MADE IN JAPAN! in America by Y. Horiucci mail
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2006/12/29 「大学病院のウラは墓場〜医学部が患者を殺す」

「大学病院のウラは墓場〜医学部が患者を殺す」(久坂部 羊/幻冬社)読了。

題名だけ読むと誤解するが、大学病院が、こんなにひどいことをやっているという糾弾の書ではない。高度な医療の推進役であるべき大学病院が、いまや崩壊の危機にあることを説き、本来、使命感のある優秀な医者が集まったはずの組織が、なぜそれほど疲弊し、ボロボロになっているのかを、医師である著者が分析する本。メディアや政治、患者の常識と、医療の実態、医師の本音がいかに違うかの断絶を明らかにし、医師の本音に迫るというもの。

医療事故の報道がなされると、今までは、各メディアの解説をそのまま漠然と鵜飲みにして、医師側の責任が明らかであると考えていたが、この本で扱われる事例の解説を読むと、患者が亡くなれば単純に医師の責任という考えが、確かにいつでも正しいとは限らないことがよく分かる。

大阪府立の病院では、産婦人科の部長ポストが長く空席だったそうである。妊娠は病気ではないが、出産は意外に一般の印象ほど安全な行為ではない。日本全国平均では、200例に1例の割合で死産、新生児早期死亡が起こっている。そして産婦人科の医療訴訟率はどの科よりも多い。町の産婦人科は少しでも異常のある症例は次々大きな病院に送ってくる。結果として大病院での赤ん坊の死亡率はもっと高くなる。大病院の産婦人科責任者は、ロシアン・ルーレットを突きつけられているようなポストなのだという。

著者のスタンスがあまりにも医者寄りであるような気もするが、医療の実態と世間の常識との隔絶に光を当てるには、この角度は必須だったのかもしれない。大学医学部と大学病院、医局制度の崩壊や新臨床研修制度の実態など、興味深い事例が満載の本だった。



2006/12/27 「カラスヤサトシ」は面白い。

書くべきことはたくさんあるのだが、それはまた休暇の後で。

「カラスヤサトシ」読んだのだが、これは実に面白かった。また本体価格が562円というお買い得。今年の8月初版で、私の手にあるのはもう3版。これを読んで、「何が面白いのか分からない」という爬虫類とは、今後友達にならなくてよいな、と、そんな気がする本だったなあ。




2006/12/21 本年のお仕事は全て終わり。

いや〜、なんとか、本年のお仕事は全て終わり。もともと祝日も連休も日本に比べて格段に少ないアメリカだからして、クリスマス・シーズンくらい長めに休まないとやってられない。27日、28日はvacation取ることにして、2006年の勤務は本日が千秋楽。しかし、4月から再赴任でアメリカに来て、なんだかあっという間の年末。

明日乗る飛行機にはネットでチェックイン。もともとビジネスクラスはバカ高いのでエコノミーにしてたのだが、追加料金$550払うと片道ビジネスにアップグレイドすると表示されるので、ついそのオファーに乗る。最近の航空会社のシステムも、機会損失を最小にするべく、よくできてるよなあ。

InternationalでEasyCheck-In使うのは初めてなのだが、I-94はどこで外すのだろうか。搭乗ゲートかな。E-チケットが一般的になる前は、窓口で並んでチェックインしてたからその際に外してたと思ったが。まあ、アメリカは入国には厳しいが、出国のチェックはエー加減。去るものは追わず、しかし、来るものはテロリストの有無を厳しく審査。確かにイミグレーションで入国の際は、写真と指紋まで取られる。ビザ申請でも、最近は大変うるさく、日本で発行したビザの更新には、また日本のアメリカ大使館まで出向かなければならないのだそうである。まあ、ちょっとやりすぎという気もするが。




2006/12/20 One more day to go. / 亀田の商売 / 青島幸男氏逝去

One more day to go. 本年の仕事もあと1日。休日出勤までして仕事を加速した甲斐あってか、明日1日を余して本日でほぼタスク終了。と思って調子よく退勤したら、携帯まで仕事が追いかけてきて、またドタバタ。しかし、会社の携帯からそのまま日本に電話できるとは知らなかった。しかも通話が結構クリアに聞こえる。ま、クリアに聞こえてよい時と悪い時とある訳だが。なんでも試してみるもんである。



WBA世界ライトフライ級、亀田興毅はランダエタとの因縁の再戦に判定勝利。アメリカでは中継無いからネットで結果を知っただけ。残念。今回は専門家もファンも認める順当な勝利だったらしい。しかし、豪快なKOで売ってたのに、足を使って判定勝ちというのは、ちょっと商品価値を下げたのでは。そもそも前回の疑惑の判定があったからこそ、今回は絶対に勝たねばならないという守りのボクシングになった。金にむらがる回りが無理して勝たせてしまったのが、結局ずいぶん悪いほうに響いたよなあ。

身体を見れば恐ろしいほどトレーニングしてるのは誰でも分かるし、本人は一生懸命やってるに違いない。しかし、ボクシングの世界では、金の香りを嗅ぎつけると、胡散臭いのがワラワラ集まってきて、選手を食い物にする。元ヘビー級統一チャンプ、マイク・タイソンはもう壊れてしまった。かつては世界一強かった男の、あの哀れな末路。亀田のほうは、まだ金を稼ぎ出す入り口に立ったばかり。しかし、亀ブランドは初手からずいぶん毀損してしまった。果たして今後の商売は大丈夫か。他人事ながらちょっと心配になるな。



青島幸男氏逝去。都知事選再出馬を断念したのはそもそも健康問題だったと仄聞するが、やはりその影響あったのか。都知事に初当選したのは、前の赴任中で西海岸にいた頃。ちょうど横山ノックが大阪府知事に当選した時と同時。USA Todayに、「日本の首都と第二の都市のガバナーに、有名コメディアンが当選」などという英語の記事が出て、なんだかゲンナリしたのを覚えている。まあ、「意地悪ばあさん」だけ取り上げたらコメディアンとも確かに言える訳で。もっとも、アメリカだって、カリフォルニア州の知事はシュワルツネッガーだし、南部のどこかの知事は元プロレスラーだったはず。大きなお世話だ。ははは。

国会でも、二院クラブの野党時代はそれなりの存在感を発揮したと思うが、選挙期間中に外国に行っているなどというスカしたスタンド・プレイは好きになれなかった。「なんでも反対」で済んだ野党時代はよかったが、知事になっての実績というと「都市博中止」だけ。他の公約は一切果たせなかったというのも、まあ、それなりに想定の範囲内であったというべきか。しかし、今の臨界副都心の発展を見るに、あの中止が果たして懸命な判断だったのか。もはや総括されることもあるまいが、政治というものはやはり難しく、恐ろしい。あれだけ多才な人間を飲み込み、そして何事もなかったかのように、歴史の彼方に跡形も無く押し流してしまうのだ。



2006/12/19 日興コーディアルは課徴金で、ホリエモンはなんで逮捕だったのか。

日興コーディアル・グループが粉飾決算の疑いで、証券取引等監視委員会から課徴金5億円を課されることに。有価証券報告書も訂正するとか。SPCとデリバティブ取引、それにからむ社債発行日を改竄したという、なかなか複雑なスキーム。

日経の解説記事では、刑事告発には証拠集めに時間がかかるので、証券取引等監視委員会は、早期是正の観点から課徴金を選択したという。しかし、 ホリエモンは、証券取引法違反(偽計取引)の罪で東京地検特捜部に逮捕。ライブドア幹部も次々逮捕され拘置所で取り調べを受けたのに比べると、なんだかずいぶんやさしい罰だよなあ。

まあ、細かい罪状の比較については、詳細には検討していないので、何か大きな違いがあるのかもしれないが、ホリエモンだって、課徴金で済むのなら、そっちを選択したに違いない。それであれば、社長の座まで投げ捨てなくてよかったのではないか。守旧社会にとっての嫌われ者として、やはり見せしめでやられたという気もしないでもない。もっとも、日興の件にしても、捜査の進展で刑事訴追がまた俎上に上がってくることもあるのだろうが。

ただ、日経の記事では、デリバティブ利益不正計上は、子会社の一担当がやったとか書かれていたが、これは信じがたい。100億以上も担当の勝手な処理だけで利益が出て、経営陣が理由も分からずに儲かったと喜んでたとしたら、それこそまったくのお笑いである。SPCの連結外しも問題らしいが、連結するかどうかは、明らかに経営判断の問題。担当だけで監査法人が納得したはずがなく、経営層の関与はやはり明らかなのでは。

粉飾の話題になると必ず監査法人の責任を問う声が上がる。確かにある意味その通りで、もしも知っていてグルで黙認していたのなら、エンロンのアーサー・アンダーセンとまでは言わないが、責任問われるのはしかたがない。しかし、エンロンほど不正の規模が巨大なら別だが、日興コーディアルグループの100億程度なら、基本的には会社側が隠そうとして悪意で不正をやるなら、監査人が発見できるかというと、結構難しいのでは。

まあ、エンロンが好き放題悪いことをやらかしたおかげで、「羹に懲りて膾を吹く」感もあるのだが、アメリカでSOX法なるのものが成立。過剰反応ともいえる内容で、関係あるとこれが大変。宣誓書のサインなど、日本にいた頃は、エライ人に、「大丈夫ですからサインしてください」と頼んでた訳だが、こちらの法人では、社長に並んで自分が内部統制の責任者としてサインしなければならない。しかし、自分がサインするとなると、いくら間違ってはいない事を信じてるとはいえ、ちょっとした不安はよぎるよなあ。




2006/12/17 休日出勤。

アメリカの祝日や連休は、日本とは比較にならないくらい少ないのだが、クリスマスはさすがに一年で一番長いお休み。27、28日は一応会社は営業するのだが、私はお休みを貰うので、年内の最終出社は今度の木曜、21日。それは結構なことなのだが、肝心の仕事がなかなか片付かない。先週に、本社提出の会議資料2本を仕上げて送付。難物はあとひとつだけ。

