第21話 クリソツな栗毛


 …かくして、ついに行動を起こしたくい蔵とミナミは、看守に見つかることもなく悠然とゴールにむけてダッシュしていた。
 いや、正確には、ゴールだと思われる場所に続いている筈の廊下がある階にあるドアの鍵を持っているであろうウマミら看守軍団の兵舎への道から見つかるとまずいのでちょっとそれたところ…漠然とした言い方をすれば、そのあたりに向かっていた。
「結構な距離だぜ…ここで見つかったらトゥバンジャンだな」
「オジャンだろ」
 まだ2人の会話には余裕が見られる。
 なぜなら、上にも書いたが看守は全員いなくなっているし、なにしろゴールだと思われる場所に続いている筈の廊下がある階にあるドアの鍵を持っているであろうウマミら看守軍団の兵舎への道から見つかるとまずいのでちょっとそれたあたりにいるので見つかる心配が起きないのであった。
「とにかく鍵を見つけないとな…先には進めないぜ。」
「ミナミ…あんた、何でも知っているんだな…まさか…、あんた…いや、『あなた』は…!」
「俺の詮索は後だ。今は鍵を探すんだ!」

 2人は、ゴールだと思われる場所に続いている筈の廊下がある階にあるドアの鍵を持っているであろうウマミら看守軍団の兵舎までやってきた。
 必死で兵舎を探すが鍵は見つからない。
「俺の鍵鋳造技術ではダメなのか?」
「廊下への鍵はカードパスワードキーなんだ。普通の鍵じゃない…しかも、入力に3回失敗すると看守の中耳にセットされている小型センサーが働くんだ。」
「中々手の込んだことをしやがるぜ…」
「…しかし、このままでは埒があかん…」
「………」
「………」
 どうする…2人に緊張感が走ったその時…!!!

 ファーーンファーーンファーーーンファーーーン………
「!!サイレン!?」
「どっかの馬鹿野郎がこんなときに…!!!」
「くそっ、隠れろ!!」
 とっさに兵舎のベッドの下に隠れた2人。
「少々、冷めるまで時間がかかりそうだな…」
「そういえばミナミ、さっき言ってた『埒』ってなんだ?」
「…こんなところで言うことか?」
「どうしても知りたいんだ!気になって夜も眠れない!」
 ふぅ…ミナミはため息をついた。
「いいか…埒というのは、馬場の周りの柵のことなんだ。その囲いというところから、出れない=どうしようもない…という意味になったのさ。」
(注:事実無根の可能性アリです…だれか本当のこと教えてください)
「馬場か…昔、俺が牧場で世話をしたとき、綺麗な栗毛色の馬がいたんだ。」
「…ほう。」
「俺はそれにマイケルという名前をつけて、可愛がっていたんだ…それを…あいつらが…」
「マイケル!?」
 ミナミは急に声を張り上げて…そして、今置かれている状況を思い出し…慌てて口を押さえた。
「ど、どうしたミナミ?」
「い、いや…なんでもない…それより、目の前の引き出しを見てみろ。」
「ん?…おお、あれは…」
「そう、あれがカードキーだ。やっと見つけた。あれを持って問題のドアのところまで行こう。」
 何故か話を途切らせたミナミを見て、くい蔵も不思議に思ったが…その場では何も言わずミナミについていった。

 2人はゴールだと思われる場所に続いている筈の廊下がある階にあるドアの目の前まで来た。
「まずは…………と。」
 パスワードを入力したミナミ。しかし…
『ヒトツメノパスワードヲジュリシマシタ。フタツメノパスワードヲニュウリョクシテクダサイ』
「なに!?2つめ!?おい、どうするんだミナ…」
 口をふさがれたくい蔵。
「黙ってろ。」
 ミナミは目の前で2つめのパスワードを入力した。
 MI・NA・MIと…。

 …かくして、ドアを突破し、ゴールだと思われる場所に続いている筈の廊下を走り抜ける2人。
 この先に、一体何が待っているのか。
 そして、ミナミは一体何者なのか。
 なぜマイケルの名にミナミが反応したのか。
 様々なことを考えつつ、くい蔵はミナミと共に走る。

 一方、ミナミは…。
 くい蔵のつけた『マイケル』という名前のセンスの無さに爆笑をこらえている真っ最中だった。

【次回予告】
 まさかの障害…いや、ここでは刺客と呼ぼうか…に阻まれ、それをうまく切りぬけたくい蔵とミナミ。
 ここで、世界破滅への第一歩を告げる鐘が鳴る…。
 次回、デジタルすきもん第22話『拳 第一章』で、PPPK!

















