驚異の上達力


なぜか、私は小学校2年生から4年生までバイオリン教室に通っていた。自分からやりたいと言い出したのだろうか?でも、そのような記憶は、私の中にはまったくない。親の趣味だったのだろうか?
バイオリンという楽器はものすごくむずかしい。まず、きれいな音を出すまでに時間がかかる。弓の角度、弓を持つ手の力加減、ビブラートのかけ方等々。
そして、次に正確な音を出すのがむずかしい。弦を押さえる印が、ギターのようにネックについていない。ウッドベースのようにつるつるなのだ。だから、感覚で押さえる位置を覚えなくてはならない。最初のうち、ビニールテープで「C」の音「H」の音などに印をつけておいて練習するのだが、これがついてる限り、覚えようと私は努力しなかった。なかなか上達しないことにもつまらなさを感じていた。
バイオリン教室は、ピアノ教室とちがって個人授業だった。先生は2時間かかりっきりになってくれる。でも、難しくてまったく上達せずいつまでたっても「きらきら星」しか弾けなかったので、2年でとっととやめてしまった。
ところが、大学生になってから、ピアノとアコギとバイオリンでセッションをやろうという話が持ち上がった。「お前、昔バイオリンやっていたんだろう?だからやれよ」なーんて言われてしまった。私は「小学生の時だし、2年しかやってなくて、全然弾けないよ」と答えた。すると、「バイオリンはまだ持ってるの?」と聞かれた。「うん。あるけど・・・」 「じゃ、決まり!練習すればどうにかなるよ」
こんなやりとりで、私は半年後の大学祭でバイオリンを弾くはめになってしまった。
でも、バイオリンを弾くはめになったのは、大いに自分の責任だった。たいして弾けもしないものを、「昔やってたんだよ」なんて言った罰だ。そして、そのセッションをする3人の中には、好きな男の子がいたのだ(笑)
決まったからには、恥はかきたくない。練習しなければ。練習のときも、彼にへたくそな姿は死んでも見せられない。そう追いつめられて、その日のうちに、切れていた弦を張り替え、バサバサだった弓を張り替え、楽器屋さんに行き教則本を買った。バイオリンの上手な高校の時の友人に飲みをおごる約束で、先生になってもらった。睡眠時間を削って、第一回目の練習日前までに、ヘタクソなりにも少しはまともに弾けるくらいまでにした。驚異の上達力である。恋のパワーはすごい。2年教室に通ってても「きらきら星」止まりだったのに・・・(笑)
他のバンドもやっていたので大変だったけれど、バイオリンはめちゃめちゃ練習した。その甲斐あってライブは大成功だった。
この時、バイオリンを死ぬほど練習したおかげで、ライブの成功と恋人をGETしたのだった。満たされた(笑)
そして、そのライブの後から、またバイオリンは部屋の隅で今も眠り続けているのだった・・・・


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