金曜の段階で、スケジュールを組むに、あと4日の出社日だけでは完成が危ういことが判明。しかたないので昨日、土曜日も出社して最後の追い込み。今週もオフィスは一人だけかと思ったら、最近採用した会計の女性が出勤して仕事している。なかなか仕事熱心だなあ。

もとより1日だけでは完成しないのだが、ほぼ残りの日数で完成できる目処が立ったと思われるので、一応切り上げ。仕事の邪魔が入らなければ予定通り完成するだろう。もっともそんな時に限って余計な仕事が飛び込んできたりするのだが、予定外の仕事はすべて来年回しにで対応することに決定。

会社を出て、いつもの日本飯屋寿司カウンタで一杯。ずっとPCに向かって作業してたので、なんだか目が疲れた。店の親父と天候談義。ひところは、雪も降り、連日マイナス14℃やらマイナス16℃などが続いた気候だったのだが、先週末から異常に暖かくなり、日中など10℃越えることもザラ。オフィスのアメリカ人も、12月の後半にこんな暖かいなんて信じられないなあ、と。アメリカ北西部では寒波襲来で嵐になってるそうだが、やはりエルニーニョ現象の影響かね、それともやはり地球温暖化の影響か。

こちら暮らしの長い親父の言うには、「まあ、シーズン最初に積もった雪は、かなり深くても必ず溶けるんですよね」と。2回目に積もって除雪した固まりは、春まで溶けないのだと。もう来春まで無理だと思ったゴルフ場の雪もすっかり溶け、土曜にはゴルフする猛者もいたとか。まあ、だいたい日本人か韓国人くらいでしょうな。いやはや、酔狂なことである。

今度の金曜には飛行機に乗るので、この店に来るのも本年はこれで多分最後。よいお年をと挨拶して店を出る。


2006/12/14 「酔いがさめたら、うちに帰ろう」

「酔いがさめたら、うちに帰ろう」(鴨志田穣/スターツ出版)を一気に読了。著者は、漫画家西原理恵子の元旦那。以前から大酒飲みであったらしいが、離婚後に更に酒量が増え、朝から晩までの連続飲酒。身体はボロボロになり、アルコール依存症治療のために入院した精神病院、隔離病棟での生活を描く、一種の私小説。

彼のアル中ぶりは、「サイバラ茸5」にも戯画として描かれているのだが、彼自身が自分の飲酒習慣について述べる描写が実にリアル。

朦朧として朝起きると、まず酒を飲む、そして吐くのだが、それでまた飲めるようになり、ずっと夜まで飲み続ける。明日から禁酒しようと思いながら、黄疸の症状は出て顔は土気色、腹水がたまり、失禁、突然の意識喪失、食道静脈瘤破裂による大量の吐血。「今度飲んだら死にますよ」と医者に宣告されても、また連続飲酒の泥沼に落ち込み、結局は倒れて病院に運び込まれるという実に凄惨なアルコール依存の実態。しかし、この話はなぜか前にもどこかで読んだことがあるなあ…、と記憶を辿り思い出した。

吾妻ひでお「失踪日記」にも、中島らもの「今夜、すべてのバーで」にも、ほぼ同様、連続飲酒からアルコール中毒、そして入院への経緯が描かれていたのだった。それにしても、アルコール依存がみんな同じような行動を繰り返し、破滅の道を一直線というのも怖い話。

肝臓も腎臓もボロボロ、脳もアルコールで萎縮して、栄養状態が悪いからか、肋骨も自然に何本も折れる。自然気胸で肺には穴が。そして告げられるもっとシリアスな病。しかし、離婚した西原理恵子との関係は、サイバラが自らの漫画で自虐的に描く姿とは少し違う。「この物語はフィクションである」と注記されているのだが、なぜかおそらく、この本に描かれている2人の奇妙な絆のほうが、サイバラが偽悪的に描いている関係より、より実像に近いのではないかという印象がするのである。

著者の文章は、決して上手ではないのだが、妙な味がある。時折フラッシュバックする、戦場カメラマン時代の記憶の断片も印象的。サイバラもそうだが、伊集院静のエッセイでも時折感じるように、世をはぐれた無頼だけが持つ、摩訶不思議な叙情というものが確かに存在するのだ。アルコール依存になるのはおそらく、チャランポランな人間ではなく、ある意味妙に純粋で脆い人間なのだ。表紙の自画像は、ホロ酔いというより、ややアルコールにまつわる異常を感じさせるかのような微妙な顔色。題字はサイバラが書いている。実に面白かった。

まあ、私も酒飲みなので他人事ではない。アルコール依存度を測定するテストというのがある。「酒の上で失敗したことがある」、「酒を飲んで記憶なくしたことがある」など、ひとつでも当てはまればみんなアル中予備軍。私も立派な仲間入り。朝からの連続飲酒+ブラックアウトこそないものの、夜の飲み会で、一次会、二次会、三次会、そしてブラックアウトは何度も経験ある。普段、朝からアルコールを摂取する気にはならないが、休暇で旅行など行くと、朝からビール飲んだりするのは極楽なんだよなあ。などと、もうすでに危険水域に入ってるのかもしれない。

依存症を治療するには、完全な断酒しかないのだそうである。そういえば、中島らもだって、だいぶ長期間断酒してたはずだが、亡くなった時は酩酊状態で、スナックの階段を転げ落ちたのだった。



2006/12/09 懐かしい101号線を一路南に

年末だからという訳でもないが、だいぶ仕事が立て込んできた。まあ、最初からコツコツやってれば片付いた仕事なのかもしれないが、人間は誰しもアリではなくキリギリスだよなあ。<勝手な決めつけ。ここの更新も、ちょっと間が空いてしまった。

普通は、自分の仕事の工程表を作ったり、進捗を管理することはしない。今まで、会社で生き延びて来た経験からしても、融通無碍にやっても大概の場合は大丈夫だから。もっとも、さすがに仕事が立て込む場合は別。今年、こちらに赴任する前は、公私問わず期限が決められたタスクがあれこれあったので、50項目ばかりあるタスクリストをexcelで作成して期日管理をしていた。

先週初頭、クリスマス休暇までの日程がさすがに厳しいと判断して、日程表を引いてみると、だいぶ危機的な状況にあることが判明。ははは。ま、悪いことに、そんな時に限って出張予定が入っている。しかし、これはずいぶん前に決まってたことだから仕方ないのであった。

月曜に西海岸で会議。日曜午後のフライトでは、機中でPC広げてずっと仕事。まあ、しかし、期日迫ってやる仕事ってのも、アドレナリン出て、これはこれで好きだなあ。

サンフランシスコ空港に着陸して、レンタカーをピックアップ。懐かしい101号線を一路南に。こちらではフリーウェイにはすべて数字がついているが、ここは普通「ワン オー ワン」と称する。先日、Thanksgivingの休暇でも走ったが、ずっとLAまで伸びている道。肌寒い曇天の中でも、車の窓を開けると、そう、昔ここで暮らした懐かしい想い出が、Californiaの風と共に頬を吹き過ぎて行くかのようだ。



2006/12/05 かつての超能力少年も、すでに44歳か。

先週だったか日経に、「仏像のひみつ」がジワジワと売れて、ベストセラーになってるのだとの書評記事。確かに、平易で読みやすく作られたよい本であった。本棚から取り出して、またパラパラと。

昔、超能力者として有名になった清田益章が、大麻取締法違反の罪に問われた初公判の記事。清田被告は起訴事実を認めて即日結審。懲役1年、執行猶予3年の判決とのことであるが、そうか、逮捕されてたのだっけ。昔は「清田少年」なんて呼ばれた彼も、44歳だよ。いやはや。

スプーン曲げなどで有名になったのは、1970年代後半。「スプーン〜超能力者の日常と憂鬱」を読んだ時もずいぶん懐かしかった。手に持ったままのスプーンの頭がポロリと落ちる、清田の「メタル・ベンディング」を一度TVで見たことがある。あれだけはマジシャンでもできないと思った事も確かにあったのだが。

超能力は本当に存在するのかについては、昔から興味があり、サイババやら、念写やら、この手の本には結構手を出している。しかし、ユリ・ゲラーの昔から、懐疑心を持って追求してゆくと、超常現象の真相は、疑惑の厚いベールの向こうに消えていってしまうばかり。絶対にこれが本物だと言い切れるような能力は、いまだかつて完璧に提示されたことすらないのだから。なんとなく残念ではあるのだが。



2006/12/03 しかし、彼らはもう皆、フィールドを去ってしまった 

本日も気温は低い。外出する気にもなれずTVでNFL、Bears vs Vikingsを観戦。金曜日、場所によっては30センチ近く降った雪が、綺麗になくなっているソルジャー・フィールドを見て整備にエライ手間がかかったろうと感心。フィールドには選手が暖を取るために熱風を噴出すような装置が置かれているのだが、ああいうので溶かしたのかね。実に不思議だ。

日中でも気温はマイナス5度程度で、やはりプレイするにはかなり厳しい環境。ファンブルやらパス失敗が多発するのも、やはり気温の影響を考えないわけにはゆかない。地元であるからBears応援したいところなのだが、先発クォーター・バック、レックス・グロスマンは、バカスカ相手にインターセプションを配給する相変わらず実にタコな出来。Field Visionと判断力に大いに難があり、まったく才能を感じない。プレイを見ていて面白くないし、あんまり応援する気にならんのだよなあ。

以前の駐在時にNFLに熱中していた頃は、ジョー・モンタナ、スティーヴ・ヤング、トロイ・エイクマン、ダン・マリーノ、ジョン・エルウェイ、ウォーレン・ムーンなどなど、綺羅星のごとくQBにスターがいて、どこ試合見ても飽きなかったような気がする。しかし、彼らはもう皆、フィールドを去ってしまった。そうそう、かろうじて、グリーンベイのブレット・ファーブがまだ現役を続けているのだが、彼とても往年の輝きは失せている。最近の素晴らしいプレイヤーというと、ペイトン・マニングか。しかし、全体に昔と比べてスターQBがいなくなったような気がする。まあ、こちらの勉強不足もあるのだろうが。もう少し色んなチームを見て、statsも読み込まないと、アメリカン・フットボールというのは面白くないのだ。

