−−− 三人でお食事 −−−
あゆみちゃん の所への到着は さらにそれから”1時間”は遅れた。 一瞬迷いはしたものの、このまま連れ回すならどうしても 少女を”変身”させる必要が有った。 今 一人にさせると、 先ほどの”悪玉”達に追い回される恐れも有ったが、 何より自分自身が、 「変身した彼女を見てみたい。」気持ちが大きい様だった。 だが 俺の家まで戻る時間など とても無く、 少し考え ”少女”を近くのHOTELに連れ込むことにした。 平日昼間なこともあってか、思った通り空いているようだ。 満室なら 今更 別の場所に行く時間も無かったので、 諦めて このまま約束の場所に行く事に決めていたので 一先ず安心した。 駐車スペースには 疎らに車が止まっている様子で、 余り歩かずに済みそうな ホテル入り口付近に駐車する事にした。 ”女性”を連れとしているなら別段気にする事も無いが、 今回の場合、ちょっと未体験な「世間の目」が気になった。 知り合いはもちろん、出来る事なら 知らない人にも会いたくない。 自分の為に・・・そして”少女”の為にも。 こういう時には、余り嬉しくない彼女の声が辺りに低く響いていた。 滑り込ませると同時に、エンジンを切る。 今まで辺りに響いていた 決して上品とは言えない彼女の声が ピタッと止むと、時間の流れが一瞬止まった。 ”さて、どうしたものかな・・・・・”と考えてると、 助手席から申し合わせたかのように”少女”は愛車から降りた。 意外な展開を驚きつつ、”少女”を追う形でフロントに向かった。 自動ドアが開き 中に入ったと同時に、 フロント奥のドアが開いて中年の女性が顔を出す。 いい年しているやつが、”少女”を連れ込んでいる。 とてもじゃないが 普通のカップルには見えない。 この状況が余り良くない事を承知で部屋を取った。 断られるかとも思ったが、 意外とフロントの女性はあっさりした対応で部屋のKEYを差し出し、 「1Fですので、後ろのエレベ−タを使ってください。」 とだけ言った。 「今時、こんな カップルもどき 珍しくも何とも無いのか・・・」 あるいは 人生XX年の余裕なのか、 同伴が 薄汚れた”少女”である事を咎められる事も無く、 オバサンの対応は何も無かった。 部屋のKEYを貰うと二人無言でエレベ−タ−に向かった。 「1F? エレベ−タ??」と一瞬動きを止めた時、 「1Fは、一番下の部屋になっていますので。」と、 フロントの女性が声がした。 丘の上にある そのホテルは、4Fがフロントになっており 1Fは 確かに一番下になっている様だ。 ゆっくりした動きのエレベ−タにイライラしながら、 先ほどの自分の行動を少し笑ってしまった。 ドアが開くと”101”のプレ−ト表示が点滅しているのが目に付いた。 「ご丁寧にどうも・・・」 そう思いつつ、何も話さず部屋に入り込んだ。 「とりあえず、御風呂に入ってくれるかな?」 「・・・」 「その間にちょっと買い物行って来る。 それでいいかな?」 「・・うん。」 ”少女”は頷くと バスル−ムへ向かった。 幸い バスル−ムにはドアがあり、しっかり”バスル−ム”だったので、 ほっとした。 これが間抜けな ガラス張りだったら・・・ 後悔する事になってただろうから。 少女がバスル−ムに入りドアを閉めるのを見届けた後 次の仕事に掛かった。 どう考えても怒り出すのは目に見えているので、 敢えて自爆する必要も無いのだが 本当に怒らせると困るので、 迷いはしたが あゆみちゃん には遅刻のTELを入れた。 呼出し音が電話の向う側から聞こえ出し、 二回目で「ぷちっ」という恐ろしい時間がSTARTする合図がした。 この合図からして 既に怒っている気がした・・・。 「まいど!」 できる限り元気な声を出したつもりだったが、 声が震え 旨くいかなかった。 「んも〜」 強烈な一言。 それ以上あゆみは 何も話さない。・・・・完全なRED信号だ。 電話の向うの雑音だけが伝わってきた。 「まだもう少し・・・・着いたら説明する。悪い、んじゃ。」 なんとかそれだけ言い残し そそくさと切った。 一方的に報告するのは あゆみ だけでは無さそうだ。 ただ、”御許し”を正式に頂いてない事だけは確かだった。 携帯をポケットに突っ込みながら、「んじゃぁ〜 行ってくるね。」 大声でそう言うと部屋のKEYを持って出掛けた。 エレベ−タ−を降りフロントを通り過ぎるながら、 「すぐ戻ります。」と、 視線も向けず言い残し、KEYを持ったまま愛車に向かった。 マスタ−KEYを使われればそれでお終いだが、 ”少女”一人なので 持って行く事にした。 さっきの路上で騒動を起こした ”カラス軍団”以外にも、 彼女の”敵”が居ないとも限らない。 