〜第三章「不帰島」〜



「長かったー。やっと着いた」
 不帰島に着いた鬼太郎。まさに感動の一瞬である。
「とりあえず最初は……く・い・も・のぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
 感動も束の間、空腹感を思い出し森へ疾走して行く。それこそ、そのまま失踪するんではという勢いで……ってさぶっ!
 この島は、岩ばかりの鬼ヶ島とは違い、島のほぼ中央にある山を中心に森が広がっている。島の大きさ自体は、鬼ヶ島とさほど変わらない。しかし、最も違う所は森があるため動植物が生息している所だ。だから……
「ふぅ、食った食った」
 このように食料には困らない。
 まあ、鬼ヶ島でも何とか育つものを栽培したり、周りの海から魚介類をとりやりくりしてはいるが、やはり限界はあり、今以上一族が増えると食料が足りなくなるのも事実だった。
 それを解消するためにも、かつて鬼の長「温羅(ウラ)」は人間が治める国へ侵略しもしたが、結果は言わずもがなである。
 それらの感慨がコイツにあったかどうか知らんが……
「さて、食ったら眠くなったな。ここまで泳ぎ詰めだったし、一眠りするか」
 呑気この上ない、どうやらありゃしないようだ。
 ま、なんにせよ食えば眠くなる。この常識は鬼にも通用するらしい。言葉を実践するかのごとく、手ごろな場所を見つけると草の上に大の字に横になる。
 岩場だらけの島で育った鬼太郎にその感触と匂いは新鮮なモノであった。その新鮮さに不快感はない、あるのは心地良さだけであった。もっとも、どんな状態であっても睡魔に抵抗するだけ無駄であろう。
 だからまだ日は高かったが、鬼太郎はあっと言う間に眠りの世界へ旅立って行った。


「さ〜て、そろそろ行くか」
 翌日の早朝、目を覚ました鬼太郎は一つ大きく伸びをして、そう言葉に出して気合いを入れる。
「どうせ、あの山の頂上に居るんだろうし」
 根拠は?
「偉い奴は大抵高い所に住みたがるもんだ! ……んっ? 何だ今の声?」
 作者の問い掛けに答えてから、慌てて声の主を探しキョロキョロ辺りを見回す鬼太郎。
「まあいいか。今は頂上に行くことが先決だ。まあ、三時間もありゃ着くだろう」
 確かに山頂まで並みの人間でも三時間もあれば着くだろう。
 ただし、何も起きなければ……


「確かに、この島に人間は居ないようだ……だが! な〜んだよ、この狼の数は!!」
 そう、この島、人が全然来ないためか、狼、野犬、熊、虎などのいわゆる猛獣と呼ばれるような動物が多く生息していたのだ。
 そんな訳で今、鬼太郎は狼に三重に囲まれていた。
「え〜い邪魔だ! 鬼火!」
「ギャウ!」
 一匹の狼に鬼火が命中し、一瞬の間に灰になる。
 それを合図かのように、残りの狼たちが次々と襲い掛かって来た。
「鬼火! 鬼火! 鬼火!」
 その襲い掛かってくる狼たちの動きを冷静に見て、連続で「鬼火」を放っていく。そのたびに一匹一匹と狼が灰になる。
「この程度で殺られる鬼太郎様では、なぁぁぁぁぁぁぁぁい!」
 次々と灰になってゆく狼を見て、調子に乗ってきた鬼太郎が高笑う。が、

 バクッ! バクッ!

「うっ!? ……わーーっ、噛み付かれてるぅ〜〜!」
 余裕ぶっこいて出来た隙を見逃さず、次々と狼たちが噛み付いてゆく。
 鬼太郎ピーンチ!!
「のわーーっ! ちょっと待て。マジやべー死ぬ、死ぬ!」
 両手両足をバタバタさせるが、狼たちは離れない。
「こ、こうなりゃ…………獄炎!」
 他に成す術が無いとみて妖力を集中し術を発動する。
 次の瞬間、鬼太郎を中心に広範囲に渡り炎が荒れ狂った。鬼が使う妖術の上級に位置する術である。
 炎が収まると、元は森だった周囲の風景はすっかり焼け野原になっていた。無論、狼の姿はどこにもない。全て灰になってしまったようだ。
「フッ、俺としたことがたかが狼ごときに、つい本気を出してしまった。まだまだ俺もガキだなぁ〜〜。もっと大人にならなければ……」
 などと、チリチリになった――まるでドリフのコントのような頭で言っている。
 鬼太郎、いまいち締まらない奴である……