しかし、試合のほうは、Vikingsのブラッド・ジョンソンが、グロスマンに輪をかけてタコな出来。4発もパスがインターセプトされる。あれだけターンオーバーを食らっては絶対に勝てない。結局、Chicago Bearsが勝利。Bearsもあれで勝てたというのは実に儲けものというか。これで通算成績を10-2として、NFC北地区のDivision優勝が決定。地元としては実にめでたい話なのだが、しかし、どうもそんな強い印象が無いんだよなあ、このチームは。地元チームを応援しないと楽しくないのは分かってはいるものの、なんとも痛し痒し。




2006/12/02 冬のツリー / 「心にナイフをしのばせて」


今朝は太陽が顔を出し、カラっと晴れた陽気。しかし気温は華氏23度。摂氏でいうと、マイナス5度くらい。歩道もすっかり除雪されて歩きやすくはなったが、脇に詰まれた雪は、この寒さでまた凍りつくだろう。Villageの広場に先週末に立てられたクリスマス・ツリーは、もうすっかり雪の中。ホワイト・クリスマスのムードが出てきた。

「心にナイフをしのばせて」(奥野修司/文藝春秋)読了。少年による残虐な殺人というと、「酒鬼薔薇」事件がどうしても思い浮かぶが、およそ28年前、神奈川県の15歳の少年が同級生の少年を刺し、首を切断して殺すという事件があった。本書は、この被害者の家族にこの事件がどんな影響を与えたか、彼らの運命がその後どうなったかを取材したルポルタージュ。

突然の殺人によって自慢の息子を殺された夫婦に、その犯罪がどんな影響を与えたか、そして兄を殺された妹にその事件がどんな影を落としたか。著者は当人達に丹念なインタビューを行い、彼らのその後の人生を再構成してゆくのだが、彼らの受けた衝撃と心の傷は、やはり他人には想像を絶するというしかない。

本書の後半で、事件の犯人について提示されるもうひとつのショッキングな事実がある。著者は、犯人側の事件後の足取りを追跡しようとする。犯人の少年は少年法の規定により刑罰は受けておらず、前歴記録も残されていないため、その追跡は困難を極める。しかし著者は、犯人の少年が、その後高等教育を受け、弁護士となり、ある町で法律事務所を経営しているという事実を突き止めるのである。

民事上での賠償金についても当時判決が下りているのだが、結局のところ犯人の父は、払えないからとほとんど支払を実行していない。夫が死に、生活の糧を得るために経営していた喫茶店の経営が破綻して、被害者の母は貧窮にあえいでいる。彼女はこの犯人に手紙を書き、一度でも謝罪する気はないのかと問うのだが、何の回答もない。しかし、話の過程で示談金の話が出た時だけ、この犯人は「金が無いのなら少しぐらいは貸す、契約書を持ってゆくから、印鑑証明と実印を用意しろ」と電話してくるのである。

少年法の立場からすると、少年の犯罪は罰せられず、前科ともされない。本人の前歴も明らかにならないよう、法律的な保護がされている。しかし、少年だからといって何の罰も受けなくて本当によいのか。一般社会に堂々と出てくるのは、本当に人格の矯正がされたからなのか。そもそも更生など本当に可能なのか。

この一例を持って、少年法全体を語ることはもとより妥当ではないが、このケースについては、明らかに犯人はある面でいまだに異常であり、特に人間としての更生には失敗していると言わざるを得ない。

ドキュメンタリーとしての構成として(著者もそれを認めているとおり)、記述が被害者側の主観に寄り過ぎ、客観性にやや難がある印象も否めないが、少年犯罪とその更生について考えさせられた一冊。




2006/12/01 天気予報は当たるんだよなあ。冬が、本当の冬がやってきたのだ。

昨日夜の段階では、雪が降るとの予報。日本だと、海沿いだからか、結構天気予報通りにならない場合も多い。しかし、アメリカ大陸の内陸にいると、天気予報ってのは結構当たるもんだという印象。まあ、海流のある海でなく、陸地の上を大気が全体としてゆっくり西から東に動いてるので、シミュレーションして予測しやすいのではないかと思うのだが。日本から来て、こちらの天気予報の精度に感心する人は結構多い。まあ、海の上の島国の気候を予測するのは難しいんだよな。

寝る前に外見ても雪は降ってなかったのだが、一晩明けると街はすっかりこの通り。



明らかに15センチは積もっており、まだ雪が降り続いている。時間がかかりそうなので、いつもより早めに部屋を出た。まだ早朝で除雪が完全に行き渡っておらず、大変なことに。

アパートメント隣接の駐車場出口にはかなり雪が積もっており、ちょうど外に出かけたところでワンストップすると、車の後輪が氷混じりの雪にスタックして空転してしまった。前進と後退を何度か繰り返すもなかなか動かない。いったん車を出て後輪の状況を見ていると、後ろにいた車からアメリカ人のオバちゃんが降りてきて、押してやるから運転席に戻って進めと言う。いかにも中西部独特、コーカソイド・アメリカンな体格で、100キロ近くあったんじゃないかなあ。ローにシフト入れてアクセルをソロソロと。オバちゃんがエイヤと後ろを押してくれると、車はちゃんと前に進んだのであった。また止まるとスタックするので、お礼言う暇もなかったが、いや〜、ありがたかった。冬場はお互い様と慣れてることもあるが、中西部はやはり親切なメリケン人が多いという気がする。

その後の道も、雪は降りしきるは下は除雪されてないわでこれまた大変。Lincoln LSは、後輪駆動のせいか、車の後ろからスリップして方向が定まらない。駆動輪が空転すると、コンソールに、黄色の「タイヤのトラクションが無くなってまっせ」ランプが点灯する仕様になってるのだが、これが点灯しっぱなし。分かってますがなウルせーなという感じ。途中で雪が踏み固められたバンクに右後輪が乗り上げ、後方が大きくスリップ。前輪でカウンタ当てるもほとんど効かず、道に対してほぼ90度まで車が回転して路上でストップ。たまたま横に車がいなかったのでぶつけなかったが、実に危なかった。

途中で何台も、同じようにスピンして路肩に乗り上げ、動けなくなっている車を通り過ぎる。悪いことに、こんな時に限って携帯を部屋に忘れてきてしまい、ああなるとどうやって助け呼ぶかなと妙な不安がつのる。もっとも、雪が降る時は気温はそれほど下がらない。外気温ちょうど摂氏零度といったところだから、まあ歩いてどこにでも行ける。本当の厳冬で、マイナス何十度になって車が動かなくなると、これは実に危険なのだが。

普段15分の道だが、結局あちこちノロノロ運転で、一時間近くかかってオフィスに到着。まだ社員は半分も来ていない。お休みの人も多し。まあ、無理して事故ってもなあ。午後になって、雪は止んだが、夜にはまた雪だとか。本日は早めにオフィスから退勤可と会社で決定して、日暮れ前に社員を帰す。帰りはもうかなり除雪が進み、割と交通はスムース。明日は晴れるが、気温はもっと下がるそうで、道が凍結するんじゃないか。除雪して路肩に積もった雪もカチンコチンの氷となるに違いない。

そう、冬だ。本当の冬がやってきたのであった。



2006/11/30 「禁煙セラピー」の著者が肺ガンで死去。

「禁煙セラピー」の著者、アレン・カー氏が肺ガンのため死去したとのニュース。享年72歳。喫煙年数が長いと、禁煙しても発ガンのリスクはもう下がらないのだと聞いたことがあるが、やはりまあ、それが真実か。

私自身も、人からプレゼントしてもらった「禁煙セラピー」を読んで、禁煙に成功した。過去日記によると、2001年8月に禁煙スタート。もう5年以上とは、月日の経つのはあっという間。禁煙初日の夜に飲み会があるという波乱のスタートであったが、それから1本も吸っていない。いや〜、実に偉いもんだなと再び自画自賛するわけであった。はは。禁煙すると、物の微妙な香りや味が分かるようになって、寿司屋通いを本格的に始めたのも、ちょうど禁煙の後。そういえば、あの当時、「しみづ」はまだ全面禁煙ではなく、カウンタでタバコ吸ってる客もいたんだよなあ、などと妙なことも思い出した。

あの黄色の「禁煙セラピー」本を読むと書いてあるのだが、実は著者のアレン・カーは、自分で書いた方法で禁煙したのではない。催眠療法によって禁煙に成功したのだ。あの本とて特段珍しいことが書かれている訳ではない。しかし、「禁煙しても、何も失うものはない」というごく当たり前のメッセージであっても、禁煙に対する不安を取り去るのに、かなり効果的なのである。

アメリカ人でも喫煙者がだいぶ減っているが、うちのオフィスでは結構女性が吸うんだな。ただし、オフィスビルは建物内すべて禁煙。スモーカー達は、外の駐車場に出てタバコを吸う。今日は寒くなり、日中でも気温は摂氏マイナス4度。分厚いコートを着て、喫煙のためだけに外に出てゆく愛煙家を見ると、ニコチンの奴隷から開放されてよかったと心から感じるのであった。




2006/11/29 「黄泉の犬」

「黄泉の犬」(藤原新也/文藝春秋)読了。本のカバーになっているのは、著者が写した、「インドのガンジス河畔で人間の死体を食う犬達」の写真。これは、確か昔出た「東京漂流」という本で見た記憶がある。広告写真としても使われたが、題材を巡ってずいぶん騒ぎになったのだ。人間を齧るこのインドの野良犬が、またなんとも虚無的な眼をしている。1枚の写真であっても、実存、哲学を語りうることがわかる、著者の一種、記念碑的な作品。

著者の本は、以前何冊も読んだ。予備校生金属バット殺人、一柳展也の実家やら、バスガイド殺人の現場写真など、自ら撮影した写真とエッセイを組み合わせた独特の作品群は、ある時期確かに写真週刊誌の可能性を広げ、心の奥底を揺さぶる不思議な力を持っていた。

この本の前半は、まったくの偶然から、著者がオウム真理教、麻原彰晃の実兄の知己を得て、彼に接触しインタビューを行ったドキュメント。著者が仮説として提示してみせた盲目の麻原兄弟と水俣病との関連について、真偽の判断は保留したい。ただ、麻原の「闇」に、文明の歪んだ業(カルマ)が反映されていたのだとしたら、それはそれで、インド放浪を経た著者だからこそ直感で掴み取って我々に提示しえた、実に奇怪で不可思議な陰影を放つ因縁であるといえるかもしれない。

