Prologue 富坂高校ト云フ所
 富坂高校。                                  
 正式には県立富坂高等学校という。                       
 特に進学校というわけでもなく、偏差値的にも県内で中の上といった感じで可もなく不
可も無くという無難な高校だった。制服は男女ともブレザーで、これといった特徴の無い
質素な雰囲気を出していて、学年を示すような違いもないため外見だけで学年を判断する
のは困難である。これは制服制作のコストを抑えるセコイ手段なのだが、それを知る者は
そうはいない。ま、特に不満や不都合の類は出てないので学校関係者的にはどうでもいい
ことではある。                                 
 総じてフラットな印象を抱く高校であり、良く言って「これといった問題の無い平穏な
高校」悪く言って「個性の育たない淡々とした高校」と世間では噂されている。    
 しかし、それはしょせん外から見た範囲の風評であり実際は問題もあれば個性的な奴も
いるわけで、考えようによってはフラットな空間だからこそ個性を伸ばそうと努力し、そ
れを輝かせる場合もあるだろうし、言ってしまえば本当に個性的な者はどのような環境で
生活を送ろうともそれを圧殺されることはないはずだ。               
 校風としてもそのようなことを誇っている様な高校なのである。          
 そんな高校の校舎は、四つの棟からなり上空から見れば四角形に見えるように配置され
ていた。                                    
 四つはほぼ東西南北に配置されていることから、学校関係者は概ね東棟、西棟、南棟、
北棟とそれぞれを呼んでいる。                          
 一棟の各階には標準的な広さの教室に換算して三つ並べることができ、全部で四階まで
あった。つまり一棟には十二教室設置できる計算になる。              
 が、特別教室や準備室、職員室やら校長室そして事務室などがあるため、必ずしも一棟
につき十二教室入っている訳ではない。ただ、それらは全棟一階及び北棟に集中させてあ
るため、普通教室は東、西、南棟の二階から四階の計二十七教室がこの高校にはあった。
 現在、各学年が八組まであるため、そのうちの二十四室が使用中である。ちなみに、一
年が二階、二年が三階そして三年生が四階を使っている。              
 前置きが長くなったが、その東棟の三階の一室「二年八組」からこの話は始まる……。


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