いまテレビの番組で「シャル・ウィ・ダンス」というのが大人気だ。
社交ダンスといってもあれは競技ダンスであり、派手な衣装だ。
私が学生のときに楽しんでいたのは
もっとゆったりした地味なダンスだった。
ブルース、ルンバ、マンボ、ジルバ、ワルツ、ここまで。
タンゴは演奏しても誰も踊れなかった(笑)


私の好きな映画のダンスシーンがある。

「恋と花火と観覧車」

長塚京三扮する中年のサラリーマン。
仕事の帰りに、皆で飲みに行こうと誘われるが、
それを断って、ぶらぶらと歩いていく。
大きな階段テラスのある広場にくる。
アマチュアのバンドが演奏している。
その曲に足を止める京三。
もう薄暗い広場。
腰をおろし、曲に聞き入る京三。
その曲は、亡き妻が好きでいつも聞いていた曲。
そこに京三の後を追ってきた、松島菜々子。
持ってきた缶コーヒーを飲みながら、
二人で座って、曲に聞き入る。
「お好きなんですか、この曲」
「うん・・・・妻が好きだった曲なんだ・・・・」
「・・・・・・・・」
菜々子が突然立ち上がり、
「踊りましょう」
「えっ・・・・」
ためらう京三の手を引っ張って立ち上がらせる菜々子。
ほの明かりのなか、
曲にあわせて、抱き合い静かに身体を揺らす二人・・・


「アンナと王様」

「羊たちの沈黙」では、知的な魅力的な「女性」だった
J・フォスターが今回は、知的な素晴らしい「人間」を演じてた。
晩餐会のシーンでは、気品あるドレスで華麗なワルツを披露。
素敵な女性であることを見せつける。
絶対にかなうことのない、家庭教師と王様との潜在的恋。
別れの前の夜、テラスで静かにワルツを踊り、
二人の想いをとげる。
26人の妻と42人の愛妾を持つ王様に、
「一つの人生には、一人の女性で充分だとわかった・・・・」
と云わせたが、所詮かなわぬ想い。
ワルツを一緒に踊って成就する・・・・
お互いに尊敬できる、オトナの「こころ」の交情。
アンナの原作を読んでないけど、私の勘では
男女の友情として描いてあるような気がする。
ミュージカル「王様と私」は恋として描いた。
「アンナと王様」は潜在的恋として描いている。


私はというと・・・・
大学の寮に入ったら、ダンスを強制的に覚えさせられた。
(チケット売りさばきと、女子大生に対し人数確保で)
夢中で楽しんでいるうち、私の出身県の学生たちが代々経営するダンス教室があり、

そこでの教師のバイトを先輩から命じられた。
先輩から後輩に伝えられているダンス教室だった。

ビルの一室を借りて、夜だけ教えていた。
今になって考えると、この教室を最初始めた学生たちはすごいなと思う。
安定したバイトになるし、女子学生やOLさんたちが沢山通ってきているので
遊び相手には困らないし。
私は、テニスをしていたので、真面目にこのバイトをしてたわけではなかったが、

行けるときには顔を出して、教師面して楽しんでた。
だって・・・・素敵なお嬢さんが一杯来てたからね。

私の学生時代は、毎週どこかでダンスパーティが開かれていた。

ヨット部などの派手なところは都心のホールを使用していた。
まだ恋には奥手の私なんかは、照れ隠しに相手を振り回す動きの早い
ジルバなどを好んで踊っていた。
ダンパの後半になり、ブルースとかルンバのようなしっとりとしたダンスを踊ると、
相手との気持ちの距離感がよくわかる。
アフターダンスにデートのお誘いが可能かどうか・・・・・

ということが理解できたのは、卒業して社会人になってからである。
学生のころ、しきりにダンスを楽しんでいた頃は、
こっちに気持ちに余裕が無く、突進しては・・・・
お姉さま方に軽くあしらわれていたようだ(笑)


大人になってからは、獲得した素敵な相手を友人たちの前で
お披露目ダンスをして、有頂天な思いをしたこともあった。
とうてい成就することがかなわないとわかり、
せめて最後の想い出にとダンスホールに誘い、切ないダンスをしたこともあった。






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       「シャル・ウィ・ダンス?」      2006.11.19