−−− 裏と表 −−−
光の届かないビルの谷間。 この辺りでは 珍しくも無い超高層ビル群。 その誰にも相手にされていない空間に・・・・ こんな空間が有る事なんて、 作った本人でも想像だにしなかったであろう。 表の世界では、 季節は夏真っ盛りとなっており、 引っ切り無しに車が行き交い 人々も一秒でも早く辿り着きたいかのように、 早足で歩いているのが滑稽であった。 排気ガスと暑さのせいで、 ハンカチを持っている女性達の顔は、 薄黒く汚れており 容赦無い日差しのお陰でなんとか見栄えを保っている。 男はこのくそ暑い季節にも関わらず、 長袖 長ズボンの姿をしており、自殺行為としか思えないネクタイを きっちり締め込んでいる。 何かが間違っている・・・ そんな事を感じてしまう光景が広がっている。 そんな世界の光を遠くに感じる世界が有った。 騒音も、あくせく蠢いている人々の姿も無い・・・・ そんな世界が有った。 遠くの方にはちょっと狂った光(世界)らしき物が見える。 らしき物・・・・ 只の線でしかなく、それが確かに昼間の光というには あまりにもハッキリしない物だった・・・・・ 周りは薄暗く普通の感覚の人間が入り込もう等とは考えもしない場所だった。 いや、そんな所に世界が広がっている事なんて、 誰一人として想像できないだろう。 そんな所に一人男が座り込んでいる。 一帯何時から其処に居るのだろうか・・・・。 元々は コートだったろう上着は、 今では斬新なデザインのマントの様にしか見えない。 まして 原色は?等ということは考えも及ばず、 匂いがそのまま色になるとこうなると言う見本が其処には有った。 男が座り、一体幾ほどの時間が過ぎたのだろう。 すでに体の感覚が無く、身体中が汚れ放題になっている。 本人は現実世界から全く切り離されているとでも言いたげに、 自分の姿に対しての関心を全く放棄している様子だ。 男が発する匂いか、周辺から流れてくる匂い・・・ 食べ物と動物の匂いが入り混じった物が辺り一帯に充満していた。 外の人間がいきなりこんな物を嗅いだりすれば、 卒倒しかねない匂い。 男はそんな物に等に関心はなかった。 いや・・・感覚が鈍っているのかもしれない。 男はうつむいたまま ぴくりとも動かなかった。 まるでこの空間の一つとして溶け込もうとするかの様に。 時間だけが流れていく。 「・・・・せんせーーいい」 遠くからぼやけた音が鳴り響く。 言葉として認識しておらず、 只の雑音に過ぎないその音がどんどん大きくなっていく。 「痛い。 ・・・・頭。」 音としか認識しない言葉。 声は聞こえているが、何を意味するのかを考えようとしない頭の中。 己の命令全てを拒否するかのように、 外部からの情報を思考することを止めた俺の頭。 何時も聞こえはする。 だが、何もする気が起きない・・・・・いや、何も出来ない。 「・・・せんせーーー あ、いたいたぁ〜」 今度は先ほどに比べ物にならない大きな音がする。 雑音が大きくなる。 「うる・・さい・・。」 耳の奥から頭の中にドンドン入り込んでくる音。 追い出そうにも何もしない俺。 ”それで?・・・・・・・・・・・” 全ての行動がここまでだ。 何時からなんだろう。 何に対してもやる気が無いのは・・・・・ おれは?? ”それで??・・・・・・・・・・” 一体何回目だ、こんな事考えるのは止めよう。 「よぉ 先生!!」 目の前の景色が少し変化している。 ”それで??・・・・・・・・” 変化の有った景色がドンドン大きくなっていく。 次には体に何かが触れる感覚が訪れた。 「・・や・・めて・・・。」 誰だ!俺の身体を揺さぶるやつは・・・ やめろ!!やめてくれ!!!! 嫌だ。 嫌だよぉ!! 目の前がすぅ−っと開けてくる。 カメラのシャッタ−が開く時の様に、 体の中心からゆっくりゆっくり感覚が動き出す。 あらゆる感覚にスイッチが入っていく。 どんぐり眼の人の良さそうな顔が目の前に有った。 目の黒目の部分ばかりか、 白目も含めて全てがデッカイ作りの可愛い瞳。 髪の毛が申し訳なさそうに頭のぐるりに可愛く残っており、 お腹の辺りが出っ張り、顔がテカテカな親父が目の前に居た. 「お! やっとお目覚めですね。 先生♪」 その男は、手馴れた様子で 自慢のカバンから何処から手に入れたものか、お弁当を取り出した。 「ねね。 先生! ごはん ごはん。 一緒に食べましょね」 元々は軍手だったろう手袋も、 今では穴なんて可愛いものじゃなく指そのものが飛び出たゴツイ手で、 お弁当を渡してくれた。 目の前の食べ物の匂いを嗅ぎ 初めて自分が空腹なのを感じた。 ドングリ眼の親父が先生と呼ばれる男の横に腰掛けると、 二人仲良く御弁当を食べはじめた。 「匂うな・・・。」 どんぐりに男がそう呟いた。 「あはは、そりゃ先生だよぉ〜。 これ食ったら体洗いに行きましょうぜ!」 どんぐりはニコニコしつつも、 自分の弁当との格闘を再開した。 男は苦笑しつつ 今だ匂う鼻を気にしながら、 自分の分との格闘を同じく再開した。 −−−To be continued.−−− NEXT
−−鼻、もとい 華 募集−− RAI.へmail GO〜 あなたからの感想を心待ちにしています。RAI.へmail GO〜
”挿し絵”なんてあればいいかなぁ〜って・・・・ 何方か”作っちゃる!!”って御方いませんか? ぜひMAILにて ”作っちゃる!!”と。(^0^

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