せっかくバレンタインデーなので、チョコの思い出を探ってみようと思う。

こんなこと今までの人生になかったんだけど、なんとなくふと思い返してみたくなった。
なんでかな?
今がとても幸せだからかもしれない。

今回は、とてつもなく長くなる予感。
ただ私が記憶をたぐるために書く。
誰に読ませるためでなく、私のために書く。

過去の私の恋が存在した証に。

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一番最初のチョコレート。
あれは小学校3年生のとき。
初めて作ったチョコ。
それは、とても食べられるようなモノではなかった。
湯煎にしなきゃいけないのに、お湯でチョコを伸ばした私。
それを型に入れて冷やしたけど固まるわけがない。
5月に転校してきた彼に一目ぼれした。
彼にあげるために一生懸命作った。
だけど、絶対渡すことのできないモノができあがった。
悔しかったけど、お店でチョコを買った。

だけど、渡せなかった。
勇気がなかった。

4年生のバレンタインは渡すことができた。
ホワイトデーのお返しには、動物クッキーを貰った。

「あなたは友達。」

その年から、彼と話すことができなくなった。

5年生のバレンタインにも彼に渡した。
ホワイトデーのお返しは、ビンに入ったキャンディー。

「あなたのことが好き、、、?」
メッセージカードはない。

相変わらず、彼と会話を交わすことはできなかった。

6年生のバレンタインデーにはなぜか彼に渡せなかった。
すごくすごく好きだったのに。
ずっとずっと好きだったのに。
どうしてかは、未だに分からない。なんで渡さなかったのだろう。
もうすぐ二度と逢えなくなるのに。

卒業式の日。目が合った。すごく長く。
それでも、結局会話を交わすことはなかった。

別々の中学に進み、4年思い続けたその恋は終わった。


彼は今はどこで何をしているだろうか?
相変わらずカッコいいことを願う。

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次に覚えてるチョコは中学三年の時。
1年付き合っていた男の子に訳の分からない理由で振られ、考えあぐねた結果彼に渡そうと思ったチョコ。

迷惑かもしれない。
でも、渡したい。
毎日毎日悩んで、小さなチョコをひとつ買った。
好きでもない女から、手作りのチョコなんて貰いたくないだろうと思ったから。

1年前のバレンタインは幸せだった。
手編みのマフラーと一緒に手作りのチョコを渡した。
小学校3年生の時に大失敗して以来始めて作ったチョコだ。
今度は本を買って来て、温度計やら何やらを一式揃えて挑んだ。
何の変哲もない、ただ溶かして流し込んだだけのチョコ。

でも、それを彼は愛しそうに抱えて持って帰ってくれた。
マフラーは毎日してくれてた。

なのに、なぜこんなことになってしまったのだろう?

頭の中に考えても考えても分からない疑問がぐるぐる回ってる。

やっと買った小さなチョコも渡せずに、私はトイレの中にいた。
トイレの中にしゃがみこんで、ただ泣いていた。
「だめだ。渡せない。。やめよう。」

ドンドンドン!
「ゆりー?いるんでしょー?」
ドンドンドン!

あーちゃんがトイレのドアを叩いた。
あーちゃんはあたしの親友。そして、彼女は彼の親友でもあった。

「呼んで来るから!渡しな!」

トイレから引きずり出され、彼の前に引きずり出され、私は涙でぐちゃぐちゃになりながら、小さなチョコを彼に渡した。

突返されるかと思ったけど、「ありがとう。」と受け取ってくれた。

ホワイトデー。
去年は大きな缶に入ったキャンディーとハンカチをくれた。
今年は?
期待してなかった。渡せただけで充分だった。
でも、全く期待してなかったと言ったら大ウソ。
本当は、彼とよりを戻したかったのだ。

けど、帰ってきたのは、フルーツケーキ。
「もうこれ以上思い出汚したくない。」
という一言が添えられていた。

今考えると、なんじゃ?その気障ッちぃセリフは???
と笑ってしまいそうだが、当時のあたしはそれを抱きしめて泣き崩れた。


彼とは、その後3年間口をきかなかった。
けど、高3の卒業前に電話がかかってきて、それからはずっと今でも友達だ。

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次に覚えてるのは、高2。
高1の途中から私は片思いをしていた。
その恋は全然ままならず、あたしはなんなのかさっぱりわかんなかった。
手の上で転がされ、楽しまれている感じだった。
今考えれば大した男じゃなかった。
よくあるタイプ。
危険な香りのする男。
女がたくさんいて、誰とでもヤっちゃう男。
けど、なぜかあたしには手を出さなかった。
だけど、すごく優しかった。
付き合っているのかそうじゃないのかなんなのか分からない状態で1年。
いい加減感情の起伏の激しさに疲れた頃だった。

中1の時からの付き合いの親友の男の子。
彼に全てを相談していた。
彼は全寮制の男子校に行っていて、もう5年以上文通を続けていた。
休みで帰ってくると飲みに行き、愚痴る愚痴る愚痴る。
それを何も言わず聞いてくれたのはヤツだった。
当たり前。親友なんだから。