 
第22話 拳 第一章


 廊下を走るくい蔵とミナミ。
 しかし、ふと、くい蔵の足が止まった。
「どうした、くい蔵?」
 それに気付いたミナミが、くい蔵に振り返ったのは数歩先行してからだった。
 くい蔵は神妙な顔つきで立ち止まっていた。
「なあミナミ…あんた何者なんだ? 初めから俺の名前を知っていたよな」
 ポツリとくい蔵が言った。
「金はそんなに持ってないクセに、核ミサイルなんてモノ持ってるし」
 一歩踏み出し続ける。
「この先に何があるのかも知っている素振りだ」
 もう一歩踏みだし言う。
「それにさっきのパスワード……偶然だ、なんて言うなよ!」
 さらに一歩踏みだし今度は強い口調で言った。
「詮索は後だ。と言ってたが、今はっきりさせたいんだ。あんた一体誰なんだ!」
 ミナミの目の前まで詰め寄り訴えかける。

 ガン!

 ミナミの固められた拳が強く壁を打つ。
「今は…今だけは、黙って俺に付いてきてくれないか…」
 何かに堪えるようにうつむき苦しそうにミナミが言う。
 それは決して壁を打ち付けた痛みに堪えている訳では無いようだ。
 むしろ壁を打ち付けることによって、その『何か』の痛みを誤魔化しているようにも見える。
「わ、分かった…」
 ミナミの意気を汲んで、くい蔵も引き下がることにした。
「すまない…いずれ全て話す」
 クルリと踵を返し、再び廊下を進んで行くミナミ。
 もう何も言わず、その背中を追うくい蔵。
 この先に何があるのか、そして自分がどう関わっていくのか……
 しかし、くい蔵の疑問は廊下の先同様、闇に包まれていてその尻尾すら見せなかった。

【次回予告】
 笑い無しのガチンコ勝負!
 果たして廊下の先には何が待つのか!
 キーンコーンカーンコーン、世界破滅への鐘が今鳴った!
 次回、デジタルすきもん第23話『遅れてきた者』で、全品30%OFF!!

















 
第23話 遅れてきた者


 あれから3日。
 走って…休んで…ちょっとまた走って…また休んで…またまた走って…わき腹が痛くなってきたから休んで…またまたまた走って…ちょっと小走りになって…眠くなってきたから寝て…これじゃいかんと思って走って…
 ついに廊下の曲がり角まで来たミナミとくい蔵。
「はぁはぁ…やっと着いたな…それにしても偉い長い廊下だな…。」
 世界の尺度も設計も無意味である。
「まだまだ先だぞくい蔵。お前、この獄に連れてこられた時はどうだったんだ?」
 忌まわしい記憶とともに、くい蔵は当時の事を思い返した。
 昔…山を歩いていて…気づいたら…ここにいた。
「そんだけかい!」
「ん?誰に突っ込んでるんだくい蔵?」
「い…いや…それより、ここに来たときは一瞬で牢にたどり着いたような…」
 やはりおかしい。こんなに距離は無かった。そう言おうとすると…
「…ミスト・ディメンションというのを知ってるか?」
「いや…直訳すると霧の次元…意味がわからないが…」
「そのままさ。」
 ミナミは言った。
「この牢獄は霧…つまりミストの中に作られている。ミストといっても特殊なものだがな。その力は次元すら歪ませてしまうものなんだ。」
「つ、つまり…」
「そう、中へ向かうには簡単だが、外へ向かうのは困難なんだ。」
 ともかくそういうことらしい。無理矢理なこじつけだな…とくい蔵は思った。
「しかしそれでは、いつまでたってもゴールにはたどり着けないのでは…?」
 くい蔵は当然誰もが思う質問をした。
「いや…いくら次元を歪ませたところで、スタートとゴールを伸ばしたり縮めたりは出来るが、0には出来ないんだ。…現に、曲がり角にたどり着いただろう。」
 そういえば…トイレに行きたくなったとき…獄に入るときに覚えていた場所に走ったが全くたどり着かず、漏らしてしまった経験がある。
 しかし、トイレまではあとちょっと我慢すれば良いだけの距離だったのだ。あのときは悔しかった。
「しかし…次元が歪んだままだと…ここを出るまで…」
「そう…このままだと3年はかかるな。」
「………!!!」
「だが…こっちには切り札がある。」
 ミナミはひとつの滑稽な形をしたメカをくい蔵にみせた。
「ディメンション・コネクターといって、次元と次元を結びつけることが出来るんだ。これを使えばスタートとゴールを一瞬でつなぐこともできる。」
 ずこーーーー。くい蔵の見事なコケが決まった。
「じゃああんさん!最初から使えばよかったんでげすけい?」
「何ジンだ。…考えてもみろ、ここは敵陣なんだぞ。もしここで次元を繋げてみろ。敵もこちらに一瞬で来れてしまうぞ。」
「あっ…」
「だから、安全なところまで進んで、そこで初めて使うべきなんだ…わかってくれ。そこは、そんなに遠くない。あと5日もすればその安全な場所に出れるだろう。」
「………」
 くい蔵はなにも言い返せなかった。

