日本フィルハーモニー交響楽団の定期会員になった。妻と二人、これから毎月サントリーホールに行く。サントリーホールなんて近いんだし、毎月1回くらいお洒落をしてコンサートに出かけて、六本木で食事。そのくらいしてもいいじゃないか。いや、それくらいでなきゃ、成熟生活とは言えないぞ。そんな気持ちでこれからコンサートに足を運んで行こうと思います。
日本フィルをどうして選んだか。それは、何となく好きだからです。「市民のオーケストラ」という活動のポリシーも嫌いじゃあないし。割と元気の良い演奏、ケレンミの無い演奏をするオーケストラだからです。それに、以前も会員だったし。それから、サントリーホールをホームにしていることも大きな要因です。東京には良いホールがたくさん出来てはいますが、ロケーションを含め、未だに僕はここがベストだと思っているのです。東京文化会館はもはや遠いし、東京芸術劇場は嫌いじゃないけど長〜いエスカレーターが面倒くさい。オーチャードホールは1階席の音響が僕には悪すぎる。といって2階席では遠すぎる。やはりサントリーがハレ感もあって、僕は好きです。妻はどこでも良い様子。あまりクラシック音楽には興味を示さない妻をこの定期会員で教育するのも僕の大きな目的のひとつなのだ。頼むぞ、日本フィル。
とまあ、長い導入でしたが、今宵の演奏はというと僕はブルックナーのシンフォニーの素晴らしさを再認識。9番のシンフォニーは3楽章で終わってしまうのがいい。演奏時間は約65分。これでも未完成だそうで、これにフィナーレが書き足されていたら恐らく90分くらいの大交響曲になった作品。アダージオで終わるこの曲が好きだからフィナーレは僕は要りません。
ギュンター・ヘルビッヒという指揮者を僕は知らない。しかし経歴を見ると、ワイマールでアーベントロートに師事。その後、ヘルマン・シェルヘン、カラヤンに師事しており、実はドイツ音楽の巨匠らしき指揮者なのだ。更にドレスデンフィル、ベルリンシンフォニカーの音楽監督も歴任、ヨーロッパの主要なオーケストラに客演している。彼の指揮は実直なもの。シューベルトは堅実な演奏で、久しぶりに聴くオーケストラの音を楽しむには最適の演奏だった。
第1楽章アレグロ・モデラートの第2主題を低弦が歌い始めたとき、「ああ、本当にオーケストラっていいなあ」と感じた。これ、これを求めていたんだよ。思えば、どうして最近オーケストラを聴かなくなっていたのだろう。自分を思い出したような、そんな気持ちを感じるシューベルトだった。妻の反応もまずまず。でもちょっと眠そうにしている。頑張ってくれ、ヘルビッヒさん。
そしてブルックナー。僕は自分でチケットを買ってはじめて聴いたコンサートはブルックナーだった。高校2年の夏、指揮は朝比奈隆さん、オーケストラは名古屋フィルハーモニー交響楽団だった。初めて聴いたブルックナーは、想像を絶する構造物だった。僕は不覚にも、2楽章アダージョの途中からぐっすりと眠り込んだ。そして熟睡から覚めた時、まだ3楽章の途中。なんて巨大なんだろう。こんなものを人間が創るのか。大きな流れの音楽。それが僕が理解したブルックナー。そして、今夜の演奏も潮のような大きな流れが生まれていた。<神秘的にかつ荘厳に>と注釈が付けられた第1楽章の結び、トランペットが提示する結末へのモチーフがまたうねりとなって成長していく。僕はこれがブルックナーだ、とまた思い出した。今夜の演奏会ではこのモチーフが一番心に残った。
そして妻は、やはり眠っている。でもいいのだ。それがブルックナーなんだから。日本フィルの皆さん。音楽の喜びを僕と妻にたくさん与えてくださいね。よろしくお願いします。