機動戦士ガンダム外伝W〜戦慄のクルー〜
俺の名は、。
ジオンに『木馬』と呼ばれるこの新造艦たるペガサス級強襲揚陸艦、つまりホワイトベースのクルーだ。
おっと、ただのクルーと思ったら大間違いだぜ。
基本的にはメカニック担当だが、いざとなれば砲手をやったり銃を取って白兵戦に参加したり、そしてSMMSパイロットをもこなしたりと……まあ、自分で言うのもなんだが『オールマイティ・パーフェクト・ハイブリッド・オールレンジ・マルチ』クルー、と言ったとこだろうか……。
世間では、ホワイトベースが単独にも関わらずここまで沈まずに来れたのは、アフロアムロのニュータイプ能力のお陰だとか、コーヒーにブライトの采配が良かっただとか、ミライの操舵技術が優れていたからだとか言われているが、俺に言わせりゃ、それら些細なことよりなにより『この俺がこの船に乗っていたから』これ以外の要因が一体何処にあるのか、と言いたい、そしてそれこそが真実であろう。
艦内抱かれたい男No1を決めるなら、間違いなく俺であることは火を見るより明らかだろうし、それ故そんなアンケートはされた試しが無い。
あぁ、なんて凄いんだ俺って。自分が恐いぐらいだ。
《おい、ジョブ・ジョン》
おっと、ブライトからの通信だ。
一体何だ? やっとアムロとガンダムのパイロット変更か。
それとも、俺の素晴らしい撃墜率をほこる砲手としての腕を見込んで、ホワイトベースを守らせようってのか。
まあ、何でもいいさ、何と言っても俺は『オールマイティ・(以下略)』クルーだからな。
さあ、何でも来い!!
《トイレ掃除しとけ……》
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「まじぷりぃぃぃぃん!!」
――その時、彼の…いや、彼だけの心には、確かに戦慄が走ったという。
―追―
十数年後。
サナリィ()の幹部となった彼が中心となって「F計画」が発足され、F90そしてF91を製作したことを知る者は少ない……
―完―
※次回予告※
戦場にいると人は様々な妄想に掻き立てられる。
いくら崇高な大儀名分を掲げようとも、結局はただの人殺しを自分はしているのだ、という血なまぐさい現実から逃避する為に人はそうするのかも知れない。
自分自身を奮い立たせ、明日への生きる糧とし殺伐とした今日を乗り越える手段なのかも知れない。
彼も、そんな運命に飲み込まれていた……オムル・ハング……彼は、その逃れられない運命に何を見るのか!
次回「機動戦士ガンダム外伝X〜アホを受け継ぐ者〜」