 その頃。
「アニキ〜、この廊下妙に長いっすねぇ〜」
「ふん、次元でも歪んでんだろ。」
 霜は変なところで鋭かった。

【次回予告】
 5日後…『安全な場所』にたどり着いた2人。ついに「ディメンション・コネクター」のスイッチを入れるが………!?
 恐怖に怯えるくい蔵の顔に、ついに霜とガリの姿が見える!
 次回デジタルすきもん第24話『晴れ時々ガングロ系』で、空耳〜ア〜ワ〜ァァァ

















 
第24話 晴れ時々ガングロ系


「なあミナミ、安全な場所ってのはまだなのか?」
 伸びた無精髭をジョリジョリさすりながらくい蔵が訊ねた。
「う〜ん、そうだな…」
 ミナミも顎に手を当て(無精髭は生えていなかったが)敵との距離を計算する。
「オラ、もう腹へって動けねえぞ」
 くい蔵は追い討ちとばかりに自慢のアニメキャラ物真似で抗議する。
「…………そうだな、ここらでコネクターを起動するか」
 物真似に気付かなかったのか気付いててシカトしたのかは定かでなかったものの、
ミナミはここならば安全だと判断した。
「では、スイッチを入れるぞ。これで晴れてこの次元牢から出れるな」
 ミナミは懐から例のメカを取り出し、そこにあるボタンのような物に指を置く。そして…
「ポチッとな!」
 威勢良くボタンを押す。某キャラの真似をし……
 こいつやりやがる。くい蔵はそう思わざるをえなかった。

 瞬間、視界が歪む。いや、歪んでいるのは壁や天井の方かもしれない。
 そのまま目に映る物全てがフェードアウトしていき、やがて完全にブラックアウトした。
 その間、絶えず体に全方位から重圧がかかっていた。それは徐々に強くなって、このまま潰されるのではと恐怖する。
 が、次の瞬間には唐突に浮遊感が体を包む。まるで宇宙を漂ってるように。
 上下の感覚が消え失せる。それがこんなに心細い事とは思いも寄らなかった……
 そして、光が爆発し全てを飲み込んだ。

 思わず目を閉じていたくい蔵が目を開けると、そこは長い廊下ではなかった。
「草…か……?」
 我が足で踏み付けている草を見ながら、くい蔵が呟く。そこは緑鮮やかな草原だった。
「成功したみたいだな」
 隣にいたミナミが満足そうに言う。
 と、その時
「それはどうかな?」
 聞き覚えのある男の声にくい蔵がすぐに反応し、声の聞こえて来た方に向く。
 ミナミも同時に声の主に振り向いた。
「スティール=ハート!」
 くい蔵が憎々しげにその男の名を叫んだ。
「なんでここにいるんだ…ディメンション・コネクターの効果範囲には俺とくい蔵しか
いなかったはず」
 手に持つディメンション・コネクターを見て、呆然とミナミが言う。
「ふ……これだよ」
 そう言ってスティールは懐からディメンション・コネクターと似た機械を取り出した。
「そ、それは!?」
 何かに気付いたらしく、ミナミが驚愕の声を上げる。
「さすがはミナミくんだ、一目見ただけで分かったか。そう、これはディメンション・コネクターの
起動を察知しその行き先をトレースする『D・Cトレーサー』だ」
「くッ、あれの効果範囲はディメンション・コネクターの数倍はある……」
「キミが獄中に潜入していた事は知っていたさ。目的までは判らなかったがね。しかし、目的を達成し
次元牢から出る時には、必ずディメンション・コネクターを使うだろう事も予想はついた。だから今まで
それを待っていたのだよ。まあ、内部を混乱させてその隙を突く作戦は見事だったがね」
 D・Cトレーサーを懐にしまい、代わりに銃を出しながら余裕の態度でスティールが言う。
「俺たちはまんまと躍らされていたってことか……」
 悔しそうに呟くミナミ。
「さて、もう一度ディメンション・コネクターを使って次元牢に戻ってもらおうか」
 銃口をミナミに向ける。撃てば必ず当たる距離だ。
「や、やばいぞ。どうするミナミ?」
 銃にビビッたくい蔵が、震える声でミナミに問う。
「本来なら二人ともこの場で射殺するんだが、キミの目的であるその男が何者なのか興味があるし、
私はキミに一目置いているんだよ、ミナミくん。いや、次元牢の設計者にして『空間歪曲論』や
『次元変換論』の著者、ミナミ=B=スロープ」
 目を細め静かに言うスティール。しかし裏腹にその言葉はくい蔵に大きな衝撃を与えた。
「ミナミ…やっぱり、あんた……」
「すまないが、俺の事はもうちょい先だ。まずはこの場を何とかしないと」
 とは行っても、ミナミ自身にもなす術は無いように見えた。スティールは「殺したくない」と言っているが、
それはあくまで「出来れば」の話しであり、下手な動きをしようものなら迷わず撃って来るだろう。
「考えても無駄だと思うがね。選択肢は二つ。私に撃たれるか、次元牢に戻るか、だ」
「そうでもないさ。第三の選択ってやつは、得てして第三者によってもたらされるもんだ」
 スティールの言葉尻にかぶって来るように、新たな人物の声が響いた。
 くい蔵とミナミ、そしてスティール、三者三様でその声の主に振り向く。
「焼肉くい蔵、やっと逢えたぜコンチクショウ」
 そこにいたのは、霜&ガリであった。丁度、くい蔵&ミナミ、スティールと三角形を形成する位置にいた。
 今まさに、主要キャラ(?)勢揃い!
「何者か知らないが、どうやって突然この場に現われた? D・Cトレーサーに反応は無かったが」
 依然、銃口はミナミに向けたまま、怪訝な表情で霜に訊くスティール。
「アホぬかせ、次元を扱わせたらルパンかオレか、ゆうぐらいやっちゅーねん」
「そうっす、そうっす。よく分かんねえっすけど、アニキはすごいっす」
 霜の答えにガリが合いの手を入れる。
「さてと、オレはくい蔵に用があるんだ。他の者には退場願おうか?」
 霜はそう言って不敵な笑みを浮かべた……。

