初々しい色
昨夜、衛星放送の「心の旅」と言う番組の再放送で、志村ふくみさん親子を見た。
ひょんなことで、志村ふくみさんの著書「母なる色」を読んで、関心があったひと。
番組は、シルクロードの原点トルコに染織のルーツを探すというもの。
トルコの田舎は、私のように田舎で育った人間には、懐かしいにおいがした。
桑の木、カイコ・・・・私には身近な存在だった。
今でもトルコの田舎では、繭から絹糸にし、スカーフを織る女性がいる。

毎日、女性は、摘んだ花を髪に飾る村があった。
すごくいいね。これは。

絨毯のウールに草木染めをする村に行き、赤根で染めるのを見る。
次に志村ふくみさん親子が持参した絹糸を染める。
新鮮なアーモンドの葉で。
染めあがったのは、初々しい黄緑。

志村ふくみさん親子がとても喜んでいると、
こんどは、この村の長老の女性の発案で、赤根を重ねて染めてみた。
なんともいえない光沢の色になった。
新鮮なアーモンドの葉のいのちが、絹の上に載せられる過程を見ることが出来た。
「本当の色」

志村ふくみさんの著書は、色を生み出す植物の記述が多い。
季節や自然の描写が、いろいろな文献からの引用とあいまって、
とても深みのあるものとなっている。
自然に対する愛情、尊敬の念が、いつも感じられ、とても好きだ。

ピンク
古色のピンクの染物。
これは、冬青(そよご)の緑の葉から取れるそうである。
緑の葉から生まれるピンク。
志村ふくみさんは、著書「母なる色」のなかで、
音でいえば、半音のピンク。
淡い影を帯びたピンクだ、と表現している。
そして、こんなことも。
植物は内にピンクを持っている。
桜、梅、欅、椋、いずれも、その樹液はピンク。
生まれたての赤ちゃんの肌の色だそうだ。
桜で染めた、ピンクの染物を見てみたい。

露草
何処にでも咲いている、青い花。
よくみると、実に不思議な姿をしている。
そして、葉の緑、花の青、蕊(しべ)の黄は、まさに原色の原色。
「月草」「移し花」と万葉の頃は呼ばれた。
まだ陽がのぼりきらない朝露の立つ中で露草は摘まれて、
染や織の下絵を書くのに使われる。
花の青い液をしぼって和紙に染み込ませ、
乾燥したものを使う。
これで、下絵やしるしを描く。
水に濡れると消えるのである。
布に紋様をのこすために移す役目をする。
自分の使命をはたすと、消えてなくなる。
その、あまりに美しい青は、透明な青は、
現役のまま、地上にとどまる事ができない

 

 






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       志村ふくみさん      2000.6.3