入浴している間に近くのブティックに行き、 少女が着れそうな洋服を買いHOTELに戻った。 どれが良いか 選ぶ時間が無かったので 多少値は張ったが、 少女と同じ様な 体格の子が着ている物を取り上げ買う事にした。 もちろん・・・・マネキンちゃんの物だが。 少女は見事に変身した。 やはりオイラの趣味が良かったのか、 それとも マネキンちゃんの趣味が良かっただけなのか・・・ とにかく彼女は変身した。 「ありがとう。」 しっかりこちらに目線を向けて一言、彼女が言った。 「へへ。」 ほんとに照れて、それしか言えなかった。 初めて俺の瞳を覗き込む彼女の視線に、 今回はオイラの方が照れた為に 目線を先に外してしまった。 変身前には、彼女を見る 皆の表情が”拒絶”になるだろう姿から、 今では、少しでも彼女に近づきたくなる ”本来の姿 ”に戻った。 実際、石鹸の匂いすら 遠い彼方の物だったのが、 今では入浴したばかりの美しく 肩まで流れる髪をなびかせて、 心地よいシャンプーの香りが助手席から私の方にやって来る。 その香りを気持ちよく感じつつ、約束場所に向かって移動しながら ”彼女”と打ち合わせした。 考えていたよりも、あゆみは機嫌良く俺達を迎えてくれた。 ”しどろもどろ”になりながらも、あゆみを納得させる事も出来た。 ”少女”は ”親戚の子供”という設定でこれから先通してもらう事にし、 夏休みの間 俺の家に泊まることを説明した。 これで 何の心配もなく俺の家に泊めることが出来る。 「はじめまして わたしは あゆみ。 あなたの おなまえは ?」 「・・・・・・・・・」 「人見知りしてるんだよ。」 と言いつつ、自分自身彼女の名前を知らない事に気がついた。 ”なんていう 名前なんだろう?” しばらくしてから、少女は一言。 「...エリ です。」 そう言うと、恥ずかしそうにうつむいてしまった。 あゆみは しゃがみつつ、少女の目線の高さで、 「そう これからも よろしくね !! エリちゃん」 と挨拶した。 そして ニコニコしながら 視線を俺に向けて 一言。 「でも RAIの親戚だとすると かわいすぎない?」 「・・・・・」 腹の中では、”何てことを言うのだ 失敬な!!”と思ったが、 ごちゃごちゃ言って 話がこじれるのも困るから ”ぐぐっと”我慢した。 「 だろおぅ〜。 オイラも 綺麗だと思うよ。」 「え”!! 綺麗って....」 「い、い、いや・・・ その 綺麗だよ あゆみ」 「それは そうよ わたしが 1番!」 何時の間にか 顔を上げてこちらの遣り取りを見ていた エリちゃんが、 「ククッ。」 と 小さく笑ったのが見えた。 それを見て 俺は ヒヤヒヤしたが、またもや ”かわいいぃ〜〜” と思ってしまった。 幸い あゆみには 見つから無かった様子で、 ”ふ−”っと胸を撫で下ろした。 「 おね−さま お腹が空いちゃった。」 「 お、おね−さま。 いい心掛けね エリちゃん 。 ん〜 いいわ アレにしましょう。 ・・・RAI?」 今度は俺が 笑いを堪える番になった。 腹がよじれるのを必至に我慢しながら、 出来るだけ あゆみの方に顔を向けづに、 「・・うい。 分かった。」 これが精一杯だった。 これ以上は 笑いが漏れ出しそうで、返事できなかった。 ”それにしても ”おね−さま”とは。 ” ”流石のあゆみも面食らってたな あはは。” ”こりゃ もしかすると、あゆみ これからは 大人しくなるかもね。” ”オイラの境遇を観た神様が、 あゆみより 上手の彼女を送り込んだのかもしれない。” で、食事を取るということで レストランへ向かうことに。 この時が 一番素敵な時間(?)だったのかもしれない・・・ 知る由しも無かったが・・・。 店内に入ると 利き過ぎている冷房と共に、ユニークな光景が見えた。 「まるで ジャングルだな これじゃぁ。」 店内は さながらジャングルをそのまま持って来た様に、 その店が海辺であるにも関わらず、店内は 観葉植物等で一杯だった。 だが それら草木が イミテ−ションらしいのが解ると、 さらに気分が重くなった。 それでも、テラスになって 海に面した席があり、 太陽の光を一杯浴びながら 食事が出来る場所が有った。 ”ジャングル”で食事をするより、 こちらの席で海を眺めながら食事したほうが 同じ食事を取るにしても 天と地の差が有るだろう。 店内のユニークな雰囲気は他の人に任せて、 その席を占領することにした。 この店は シーフードが売り物らしく、 メニュ−を見ると魚介類、特に”えび””かに”を使った料理が、 この店自慢らしいことが分かった。 「・・・・・なんて店に。。。来てしまったのだ。」 一気にブル−になりつつも あゆみの機嫌を損ねないように、 ここは ”ぐぐっ!!”