【次回予告】
 彼らは何故出会ってしまったのか。
 それは偶然なのか、いや、彼らがそうあろうと行動した必然なのだろうか。
 想いは交錯し、やがて一人の男に収束した。
 次回、デジタルすきもん第25話『くわえタバコのアンチクショウ』に、白ヒゲ危機一髪!!

















 
第25話 くわえタバコのアンチクショウ


『いやーごめんごめん!!!』
 突然発生した次元の歪みから現れたのは、この世からは全く予想だに出来ないだろう形相…人型?…のモノだった。
『作曲とかさぁ、そういうので忙しかったんだー2ヶ月も放っておいてすんまそん。』
 何を喋ってるのかわからない。
『すっかり忘れてたよーいやー危なくこの掲示板ごと閉めるところだったネ!』
 口調(いや、口があるのかさえ、俺たちにはわからないだろう!)からいって陽気らしい。
「おまえ…なにもんだ?」
『俺はすきもんさ!』
 す・き・も・ん…全く言葉を理解できなかったその場の人間たちでさえ、この4文字だけは理解できた。
「今…すきもんと言ったか?」
「まじかよ…」
「どうすりゃいいんだよ…」
「オラハラヘッタだ…」

『でもねー僕はこのデジスキ、結構好きなんだよねー続けたいんだけどさぁ』
『そろそろ潮時が来たような気がしないか?』
 ぞくっ…。
 その場にいるもの全員が、一瞬…何かに引き裂かるかのような冷たさを感じた。
 言葉を理解は出来ない…しかし、「本能」というやつがこの場が危険であることを教えていた。
『消して…しまおうかな。』
『FTPを使ってDELキーを押せばすぐだからな。』

「こいつを…今すぐ、倒すぞ!!!」
「おう!!」
 その場にいるくい象、ミナミ…あと、誰だっけ? は一斉にそいつに攻撃をしかけた!!!
『うぎゃーーー!なにすんねん!お前等…僕をだれだとおもってんねん!』
『…消えろ。DELETE…』

 −ぷつん−

『ふぅ…終わったか…さて、仕事後の一服と…』
『お前タバコ吸わへんやんけ!』

【次回予告?】
 ディメンション・コネクターのシンクロによってついに現れた『神』の存在…。
 世界は一瞬にして崩壊し、くい蔵たちは闇へ呑まれていった。
 …え?デジスキ終わっちゃうの??そんなのイヤーーー!!!!
 誰か…誰か復活させて!!!
 次回デジタルすきもん異次元編第1話『ハッキングであたりまえだのクラッカー』で、仕切りなおし!

















_

デジスキTopへ