後半部分は、ある読者の青年の問いに答える形で綴られた、著者の若き日のインド放浪体験の回想と追憶。語られるエピソードはどれも、事実だけが持つ底光りした重みに満ちている。カバー写真、「人を食う犬(あるいは、犬に食われる人か)」を撮影した後のエピソードも、インドの深淵を垣間見る凄まじさ。

ネットで調べると、著者のオフィシャル・ページがあり、しばしあれこれ読んだり。無骨で剛直で硬骨な正義感に満ちたエッセイは、剃刀ではなく、サバイバルナイフの切れ味で、繁栄の安逸を貪る我々の弛緩した心に切り込んでくるかのよう。「東京漂流」、「乳の海」、「全東洋街道」など、ずっと昔に読んだ時のあの心のざわめきを懐かしく思い出した。いや、懐かしがってるだけではいかんのだが。




2006/11/28 ただ闇の中を疾走する。

マルホランド・ドライブが出てくる歌のことを教えていただいたり、「マルホランド・ラン」なんてマイナーな映画を、ちゃんと覚えておられる方がおられたりして、一昨日の日記の反響がなかなか面白かった。やはり有名な道なんだなあ。

「マルホランド・ラン」。映画のオープニングは確か、夜のMulholland Dr.をどちらが早いか競う改造車の俯瞰映像から始まるのではなかったか。そして、一昨日引用した主人公のモノローグ。車を警察のヘリが上空から追い、やがて車は止まる、そんな冒頭だったと記憶しているのだが。なんでDVD出てないのか。一昨日も引用した冒頭のモノローグを試訳してみた。

23 miles of Mulholland, slicing Los Angeles like a knife... it's like a trip in time. Sometimes I just can't wait for night. You see too much in the sunshine. Road's changin'... civilization's choking it. At night, the straightaways are shorter... turns sharper... the drop steeper. It's the only place I ever felt safe. Clear, clean... and fast. Freedom. I wonder who it'll be tonight? I hope he's fast.

マルホランドを走る23マイル、ナイフのようにLAを切り裂く道。まるで時を旅するがごとく。俺には夜が待ちきれない時がある。日の光の下では余計なものが見えすぎる。文明が押し寄せ、閉塞し変わってゆく道。しかし夜には、同じその道の直線は短く、カーブは鋭く、落差は深くなる。この道でだけ、俺は安息を感じる。澄み切って、汚れなく、早い。そう、自由そのものを。今夜の相手はいったい誰だ。早い奴であってほしいのだが。
まあ、しかし、あの道を、夜に速度を上げて走ると実に怖いと思うな。ちょっと思い出したのは、懐かしい故郷神戸の裏山、六甲山系のドライブウェイ。あそこも、時折谷底に車が落ちてたりしたのである。

LAを見下ろす山道の闇の中を、改造車で命を賭けて競争する。青春の焦燥が憑依したようなこの主人公が語るこのセリフは、ウィリアム・ギブソンの短編、「冬のマーケット」に描かれた<眠りの王たち>に出てくる疾走感さえ懐かしく思い出させるのだった。



2006/11/27 横綱の朝青龍が「けたぐり」やると、本当に品格に欠けるのかね。

大相撲の横綱審議委員会で、委員全員が、九州場所で全勝優勝した朝青龍のけたぐりについて、「やるべきでない。品格にかける」と小言をいったという報道。内館牧子委員に至っては「けたぐりという言葉自体、品がない」、朝青龍が制限時間を迎えた時まわしをたたく所作に「横綱がみっともない」とも述べたとか。

確かに、けたぐりというのは、小兵力士が、力負けする大型力士に対してしかける「奇襲」という印象。ただ、この技を食うのは、どちらかというと鈍重な力士だ。高見山や小錦なんか、足腰衰えた晩年にはよく食らって、土俵叩いて悔しがってたよなあ。しかし、今回食らったのは若手伸び盛りの稀勢の里。この技が空振りしたら形勢逆転で、本来は朝青龍が負けてもおかしくない。やったほうが非難される技というより、本来は食らったほうがウカツというか、元気者がそんなもの食らうなよ、何やっとるのかという話だと思うがなあ。

まして、「けたぐり」という言葉が、とか、まわしを叩く所作がうんぬんという内館委員の発言については、ピントの外れたためにする批判としか思えない。

ま、別に今回に限らず、朝青龍には、「懸賞金受け取るのが左手だ」という非難があったこともあるし、横綱審議会はまるで小姑のごとく、その一挙手一投足に文句つけてるような気がする。これは、いわゆる「外国人いじめ」ではないのか。子供の「いじめ」はダメだが、外国人はいじめてよいのか。どうも日本の狭量な排他性が現れているという気がしてしかたない。

例えば、大リーグで活躍するイチローは、英語ではいまだにほとんどコミュニケーションできないようだし、アメリカの風俗、習慣など現地に完全に溶け込んでる訳でもないだろう。しかし、彼が安打数の大リーグ記録を更新した時、アメリカ的でないと、そんなことが問題にされただろうか。いや、勿論、本音では歓迎してない連中もいるだろう。しかし公の場でそんな批判をしでかすと、批判した者のほうが、「Open Mind で公明正大なアメリカ人である」という立場を維持できなくなってしまう。

横綱審議会の批判というのは、日本人が、日本人同士のために、日本人同士だけで、日本人村の中で好き放題な外国人批判をしているように聞こえて、あんまり気分よろしくない。外国人が聞いたら気分を悪くして当然というか、実に閉鎖的でウカツな批判という気がする。

昔の高見山は、決まって「日本人より日本人らしい」と誉められた。アメリカ人的な自己主張をした小錦は、相撲界にいる間中バッシングを受け続けた。武蔵丸は賢明にも(というかそもそもしゃべりが上手くないらしいが)沈黙を守って余計な非難を招き寄せなかったように思える。

大相撲から外国人力士は全て排除して、日本人だけで今後はやったほうがよいというのが横綱審議会の本音なのだとしたら、それはどうぞご随意にということではあるのだが。おそらくそれは今にもまして衰亡の道だと思うが。



2006/11/26 マルホランド ドライブを走る。

Thanksgivingのお休みを利用してLAに。Unitedの、ホテル、レンタカー付きの格安チケット。南のほうは何度か訪れたことがあるので、今回は、Santa Monica、Marina Del Rey、Hallywoodなどをブラブラ。



Santa Monicaの海岸に沈む夕日は、そのまま太平洋のかなたに、スポンと沈んで行く。ダウンタウンのショッピングプロムナードも実に小奇麗なところ。もっとも、元はスラム化した危険な地区を大々的に再開発したのだそうで、大通りを外れると、やはりほんのかすかに危なそうな雰囲気が残っているようにも感じるのだが。



LAXのHertzでレンタカーをピックアップ。いつも仕事で使うのはAvisなので、だいぶ感じが違う。エコノミー・カーを予約してたのだが、車が余ってるのか、係のオッサンは、1日20ドル追加したらラグジュラリーカーにアップグレイドすると言う。まあ、それもよいかと変更。来た車は真っ赤な2ドアスポーツの350Z。日本で言うフェアレディZ。

せっかくなので、Mulholland Dr.の山道を乗り回したりしたが、なかなか面白かった。「マルホランド ドライブ」は、同名のデビッド・リンチ監督の映画でも有名だが、ハリウッドやビバリーヒルズを見下ろす山の上を走る道路。

その昔、「マルホランド・ラン」という名前で公開された映画があった。毎週末、この道路を改造車で走り、誰が一番早いかを競う若者達の群像を描いた作品。低予算B級ながら、デニス・ホッパーが好演して、青春の焦燥と蹉跌を描いたなかなか印象的な作品だった。IMDbで調べると、原題は、「King of the Mountain」。掲載されているオープニングのモノローグは、今でも記憶に残っている。

23 miles of Mulholland, slicing Los Angeles like a knife... it's like a trip in time. Sometimes I just can't wait for night. You see too much in the sunshine. Road's changin'... civilization's choking it. At night, the straightaways are shorter... turns sharper... the drop steeper. It's the only place I ever felt safe. Clear, clean... and fast. Freedom. I wonder who it'll be tonight? I hope he's fast.

この山道の両側には、お金持ちの邸宅が並んでいる。もちろん道にすぐ隣接しているのではなく、中は窺えない。デビッド・リンチの映画に出てきた監督の邸宅のようなのが、門の中にはあるのだろう。そういえば、「チャーリーズ・エンジェル」やらデ・パルマの「ボディ・ダブル」などでも、ハリウッドやビバリー・ヒルズを見下ろすこの山の豪邸が舞台になっていた。そんなことを思い出しながら車を走らせると、すれ違う車はポルシェやらベンツ、BMWなど高級車ばかり。パトカーにも2度くらい出くわして、やはり金持ちが住んでるんだなあと納得。

Mulholland Dr.に走り飽きたら、山を降りてビバリー・ヒルズなどを流してみる。ここも豪壮な門構えで、外からは中の様子が伺えない大豪邸ばかり。まあ中は映画に出てくるように、大理石の彫像があったり噴水があったりする大豪邸なのだろう。どんな人間が住んでるのだろうか。もっとも日本人なら、いくら金があったとしても、ここに住んで楽しいとは思えない。見るだけに留めておいたほうが賢明な、所詮異国の夢のような生活。そう、それはまるで、映画館の暗闇で、ほんの一瞬だけ浮かび上がるハリウッド映画のイルージョンそのものだ。




2006/11/23 Thanksgiving

本日から、Thanksgivingでアメリカも4連休。実家に戻って休日を過ごすアメリカ人が多いようだ。そういえば日本も何かの祝日だったっけ。

せっかくの連休だし、こちらにいても寒いだけでしかたない。西海岸でもブラブラするかとフライトを予約。空港の混雑を予想して早めに出たが、駐車場は空いてるし、セキュリティも意外に順調。すでに今週の頭からお休み取ってる人もいるし、混雑も平準化されているのかも。

