機動戦士ガンダム外伝X〜アホを受け継ぐ者〜
我々は誇り高きジオンの兵である。
今、我々は憎き連邦のトップシークレットを掴むため、サイド7の1バンチ(と言っても今のところこれ一基しかないが)コロニーに忍び込んでいた。
「ジーンぬかるなよ」
私は後ろに続く部下のジーンに念を押した。今回の任務は、我がジオンの命運がかかっていると言っても過言ではないからだ。
「はい、デニム曹長」
いい返事が返ってきた。それでこそ、我ら特務部隊の栄誉ある隊員と言える。おっと「たかが二人で何が特務部隊だ」等とは思わぬことだ、何せ我らジオンは連邦に比べ人材も物資も圧倒的に不足している、それゆえ少数精鋭で一つの任務に当たるのである。
いわば我らはエリートであり、そこらの兵士より数段格が上なのである。
そうこうしているうちに、ついに目的の場所まで来ることが出来た。
「曹長。自分が先に偵察してまいります」
ジーンがやや緊張した声音で、そう進言してきた。私はその言葉にいたく感銘を覚えた。先にこの場の偵察に出るなど、それは死地に赴くにも等しい行為だからである。
「ジーン……無理はするなよ」
私の言葉に、ジーンはサッと敬礼を返す。
私も敬礼で応え、身を切られる想いでその勇敢なる兵士を送った
私は息を殺しジーンの報告を待つ。
……待つ。
……ひたすら待つ。
「そ、曹長!」
「どうした、ジーン!」
突然、ジーンの叫び声が聞こえてきた。
「れ、連邦のヤツら、と、とんでもないです」
戻ってきたジーンは激しく鼻血を流しながら、満足にろれつも回らない程の慌てふためいた声で私に報告してきた。
「ぐぬぅ、やはりあの作戦は本当だったのか」
私は唇を噛み締めた。
あの作戦…「V()作戦」。その概要は、コロニー内に温泉を作ってしまおうということだ。しかも、女性兵専用。ここ重要
「ジーン。かくなる上は設置法の詳細を調べるため、我々だけでも覗き……もとい、調査するぞ」
これさえ我らが軍にも設置できれば、そりゃ、兵士喜び入隊者増加。で、一気に人材不足解消。そして戦略を有利に運べること間違いなし。
ゆえに、ジオンの命運がかかっている今回の任務。それもついに大詰めに入った。
「ここです、曹長」
ジーンがそう言って岩陰に座る。私も足音を立てぬよう、慎重にジーンの横に座る。
岩の向こうからは、女性の楽しそうな声が聞こえてくる。
「ここからなら、最高の眺め……いや、調査に適しています」
そう言ってジーンは言葉を立証するかのごとく、岩陰からそ〜っと、湯気の立ち込める温泉の覗き調査を開始する。私もそれに続いた。
立ち込める湯気で実数は分からないが、どうやら十から二十人は入っているようだ。
と、湯気の合間に、先ほどの声の主が見えた。若い女性兵である。その連邦兵は、同僚であろう二人と何やら楽しそうに会話をしている。私はもしかしたら重要機密を聞けるかもしれないと、その三人を凝視した。
も、もちろん任務のためであって他意はない。
「気を付けろよジーン。ここは最もヤツらに近い所、言わば最前線だ」
三人に気づかれないよう凝視しつつ、隣のジーンに声を掛ける。
「大丈夫です、曹長。自分はこの調査結果を必ず本国に持ち帰り、我が栄光のジオンに貢献する所存です。間違っても、このような所でヘマなどしません」
私はジーンの確固たる決意の言葉に、この若者は必ずや任務遂行するに違いないと確信した。
「うお! すっげえ!」
直後、大声を上げ身を乗り出すジーン。かなりのモノを見たらしい……いや、そんな事より、今ので気づかれた。
「きゃあ!! 覗きよ!」
「あそこに居るわ!」
「痴漢!」
慌てて伏せた私はともかく、身を乗り出したジーンは完全に見つかっていた。そのジーンに一斉に女性兵たちの叫び声があびせられ次いで桶やら石鹸、シャンプー容器等々が、雨あられと飛んでくる。
「伏せるんだ、ジーン!」
「う、うわっ。そ、そうちょ〜う」
私の声も虚しく、ジーンが額に桶のクリーンヒットを受け昏倒する。
「よくも、ジーンを!!」
将来ある有望な若者をヤった連邦女性兵への怒りと、それを守ってやれなかった自分自身への怒りのあまり、私は我も忘れ迂闊にも岩の上に仁王立ちをした。
「きゃーあ! もう一人いるわよ!!」
「変態!」
スッコーン!
瞬間、私の顔に、女性兵たちが投げた何かがぶつかった。
私が最後に見たモノは、意味は分からないが「ケロヨン」という文字だった。
―完―
※次回予告※
スマン。考えてないっス。