、今の我々のお笑いセンスに対して、この程度で笑わせようなどとは少々考えが甘かっ……っと、そうそう彼は芸人志望じゃなかった。 鬼太郎は別に誰かを笑かそうと思ってわざと失敗した訳ではない。真剣にやって失敗したのだ……って、そら尚更悪いやん。 「ま、そもそも最初から、召喚術に頼るつもりはなかったからいいさ。やっぱ桃太郎を殺るなら、俺自身の手で殺んなきゃ。と、なると刀だ、そうだよ刀だよ」 などと、強がりを言っているが相当召喚術に自信があったのだろう、すっかり目は涙目になっている。 「しかし、刀の使い方なら桃太郎の方が上だろうな……。さて、どうするか……」 こればかりは仕方がないことであった。なぜなら鬼の一般的な武器は「金棒」だからである。それにぶっちゃけた話、鬼太郎は刀を持ったことすらない。 「そうだ!」 しばらく腕を組んで思案げに俯いていたが、なにやら思い付いたようで、ポンと手を打ち顔を上げ西の方を見やる。 「向こうの島に、刀を使う鬼が住んでるって話だ。まずはそこに行くか」 |