仕事の移動が少ないからか、Red Carpet Clubなどは、逆に普段よりずっと空いている。ソファーに座ってネット接続など。エアラインクラブにほとんどワイヤレスLANが導入されたし、昔と比べるとAC電源のアウトレットがあちこちに増設され、PCユーザにはなかなか便利になった。

アメリカ人は、ムヤミに大きなPCを持ち歩いてる連中が多く、私のVAIO T-71なんてのは、まるで玩具のごとくに思えるほど。まあ、連中は身体もデカイし、車社会で、徒歩の移動などほとんどないから、PCが多少大きくとも不便はない。逆に膝の上に乗せて作業しようとすると、意外に大きなPCのほうが安定よいんだよなあ。などとどうてもよいことをつらつらと。搭乗までまだもう少し。



2006/11/20 ライブドア事件と裁判マニア

ライブドア事件の公判は順調に開かれているようで、時折堀江被告の発言がニュースになる。しかし、粉飾の手口とされるライブドア株の売却益計上について「説明がなく、確認していない」と全面否定。全てナンバー2の宮内被告がやったことで、自分は承知してなかったということで逃げ切ろうという作戦だな。

ライブドアの粉飾決算疑惑についても色んな側面があろうから、なかなか難しい議論。ただ、「自社株の売却益が資本取引にあたり、利益として認識できない」という会計基準については、昔からずっとそうだった訳ではない。公認会計士や上場企業の経理担当なら知ってないとお話にならないが、税理士に必須の知識という訳でもなく、宮内被告だって会計士から言われるまでその点については不承知だったという可能性もあるような。

もっとも、ライブドアも一応上場しており、財務責任者として知らなかったでは済まされないし、まして投資組合を経由して複雑に資金が還流するスキームを作り上げているところから、不正をしているという意識はあったとは推測できるのではあるが。

しかし、今までのところ堀江被告の粉飾決算関与についての証拠というと、当の部下の証言くらい。「なんでもいいから業績上げろ」と命令しただけで犯罪を構成するのなら、日本の社長の大半は刑務所に行って貰わなければならない。

逮捕前のリークでは、メールなど堀江被告の関与を明らかに証明するちゃんとした物的証拠があるような話だったが、それにしてはまだいわゆる「smoking gun」が出てこないのが不思議。知りませんでしたでホリエモン無罪なら、検察のメンツ丸潰れであるが、今のところ報道を聞く限りでは検察の掴んでる事実は大したことない印象。逆にこれでよく逮捕したなあ。

ま、今までの報道もさほど詳しくもなく、本当のところは分からない。以前読んだ、「お笑い裁判傍聴記」なる本では、毎日裁判を傍聴している「裁判マニア」の実態が描かれており面白かったが、ライブドア裁判の傍聴も興味深いので、日本にいたら一度は傍聴に行ってみたかったなあ。結構人気なのだろうか。

そういえば、最近、「霞っ子クラブ〜 娘たちの裁判傍聴記」という、これまた裁判マニアの本の広告を見た。ネットで検索してみると、この本を書いたのは若い女性の「裁判マニア」集団で、ブログもある。ちょっと読んだが、これがなかなか面白い。

刑事事件の裁判というのも一種人生の縮図で、愚かさや、運の悪さや、自らの責任や、他人の巻き添えや、身につまされる気の毒なところや、実に混沌とした様相を呈している。そしてそれがリアルな人生なのだと、ある種の諦観と共に他人の人生を盗み見る興味。Amazonの書評では、案の定、「不謹慎だ」と叩く意見が多いのだが、不謹慎だからこそ面白いというのもまた人生の真実。いや、この著者達は尽きせぬ興味を持って他者の人生を裁判所で俯瞰しているのだが、決して他人をバカにしたりあざけったりしていない。純粋に知的な興味で裁判を傍聴しているところが、ブログを興味深い読み物として成立させている所以なのかもしれない。




2006/11/19 クマのプーさんとメタボリック・シンドローム

昨日の夜は、このあたりではずっと曇っており星空は見えず。Leonid meteor shower(獅子座流星群)なるものは、見えるところでは見えたのだろうか。日曜の朝、目覚めると外の気温は摂氏2度。本日の予報では、最高3度最低はマイナス2度。日が照ってもあんまり最高気温が上がらないというところが、いかにもこの辺りの冬。

この気温でも、もちろん走ることはできるのだが、室内に暖房が入るようになってからつい億劫になって、ランニングは中止状態。冬の装備で朝から外を走っている熱心なメリケン人も見かけるが、そこまで熱心に走る気にはなあ。冬場はジムに通う人も多いが、ランニングマシンで走る気にもならない。ということで、冬場の運動量は確実に落ちることになる。体重のほうはアメリカ上陸時と比べ、現時点で1.5キロほど増。まだBMIは20を割っており、せっかくだから維持したいもんだが、果たしてどうなることやら。摂取カロリーのほうを調整するか。

今のところ、ウエストサイズは30インチと変化なし。こちらでパンツ買う時には、W30、L30でちょうどよいのだが、大人用のコーナーではこのサイズが最小。あんまり数が置いてない。これより小さいとキッズのコーナー行きということになるのである。日本で自分のことを特段小柄だと感じたことはないが、身長5フィート7インチ、体重125パウンドというのは、こちらでは大人としてのギリギリ最小サイズというところか。そもそもメリケンの連中は、骨太で身体の厚みとかも違う。シャツにしても山積みされてるのがXXLだというのがいかにも中西部。ショッピングモール歩いてるのも、クマのプーさんみたいな体型のデカイ白人ばかり。西海岸では、アジア系やヒスパニックが多いこともあり、もう少し小さいサイズの揃えも多かった気がするが。

日本でも最近、メタボリック・シンドロームという言葉をよく聞くようになったが、ウエストの基準は日本人では男性で85cmに置かれているらしい。しかし、米国高脂血症治療ガイドラインのウエスト基準では、アメリカ人男性は、102cm以上が該当するのだとか。インチ換算だと40インチ。日本の感覚ではずいぶん大きいなと思うが、こちらの衣料品売り場では、ウエスト40とか42とか45とか、普通にたくさん売っている。そして、アメリカのプーさん体型の男性の場合、ベルトをギュウギュウに締めているのだが、その上に更に腹がせり出してる場合がほとんどだから、最大腹囲はもっとあるだろう。ウエストで測定するとアテにならない気がするが、それにしても、ずいぶん基準が違うもんである。




2006/11/17 「太陽からの風」

Amazonから届いた「太陽からの風」読了。最初に読んだのは、大学の頃だったか。A.C.クラークの短編集。今読むと実に懐かしい。表題作の「太陽からの風」は、太陽風を受け宇宙空間を静かに動く宇宙ヨットという、実に美しい光景が広がる作品。レースを諦めた主人公が廃棄したヨットが、外宇宙へと静かに加速を続けて行く結末が印象的。

「輝くもの」はクラークの好きな海洋物。深海に潜む知的生物の謎。クラークは何十年も前にスリランカの海辺に移住し、ダイビング三昧の毎日だと聞いたことがあるが、まだ健在で作品執筆中とか。海の傍で暮らす生活には憧れるな。

「大渦巻II」は、エドガー・アラン・ポーの「大渦巻」に対するSF的オマージュ。月面上の電磁カタパルトから射出された貨物船。しかし打ち上げ時に一瞬の停電が起き、貨物船は脱出速度に達せず、月を周回しながら楕円軌道を取って次第に月面へとゆっくり落下してゆく。たった一人の乗客を助けるための方策。宇宙服を着てたった一人で真っ暗な宇宙空間に浮かび、恐ろしい勢いで月面に近づいてゆくシーンを映像として思い浮かべると、ポーの「大渦巻」のサスペンスが鮮やかに蘇ってくる。

「メデューサとの出会い」も印象的な短編。木星の水素の大気に浮かぶのは「熱水素気球」しかないというアイディアが秀逸。地球の何十倍ものスケールを持つ惑星の、人間が誰も見たことがない大気中に浮かぶ観測気球。壮大なイメージの中で描かれる未知の生物との邂逅。

これらの短編が執筆されたのが1960年代というのが驚き。「幼年期の終わり」や「2001年」などの長編もそうだが、この短編集の背景になっているのは、人間性と未来への明るい信頼に満ちたクラーク・ワールド。実に懐かしい読後感がまた心地よかった。

アメリカでは、明日、土曜深夜に、Leonid Meteor Shower が観測できるかもしれないとか。日本語で言うなら、「獅子座流星群」。



2006/11/16 ネアンデルタール人は我々の祖先ではなかった

日経の衛星版を読んでると、「約3万年前まで生息したネアンデルタール人は、約70万6000年前に現代の人類と共通の祖先から分かれ始め、約37万年前に完全に別種となったことが分かった」との報道。

ネアンデルタール人は原生人類の先祖ではなく、昔に枝分かれした親戚筋、そして原生人類との混血も起こっていなかったことがはっきりしたのだという。

ネアンデルタール人の化石から抽出した細胞核DNAの分析によって証明したというのだが、化石からDNAが抽出されたというのも、「ジュラシック・パーク」を思い出す結構凄い話である。クローン技術を使ってネアンデルタール人を現代に蘇らせることも、いつの日か可能になるかもしれない。いや、そんなもの蘇らせてどうするのかと聞かれても困るのだが。クローン再生されたネアンデルタールには人権があるか。ネアンデルタール権があるのかもしれない。<おい。

しかし、ネアンデルタールのDNA解析で、現生人類とのつながりが薄いことが分かりつつあるというのは前にも聞いたことがあったな。というわけで、過去の読書記録を見ると、以前読んだ「ネアンデルタール人の正体」に、完全な結論ではないが、ほぼ似た話が出ていたのであった。

しかし、ネアンデルタール人が原生人類の祖先でないとしたら、猿人と新人の差がずいぶんと開く気がする。いったいどんな要因で急激な人類の進化が起こったのか。まだ見つかっていない、ミッシング・リンクが存在するのか。フレドリック・フォン・デニケンの宇宙人過去飛来説やら、「2001年宇宙の旅」のモノリスやら思い出すような、なかなか興味深い発見である。