そこはすごく安らげる場所だった。
自分が自分であれる場所だった。
がんばらなくていい。
カッコつけなくていい。
何も言わなくても、何を言っても、全て分かってくれる。
当たり前。何年一緒にいたと思ってるんだ。

けど、あたしはそれを恋と勘違いした。
その年のバレンタインは、ゆうパックで彼の寮にチョコを送った。

「せっかく作ったんだけど、あげる人がいないからあげる。でも、あたし義理チョコは今まで一度もあげた事ないんだ。今回もこれからもそのつもり。」

とか訳のわかんないメッセージを付けて。

勘違い恋愛ごっこはここから始まり、たった4ヶ月で幕を閉じる。
手も握らず、もちろんキスもせず、寝ることもなかった。
当たり前。勘違いなのだから。
あたしたちにあったのは、家族愛であって、恋ではなかった。

ぐちゃぐちゃのどちゃどちゃな傷つけあいの別れ方をしたが、未だにヤツは親友だ。
あたしの過去のほぼ全てを知っている恐ろしい男。

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次に思い出すのは、大学三年。
2年付き合っていた男に1月に振られた。
12月に父親が倒れ、精神不安定になっていたあたしは彼に当り散らし、訳の分からないことを言っては、けんかをふっかけていた。
そしたら、あっさり振られてしまった。

だけど、ごねてごねてごねて。
4月1日になったら、もう一度話そうとやっと言わせた。
だから、バレンタインには逢うことができないのは分かっていた。

彼の一人暮らしの部屋の前に行った。
こっそり影からうかがった。
バイクは停まってなかった。
どこかに出かけてる。
階段を上り、玄関のドアノブにチョコの入った袋をかけた。
このときも、買ったチョコだった。
まだ覚えてる。大きい古い形のマッチ箱の中にかりんとうが入ってるヤツと、タバコの形をしたチョコだ。
籐でできた袋に赤いメッセージカードを入れた。

「この間言ってたアウトブレイク観たよ。おもしろかった。」

何が言いたいのかわからないメッセージ。
でも、自分の気持ちのことを書こうとすると、いろんな言葉があふれてしまって、これを書くのがやっとだった。

この時、あたしはしてはいけないことをした。
まだ持っていた合鍵で彼の部屋に入ったのだ。

そこには、何もない部屋があった。
一緒に書いて貼っていた書初めの半紙も、壁に貼っていた写真の数々も二人でいったチケットの半券も、思い出の匂いがするものは何もかもはがされていた。

愕然とした。
決心の強さを感じた。
彼とはその前に1度別れた事があった。
だから、今回も戻れると思ってた。
でも、今回は違うみたい。

あたしは、逃げるように部屋を出た。

その翌月の3月5日。結局彼とよりを戻すことになる。
あたしの誕生日の前日だ。

その4ヶ月後、彼のガンが発覚し、1年後には別れることになる。
だから、彼にあげたチョコはこのときが最後だ。
ひろはもうこの世にいない。

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最後に思い出すのは、だーりんに初めてあげたチョコレート。
チョロQにチョコが詰まってるヤツ。
だーりんの猛烈アタックに降参して、彼にチョコをあげた。
いや、あげようかどうするか迷っていたのだけど、あげないのもどうかな、と思ってどうとも取れる中途半端なチョコをあげたのだ。
まだ少し彼と付き合うことを悩んでいた。
やけくそで付き合った人と一月足らずで別れた時だった。
私の心の中には、まだひろがいたのだ。
彼は名古屋で1人で戦っていた。

2月17日。火曜日。
なんでそんな中途半端な日か。
彼にはまだ彼女がいて、彼はバレンタインに彼女と別れた。

うちの店に旭カニを食べに来て、そのときに渡した。
この翌日、新宿で映画の「ゲーム」を観て、プロントで彼と付き合うことを決めたのだ。
なぜかは未だに分からない。
でも、なぜか吸い寄せられるように彼と付き合うことになった。
会うまでずっと悩んでいた。会ってからも悩んでいた。
聞かれたらなんて答えようかと悩んでた。
寂しさを埋めるだけのヤケクソな付き合い方はもうしたくなかったから。

けど、聞かれたとき、私の答えはyesだった。
ふと言ってしまったのだ。
失礼な話だけど、本当にふと言ってしまったのだ。

一緒の写真が欲しいと言った彼と、駅の証明写真で写真を撮った。

「今までで一番好きになると思うよ。」

この時はピンと来ないどころか、「何てキザな!」と心の中で呆気に取られた私だったが、一月後にはプロポーズされ、そして今、彼は私の夫である。

運命のいたずらか。
本当に今までで一番好きになっちゃった。

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これは全部心の中から引きずり出したもの。
メモは一切なし。
日付や曜日まで覚えてる自分の記憶力に乾杯。

そして、忘れてしまった優しかった人たち。ごめんなさい。
忘れてしまうくらい幸せな時をありがとう。

今、幸せですか?




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