と我慢した。 可能な限り ”悪魔の食物”を避けて注文しようと思い、 メニュ−を物色していると、 俺の心を読んだのか。。。。。 「 ねぇ。 わたしにオ−ダ−決めさせてね ♪ 」 と あゆみが言った。 ”参りました。”と心で泣きながら、 「 うん いいよ。 」と降参した。 しばらくすると 注文された物が次々と、 テ−ブル一杯 溢んばかり並び出した。 とてもじゃないが "男1人、女2人" それも、 一人は”少女”なんてメンバ−の注文する量ではなかったが、 あゆみは 黙々と撃破しているようだ。 「こんなに お昼ご飯 遅くなったんだから、多少食べても大丈夫よ」 と、正当化しつつ黙々と撃破していった。 エリの方も負けておらず、一言も話さないで 黙々と撃破していた。 幸せそうな顔をして 食事をしている二人を見て居ると... ”う−ん なんかこっちまで幸せだなぁ〜”なんて気分になった。 だが・・・・その状況を冷静に見ると.... 悪魔の沢山有る足を引き千切り 甲羅を割りつつ ”内部”に詰まっている”悪魔”の身を美味しそうに食べている... エビ大魔王なんて 頭ごと行っちゃってる・・・ 悪魔達を ”食べ物”と認めていない俺としては、 先ほど迄の気持ちも吹っ飛び、 見て居るだけで食欲は ゼロになっていった。 部外者として、二人の食っぷりを見て居ると、 「RAI 食べないと駄目よ〜 嫌いなの知ってるから こうして注文取ってるのよ。 タ・べ・ナ!!」 と あゆみに見つかってしまった。 エリも食事を中断して、 「叔父様 嫌いなの? ・・・ゴメンナサイ 知らなかったの。」 と俺の方を見て言った。 「おかしいわね。 RAIの ”甲殻類”嫌い 有名なのに・・・」 あゆみの鋭い突っ込みに オイラは慌てて、 「あ! 昔はね 好きだったんだけど。 ・・・何時の間にか 嫌いで食べれなくなったんだ。」 と、言い訳しつつ それ以上の攻撃を防ぐ為に、 「うし! 久し振りに食べてみっかなぁ〜。」 等と、”死神”との契約を意味する言葉を唱えた・・・。 「うん うん。 わたし お皿に入れてあげるね!!」 なんてニコニコしながら やさしく言うと、 皿の絵柄が ”異星人”達でドンドン消えていった。 あゆみの笑顔は嬉しいが、 自分の皿を見るとテンションは最低に近づいていった。 ”甲殻類なんて 絶対に何処かの星から来た「異星人」に決まってるぞ!!” ”足がいっぱい有って、外が硬くって中グチャグチャしてる・・・・” ”「異星人」達を有り難がって食べてるような奴、 「カブトムシ」でも食べれるはずだぁ!!” なんて言葉を腹の中で叫びつつも、 笑顔を向けられては 食べない訳に行かなかった。 なんとか試練を乗り切った頃には、 あゆみチャンのご機嫌はいい感じにまで来ていた。 「食べ物で 機嫌が直るとは、子供と一緒だな。」 なんて とても言葉に出して言えないが、 腹の中で爆笑していた。 しかし 食事中に会話がこの程度しか無かったのは、 このテ−ブルくらいだろうな。 ”カニ”・”エビ”を食べると何時もこうなるが、 今日の場合は 二人して競合うように食べていたから 余計に会話が無くなったのだろう。 俺の方も 割り当てられた「異星人」退治の最中でも有ったが、 気合いの入った御二人さんを見て居ると、 とてもじゃないが 会話しようとは思わなかった・・・ いや 出来なかった。 あゆみの食べっぷりには いつも 関心させられる。 あんなに食べているのに、スタイルは抜群!! ま、日頃から ”パタパタ”と動き回っているから それで釣り合いが取れてるのは違いないが・・・。 以前 ”ダイエット”の話をした時、あゆみの 「ダイエットするくらいなら 死んだほうがマシ。」発言で、 瞬間に会話が終わったことが有った。 元々 オイラは 少食(&偏食)で3度のご飯も適当なのだが、 あゆみと付き合い始めてから、 彼女の食べっぷりに 連られて”パクパク”食べるので、 苦手なものも いつもより美味いし、 食事は3度きちっと食べるようになっていた。 食事に関しては 彼女の考えが正しく、 いつも感謝していた。 払いがいつも オイラになる件を除いては・・・・・ −−−To be continued.−−− NEXT
−−鼻、もとい 華 募集−− RAI.へmail GO〜 あなたからの感想を心待ちにしています。RAI.へmail GO〜
”挿し絵”なんてあればいいかなぁ〜って・・・・ 何方か”作っちゃる!!”って御方いませんか? ぜひMAILにて ”作っちゃる!!”と。 (^-^

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