そして、ネアンデルタール人が、同属の埋葬の時に、墓に花を捧げたという説については、このまま覆ってほしくないな。生存競争に勝てずに滅んでしまったとはいえ、我々現生人類と元は同根の古い兄弟達。言葉を持ってたかどうかも分からないが、その彼らが死者を悼み、その埋葬の穴を野辺で摘んだ花で一杯にしていたという話は、なんだか信じたい気がするではないか。


2006/11/15 FOX NEWSとビル・オライリー

共和党とブッシュは好きではないが、FOX News Channelは分かりやすいので時折見る。昔から「We report, You decide」と称しているが、このチャンネルは不偏不党の報道というより、明らかに共和党寄り保守偏向の意見開陳のほうにバイアスがかかっている。

しかし、ここが不思議なところだが、例えば、不偏不党の報道が時として八方美人で、平板で印象に残らない場合があるように、偏向しているからこそ、対象に斜めから光を当てるような陰影がつき、深く印象を心に刻まれる場合もある。911後の、無差別テロへの怒りに燃えたアメリカ人の心境にマッチして、近年急速に視聴率を伸ばしたのも、このへんを抜きにしては語れないだろう。先日読んだ、「現代アメリカのキーワード」(中公新書)の「フォックス・ニュース」を扱った項は、この辺りの事情を実に的確に解説している。ま、しかし、中間選挙での共和党敗北を受けて、現政権礼賛、イラク戦争支持の立場は、今後どうなるか興味深い。

Fox News Channelの名物番組に、Bill O'Reillyというオッサンがキャスターを勤める「The O'Reilly Factor」がある。日本のSkyPerfecTVでも一時放送していたが、これもオライリーの意見に賛同するかどうかは別として、なかなか面白い。何事も独断で決めつけ、相手の意見が気に食わないと怒鳴り散らす。イラク戦争については勝つまでやるのだと堂々と述べている。番組の最後視聴者の意見コーナーでも、反対意見は一刀両断で切り捨てる。本人は中立派というが、まあ典型的右派、共和党寄りのキャスター。

この人は以前、セクハラ疑惑で降板したと記憶していた。しかし相手と和解し、降板まで行かずちゃんと番組が続いている。いかにもセクハラしそうなタイプなんだが、なかなかしぶといオッサンである。YouTubeにもいろいろ映像がアップされているが、David Lettermanのショーに出た時など、なかなか面白い。Lettermanは人をおちょくって寸鉄をカマすのが大得意だから、オライリーもだいぶ頭にきたようだ。

大雑把な物言いだが、日本の朝日新聞は、アメリカのいわゆる「リベラル」よりもずっと左寄りである。新聞では、それに対抗して、読売やサンケイは独自のカラーをある程度出しているが、TVではどこもまだ政治的には割と中立の立場。日本でも、FOX Newsみたいなチャンネルができて、ビル・オライリーみたいなオッサンが出てきたら、それはそれで結構面白いのではと俯瞰しているのだが。




2006/11/13 ずいぶんと遠くまで来てしまったなと

土曜の夜は、よく行く日本レストランの寿司カウンタ。DST終了後の週末は、午後4時から開店するとのこと。まあ確かにもう4時半には日が暮れて寒いから、早く来て早く帰宅したほうがよいかも。

刺身を貰って日本酒など。日本の寿司屋では、ツマミにマグロはまず貰わない。握りのほうがずっと美味いと思うからだが、こちらではそんな贅沢言ったら、食べるものがなくなってしまう。

砂ずりの大トロ部分は天然物。気持ち硬いのは小さめのマグロだからか。もう一種類、これは畜養ですがと、筋間を剥がしの身のような中トロ部分を。これも臭みなく、なかなか美味い。親父によると、マグロはボストンの生を中心に買い付けてるとのこと。アメリカには、日本の築地みたいな大きな魚市場やマグロ仲卸が存在する訳ではない。中間業者もマグロ1本買って売れ残ると始末に困るだろう。ある程度の量を定期的に買わないと、なかなかよい物を回してもらえないなどの苦労話も聞きながら。

昔、そういえばボストンのダウンタウンにあった日本飯屋(名前は忘れたなあ)の寿司カウンタで、中トロの握りなど所望すると、まだ若い職人が首を振って、「今日は止めておいたほうがよいですよ」と語ったことがあった。なかなか正直な職人だったな、など妙なことを思い出したり。アメリカで寿司なんぞ食う必要無しと言われればその通りだが、やはり日本人だから、毎日アメリカ飯ばかりでは死んでしまう。

この店のマグロは、それほど悪くない。白身もなかなか健闘。だが貝類は総じてダメだ。イカ、タコは語れるレベルではない。光り物も、まあ一応あるというだけのこと。この店に限らずアメリカの日本飯屋は、「better than nothing」と自分に言い聞かせないと。日本人の多い西海岸LAなどは、またちょっと違うかもしれないが。

魚の素材もそうだが、握りになったらまず酢飯がダメ。アメリカ人にも受け入れられるようにするためか、どこの日本飯屋でも、酢も塩もボンヤリと、かろうじて酢飯であると判別できる程度。これもちょっとなあ。

逆もあって、韓国人経営の怪しげな日本飯では、ランチの天ぷらうどんにセットでついているお握りが酢飯だったり、うな重を頼むと冷たい酢飯の上に熱々の鰻が乗ってたりする。白米と酢飯の使い方についてコンコンと説教したくなるようなお粗末さ。なんであんなに感覚が違うかね。

日本で通ってた寿司屋の、それぞれに特徴ある酢飯の味は、今でもはっきりと思い出せる。ずいぶんと遠くまで来てしまったなと、そんなことを思いながら。



2006/11/10 急に寒くなった。

昨日までは、妙に暖かく、ひょっとしてゴルフでもできるかもしれないくらいの陽気だったのだが、今朝から急に冷え込んだ。明日は最高気温摂氏2度。最低気温マイナス2度って、なんだかむやみに気温の幅が狭い。困ったもんである。


2006/11/09 地球の太陽面通過

米中間選挙、上院議席で最後まで7000票余りの僅差で開票が終了したVirginia州では、票を数えなおす騒動になるかと思われたが、共和党の現職ジョージ・アレンが敗北を認めて、民主党の勝利が確定。これで上院、下院とも野党の民主党が多数派になるという歴史的大勝。まあ、2年前の大統領選の時に、すでにイラクに大量破壊兵器が無かったことは明らかになっており、泥沼は予想できたこと。厭戦気分が盛り上がるのもいまさらと言う気がする。本来は、前回ブッシュを再選させるべきではなかったのだが。

水星の太陽面通過が日本時間の9日早朝。その時間だとアメリカでも8日の午後だから見えたはず。探すとやはり、ニュースでも報じられていた。

結構頻繁に起こってるものかと思ったが、水星の公転面と地球のそれとは角度差があり、ぴったりと太陽に重なるには周期がある。そして、地球は自転しているから、太陽面通過が起こる時に夜の側のある土地では見ることができない。今度日本で観察できるのは2032年11月だとか。それにしてもずいぶん先だ。

「太陽面通過」と聞いて思い出すのは、A.C.クラークのSF短編、「地球の太陽面通過」だが、これについては、なんだか一度ここに書いた記憶が。と思って検索すると、そうそう、2004/6/11の日記で触れていた。この時は、金星の太陽面通過があったのだ。こちらのほうが水星のよりもずっと稀らしい。

「地球の太陽面通過」は、Wikipediaにも項目が立っている。まだ人間が降り立ったことのない火星から見える地球の太陽面通過。人類がまだ誰もその目で見たことのない天文現象。壮大な宇宙のロマンだな。

この作品が掲載された短編集、「太陽からの風」をAmazonで早速発注。表題作の「太陽からの風」は、太陽風を受けて宇宙空間を動く宇宙ヨットという実に詩的な光景が広がる作品。「大渦巻II」は、エドガー・アラン・ポーの「大渦巻」に対するSF的オマージュ。「メデューサとの出会い」も忘れがたい短編だったなあ。



2006/11/08 アメリカ中間選挙の開票速報

昨日夜は、アメリカ中間選挙の開票速報番組を、CNN、MSNBC、FOX-NEWSなどをザッピングしながら。日本だと総選挙の日はどの民放も特番だらけだが、ニュース専門チャネルが確立したアメリカでは、逆に一般チャネルは選挙報道などには一切関心なく、いつも通りの放送なのが面白い。やはり民主党が躍進。下院では早々と過半数を確保。大統領2期目の中間選挙は、大統領側が負けるという「6年目のジンクス」なるものがあるらしいが、今回は特にイラク戦争の長期泥沼化でブッシュと共和党の人気が落ちている。確かに予想された結果。

民主党は青、共和党は赤という政党色が決まっているのだが、選挙番組でも共通してこの色を使うから、議席配分などパッと見て分かりやすい。どちらの政党が強いかで州を色分けして、レッド・ステイト、ブルー・ステイトとも呼ぶ。

一般的に言うなら、共和党支持のレッド・ステイトは田舎の州。テンガロンハットかぶったジーン・ハックマンみたいなオッサンがトラクター乗っている。流れる音楽はカントリー・ウエスタンで、乗る車はピックアップトラック。アイダホ、アラバマ、コロラド、テキサス、ネブラスカなどなど、アメリカの田舎は、基本的にみんなレッド・ステイトと称して間違いない。保守本流の昔ながらのアメリカといってもよいだろう。

民主党支持の多いブルー・ステイトは、どちらかというと大都市を抱える州。大都会があるがゆえに、マイノリティ、移民、ホモセクシャルなどが在住し、麻薬、貧困、犯罪などの都市的問題も抱えている。州で言うなら、ニューヨーク、マサチューセッツ、イリノイ、カリフォルニアなど。Progressiveなアメリカの一側面を代表する州であり、日本人にはこの辺りの州がお馴染みではあるのだが、これだけがアメリカだと思うとやはり間違える。

もっとも、大統領選挙の場合は割りと色分けしやすいが、上院、下院議員の選挙では単純な色分けは難しい場合あり。下院は民主党が大勢を占めることが早々と判明。上院についても民主党が躍進しているのだが、果たして多数派になるかどうかまでは昨夜の段階では不明であった。

本日朝、再度ニュースを確認したが、まだ最終結果が判明していない。午後になって、民主50、共和49まで確定。最後に残ったバージニア州では、わずか7000票余りの差で民主党Jim Webbは勝利宣言したのだが、相手はまだ敗北を認めていない。

州法では、0.5%未満の差の場合、敗者が州の費用で票の再集計を要求できるのだという。ブッシュvsゴアの「フロリダ・リカウント」を思い出す「バージニア・リカウント」が再現するのか。(個人的な感想では、前々回の大統領選挙、フロリダで間違ってパット・ブキャナンに投票された票をカウントするなら、アル・ゴアが勝っていたと思う。まあ、もう言っても詮無いことではあるのだが)共和党が勝つと50-50のイーブンだが、憲法規定により副大統領が上院議長を兼任しており、彼が1票持ってるので、その場合は実質的に上院の支配は共和党になる。民主党が勝って51-49になると、民主党が上院でも多数党になる。ギリギリのところでまだまだモメそうだ。今回も自動投票記録機はあちこちでトラブルを起しているのだと。



2006/11/06 「Borat」が行く

Boratという映画がこちらでは土曜日に封切られたのだが、マイナーに終わるという観測を打ち破り、前週いきなりの興行収入トップ。$26.4 millionを稼いだのだという。

いったいどんな映画なのかね。興味があったので、YouTubeであれこれ検索。

訛りの強い英語を話すカザフスタンのジャーナリスト「Borat」が、初めて欧米の社会を訪れて、様々な社会を体当たりで取材するという、一種のドキュメンタリー。しかし、このカザフスタン出身というのは実は「設定」であり、この人物は、Sacha Baron Cohenというユダヤ系英国人のコメディアンが演じているのだというからややこしい。この人騒がせなコメディアンの珍妙な行動に振り回されるのは、本当に主人公がカザフスタンから取材に来たと思ってる普通の人々。昔で言う「電波少年」風ドキュメントか。

この映画はまだ見ていないが、イギリスではもうかなりTV番組が放送され、熱狂的ファンがいるのか、YouTubeにもたくさんビデオがアップされている。昨日夜はこのビデオをチェックしだしたら止まらなくなってしまった。面白い。

この「Borat」のキャラクターがまた、一種異様で独特。無神経で欧米文化に触れたことのない田舎者であり、訛りの強い英語(もちろん演技でやってるわけだが)で無茶苦茶なことを言うのである。「あなたは選挙権あるの」と女性に問い、当たり前ですと言われると、「カザフスタンでは、神様の下はオトコ、その下が馬で、その下の下がオンナ」だとかたどたどしい英語で(ま、これも演技な訳だが)一生懸命に説明する。デート相手斡旋サービスでは、分かりづらい英語で、「どうやったらすぐセックスできますか」と問う。趣味はと聞かれると、「トイレの盗撮」と答える。

捨て犬センタでは、犬を抱きかかえて、どうやって食べたら一番美味いか係員に問い、係員に犬を取り上げられる。カントリー・ソング・バーでは、「ユダヤ人を井戸にn投げ落とせ」と熱唱(次第に全員が唱和するのが怖い)。ハンティングの取材では、「アメリカではインディアンを撃つのはもう違法になったって本当か」と問う。アメリカ南部の歴史センタで昔の手工業を実演している男には、「お前は奴隷か。いくらで買える?」と問う。

カザフスタンから来た田舎者と信じて相手して、こんな暴言やら珍妙な行動を、目を見開き口をポカンと開けて見つめるアメリカ人やイギリス人を見て、観客が笑うという趣向である。欧米人ならたとえ冗談でも決して受け入れられないような言動をわざと面前でやり、びっくりさせて人の反応を見る。憐憫や驚愕を浮かべながらも、最初は礼儀正しく彼を扱おうとする人々を克明に写すフィルムには、異文化に対する欧米の不寛容、異物に対する差別意識、そして幽かな嘲笑までも写しこまれている。

笑って忘れてしまえばそこまでだが、コメディタッチの映像の基調低音には、訛りの強い英語でアホな事ばかり言うカザフスタン人を演じるこのユダヤ系コメディアン自身の、自らを笑う社会に対する鏡のごとき嘲笑が響いているような気さえする。最初は単純に笑えるけれども、いつしかそのブラックさが少々気になり、不快感も感じる人はいるだろう。

「Borat」を演じるこのSacha Baron Cohenは、カザフスタン政府から正式に抗議されたらしい。それに対するビデオ回答も、ResponseとしてYoutubeに上げられている。
「私はそのコーエンと称するユダヤ人とは何の関係もなく、政府が彼を訴えることにまったく賛成です。私の故郷カザフスタンは、2003年の法律改正で、女性はバスの中を旅行でき、ホモは青い帽子をかぶらなくてもよくなり、結婚年齢は8歳に引き上げられ、どこにもまけない文明国となりました。みなさんも、天然資源に恵まれ、働き者で、中央アジアでも有数の清潔な売春婦のいる我が国へお越しください。」
と語っている。なんともブラックな毒にいやはや感心。この「Borat」は、日本にも輸入されるだろうか。影に潜む毒を解説せず、単なるドタバタとして売ったほうがよいのかもしれない。



2006/11/05 Bears対Dolphins

やはりまだ時差が残っているのか睡眠の具合が不安定。

土曜からちょっと暖かくなり、さきほど買い物に出た時の気温も摂氏10度を超えていた。しばらく零下にはならないようだが、やはり適応する時間も必要だから、徐々に寒くなってもらいたい。そんな上手くゆくかな。

午後はTVで、NFL、Bears対Dolphinsを観戦。地元Bearsは7連勝して臨んだゲーム。Doiphinsは4連敗中で調子上がっていない。地元でのゲームだし楽勝かと思われたが、前半からBearsの攻撃は、パスがインターセプトされたりファンブルしたり、実にタコなプレイを連発。第1Qで一瞬だけリードしたが、後はずっとマイアミにリードを許してあっけなく敗北。

終わってみるとBearsは、QBサック3回、インターセプト3回、ファンブル3回と実にオソマツな攻撃。前回マンデーナイトでカージナルスに勝った時も、QB Rex Grossmanは4つもインターセプトされている。あの時は、ディフェンスとスペシャルチームの鬼神のごとき活躍で勝ったみたいなもの。要するに今回奇跡が起きなかっただけで、オフェンスの実力はそもそもこんなものなのかもしれない。大黒柱のWRが負傷退場したのも響いただろうが、Grossmanもレギュラー取ったのは実質今年が初めて。やはりまだ経験が必要なんだよな。

マイアミも勝ったとはいえ、それなりにミスを連発して全体として大味なゲーム。Zach Thomasが、ずっとDolphinsに在籍してまだ活躍しているのにはびっくり。頑張ってる。シカゴのほうは、来週からアウェイで3連戦。大相撲でも中日まで勝ちっぱなしで来たのに、後半ガタガタに崩れる平幕力士が時折いる。あんな風にならないようにやってもらいたいがなあ。



2006/11/04 Honolulu 寿司、ラーメン紀行

Honoluluでは、日本食ばかり。日本からハワイに行って日本飯ばかりも芸がないが、アメリカ本土から行くと、他にたいして食べるものもないからなあ。訪問した日本食を記録のために。

初花

Hilton Hawaiian Village内。日本人客も多いから、朝食から夕食まで手広くやってる店。夜の寿司カウンタに。横で若いアメリカ人一人客が、エラク緊張して、肩に力が入って注文してたのがなんだか興味深い。東京のフレンチ・レストランで、見よう見まねで注文している日本人を見たフランス人は、なんだか同じように感じるのではないかと妙な感慨が。はは。

カウンタ内で相手してくれたのは日本人の職人。韓国系で日本語しゃべる人もいた。まず、刺身盛り合わせなど。マグロやカツオはこの近海で取れた生だとか。カツオは下ろした後の一節を全体に炙ってタタキ状にしてるのだが、脂は薄いものの旨みが濃く、悪くない。マグロも少々水っぽい感あるがヘタな冷凍よりも美味いかもしれない。白身はこの辺で取れるオナガダイ。ミル貝(といっても、いわゆる白ミル)は日本、ウニはCaliforniaからだと。石垣貝なども。日本酒を何杯か飲んだ後で握りに。いわゆる日本の寿司チェインのクラスか。しかし、総じて中西部の日本飯屋よりも寿司種は少しばかりよい気がする。着物来た日本女性のサービスはなかなか丁寧。

鮨好

「Breakers」という、所謂Apartment風、アメリカ人の長期滞在が多いと思われる小規模なホテル。その中庭にプールがあるのだが、そのプールサイドにあるという珍しいロケーションの寿司屋。親方は日本人であるが、プールサイドにある寿司屋はうちくらいじゃないかとのことであった。このホテルは日本の裏千家がオーナーで、奥には茶室もあるという。以前はこの向かいのホテルで営業してたのだが、縁あってこちらに移ってきたのだと。

初回は、プールサイド、オープンエアというロケーションに慣れず、酢の物一品とマグロヅケ丼だけ所望したのだが、マグロは赤身から大トロ部分までバラエティあり、なかなか美味かった。Honolulu最後の夜に再訪。寿司バーカウンタで。

冷酒は久保田の万寿だったか。美味い。プラスチックのワイングラスで供されるのに少々難有りだが、まあ場所柄しかたないか。刺身盛り合わせを所望するに、ヒラメがなかなかよい。ハワイ産の養殖だそうであるが、そう聞かないと分からない。アラスカ産サーモンは日本でもおなじみだが、脂があって結構。アメリカでタコを食って感心したことないのだが、ここのはなぜか悪くなかった。

ハワイで上がるカツオは色変わりが早いとか、カンパチと称する白身もハワイで揚がるが感心しないとか、全般にこの辺は貝がダメなので特上と称する握りが出せないのだとか、寿司種やら産地やら、親方にハワイ寿司事情をあれこれ聞いて実に面白かった。値段も良心的で真っ当な店。また来る機会あれば再訪したい。

ラーメン えぞ菊

降り注ぐ陽光の中で過ごして、お昼にまずキリン生ビールを。これが美味いんだなあ。餃子も美味い。いや、日本の基準からすると、どうということもないのだが、米国中西部系日本飯屋の、単なる肉団子に皮かぶせたみたいなものに慣れてると、ちゃんと野菜の味がして、薄い皮がパリっと焼きあがった餃子には感激する。味噌ラーメンは、スープも濃厚な旨みで結構、やや太めの麺に旨みあり、これまたよかった。まあ、日本から直行して感心するかどうかは別問題だが、ここよりマズい店は日本にも多々ある。しかし、ここより美味いところは、アメリカ本土、特に中西部ではほとんどないだろなあ。。

ラーメンなかむら

TVキャスター小倉智明の店との看板あり。なぜかオバハン愛想悪し。「注文は各人6ドル以上で」、「クレジットカードは使えません」、「チップは込みで請求させていただきます」とかの張り紙もあり、店内はややトゲトゲしい雰囲気という気がする。まあ、日本人観光客だらけだから、あれこれ嫌な目にもあったのだろう。この店に限らず、チップに関してハワイの日本飯屋はどこでも大変センシティブ。「最初から含まれております」の表示あり、「含まれておりませんので置いてください」の表示あり、クレジットカードで精算する場合には「含めて計算しますかどうしますか」と聞く店あり。払う習慣の無い日本人観光客と、ずいぶんと慢性的にモメてるんだろうなあ。

ラーメンのほうは味噌を所望。スープには牛骨の出汁が感じられてなかなか美味い。確かに「オックステールラーメン」と表に書いてあった。揚げたニンニクチップが印象的なアクセント。ラーメンマニアではないので細かいことは分からんが、総じてアメリカ中西部のラーメン屋よりもハワイのラーメン屋のほうがずっとよい。日本に近いから、まあ当たり前なのだろうか。

その他ハワイ飯

ハワイ飯は食べてないのだが、有名なABCストアで、これまた名物らしいスパムミートお握りを買った。米軍あるところスパムミートあり。韓国のブテチゲにも入ってたし、沖縄でもたいへんコモンな食材。もちろんアメリカのスーパーにも転がっている。薄切りにして焼いたのを乗せたお握りだが、これがまたなんとも、上品じゃないけど実に美味い。ホテルのバルコニーで海を眺めながら、朝っぱらからビール飲みながら齧るとこれがまた最高。ビールはハイネケンよりも、バドライトあたりが合うでしょうな。



2006/11/03 ジョン・ケリーのバカなジョーク / 「アディダスVSプーマ もうひとつの代理戦争」 

米国中間選挙まであとわずか。現在は、大統領職も共和党、上院、下院の多数派もすべて共和党。ブッシュのイラク政策への批判も高まっているから、ややゆれ戻しがきて、特に下院では民主党が躍進するという観測が多いようだ。確かに政策決定へのチェック機能から見ると、少なくとも上院下院のどちらかは民主党が取るほうが好ましい気がする。まあ、私はアメリカ人ではないから、関係ないといえばそれまでだが。

そんな中、前回の民主党大統領候補、ジョン・ケリーは学生相手の集会で、「きちんと勉強しなさいよ」と述べた後、そうしないと"You get stuck in Iraq"と述べた。これは、「勉強しないと(ブッシュのように)イラク問題で立ち往生することになる」の意だと思われるのだが、「勉強しないと(兵士として)イラクに送りこまれて困ることになる」の意にも取れる。ブッシュはすかさず、「アメリカのためにイラクで戦っている戦士達を侮辱する発言」と反論。

同じ民主党からも「言わずもがなのバカなジョーク」と批判を受け、謝罪しないとした自らの発言も撤回して結局のところ謝罪。ちょっとカッコ悪かった。まあ、ケリー自身はもう民主党を指導する立場にはないのだが、前の大統領選の時もエリート然とした無神経な発言があって、これで人気が出なかったんだよなあ。ブッシュ側で兵士の怒りに火をつけてすかさず反論を指揮したのは誰か知らないが、なかなか知恵者がいる。

なんでも、本来は、"you end up getting us stuck in a war in Iraq." とブッシュへの批判だと分かる形の原稿を間違えたとの報道あり。YouTubeで実際の映像を見ると、確かに明らかに途中で原稿のフレーズを見失い、うろ覚えのアドリブで発言したように思えるから、そうなのかもしれない。



「アディダスVSプーマ もうひとつの代理戦争」(バーバラ・スミット/ランダムハウス講談社)読了。

巨大スポーツ用品メーカーであるアディダスとプーマを取材してスポーツビジネスの内幕に迫るノンフィクション。「アディダス」の会社名は、創設者、アディ・ダスラーの名前から取ったとは知らなかったが、そのまんまだよなあ(笑)。そもそもはダスラー兄弟商会として小さな村で靴屋として創業した、アディとルディのダスラー兄弟が仲互いし、分裂して生まれた会社であり、兄のルディのほうが設立した会社が、これまた巨大企業になったプーマだというのも興味深いエピソード。

アディとルディの兄弟は終生反目し合ったが、その後継者達も仲が悪かったのだという。そういえば、日本でもどこか老舗のカバン屋がお家騒動でもめていた。肉親だからこそ、骨肉の争いになるというのも、これまた人生の真実と言えるだろうか。

この2社だけでなく、リーボックやナイキなど、スポーツビジネスにかかわる会社のどんな判断が事業の栄枯盛衰を招いたかが具体的な事例で描かれており、MBAのビジネスケースを読むような興味もわく。アディの跡を継いだ息子の没後、結局のところダスラー家は、アディダスの経営権を手放してしまうのだが、肉親だけによる企業統治が上手くゆかなかったファミリー・ビジネスの実例としても興味深く読める。

この本が描くもうひとつのテーマは、サッカーW杯やオリンピックの栄光の影に隠れた、接待と利権と裏金の世界。商品をタダで提供するだけでなく、金を掴ませて自分の会社の製品を使わせるため、有名選手の出場する大会では、日常的に金の入った「茶封筒」が飛び交う。そしてスーパースターの獲得や協会での利権を巡って繰り返される接待供応と裏金。そんなスポーツ・ビジネスのダーティーな側面を描いているのも面白い点。IOCやFIFAは、やはり権力と金が暗く蠢く伏魔殿だ。

そういえばその昔、巨人の桑田投手を担当していた日本のスポーツ会社の社員が、裏金を渡したり女の世話をさせられたりとまるで奴隷のごとく使われたと暴露本を出したのを思い出した。しかし、やはり外国の会社のほうがスポーツ・ビジネスでは歴史が長く、やることのスケールが大きい。





2006/11/02 旅行雑感



日本からはパック旅行で気楽に行けるHonoluluだが、アメリカ本土からの機内は当然ながらアメリカ人ばかり。入国審査も何もなく、空港に着いたらレンタカー借りてそのまま走り出せるのは普通のアメリカ国内旅行の感覚。機体はB-777だが、2 Classしかなく、エコノミーのほうでは食事も出ず、必要ならスナックを機内で購入というこれまた米国内仕様。今回は贅沢してFirstを予約。もっとも米国Domestic仕様だから、日本発Firstの3分の1くらいの値段。値段に応じてサービスはダウングレードしており、インターナショナルのビジネス・クラスよりちょっと悪い程度か。

初日にホテルの部屋から見た夕陽。部屋から夕陽を見る利点は、バルコニーでウォッカ・オンザロックスなど飲みつつ眺めることができる点。



ビーチで見る夕陽は、波の音が背景に響いて、ことさらに結構。大西洋もインド洋も見たが、やはり太平洋が一番落ち着く気がする。ハワイアン・アイランダーも日本人も、Pacific Rimの仲間だよなあと。アメリカ西海岸の連中は、仲間という気がしないのが不思議だが。



砂浜に寝転がって空を見上げる。空を見上げるなんて何年ぶりか。高層の薄い雲の動きはなかなか判別できないのだが、低層にある雲は必ずしも一方向に流れてゆくわけではない。まるで波が打ち寄せるごとく、右にスーッと動くと、今度は向きを変えて左にスーッと戻る。それを微妙に繰り返しながら雲は形を変えてゆく。目を閉じて数分して又目を開けると、目に染む空の青さは変わらないのだが、雲の形は驚くほど変わっている。波の音を聞きながら、ただ空を見るだけで何時間も飽きずに。



うってかわって、これは部屋の窓から見える隣の壁。ずいぶん前から紅葉していたが、もうところどころ葉が落ちてきた。

つかの間の熱帯での生活は終り、予定通りのフライトで、こちらに早朝に無事帰着。駐車場から車を出して外気温を見ると摂氏マイナス3度。ハワイ州はDST(夏時間)を採用していないのだそうだが、結局向こうにいた間にサマータイムが終了したことに。場所が違えば気温も違うもんだなと当たり前の感慨を。だんだんと外に出るのが億劫になる気候。体調整えて、明日から仕事復帰。本日はこれでおしまい。


2006/11/01 休暇の終り。



暖かい島で、朝から酒飲んで、砂浜で身体を焼いて、のんびりと。心も身体も溶けてゆくのが分かる。

波の音を聞きながら、太平洋に沈む夕陽を見ていると、これから寒い街に帰らなくてはならないのがまるで夢のように思える。

いや、むしろ束の間の休暇こそが夢であり、いずれ我々は必ず現実に戻ってゆかなくてはならない。

こちらに来るフライトで隣になったのは不動産コンサルタントの白人であったが、そんな短期間の滞在など信じられない。少なくとも2週間は滞在しろと勧める。2週間も滞在したらクビになってしまうのであった。

しかし、毎日朝からビール飲んで、昼間はプールサイドでマイタイやらスクリュー・ドライバー、夜は日本飯屋探索で日本酒と、すっかり飲みすぎたが、のんびり過ごせて実によかった。

空港のRed Carpet Clubから更新。ジン・トニックの後、白ワインなど飲みながら。飛行機に乗ったら、あとはシャンペン飲んで寝て帰るだけだ。あと1時間弱で、摂氏30度の海辺から、摂氏マイナス2度の街へのフライト。

Vacation ends for everybody.