過去日記INDEX 日付順:2007年 内容別:「日常・時事」 「読書」 「映画」 「旅行」 「寿司」 「笹田」


2007/03/30 「ドリームガールズ」 

日本往復の機内で見た映画。

1960年代にデトロイトで生まれたモータウン・レーベルが、全米で成功してゆく過程を下敷きとして、シュープリームスをモデルにした黒人女性3人組コーラスグループの成功と挫折を描くミュージカル映画。

素人オーディション番組出身のジェニファー・ハドソンが、アカデミー助演女優賞をこの映画で獲得。彼女の役は、成功を夢見るグループの中心。素晴らしい歌唱力でリードボーカルを担当するシンガー。その才能を見出したマネージャーの懸命なプロモーションにより、グループは成功を収める。しかし彼女はリードボーカルの座を仲間に奪われ、恋にも破れ、失意に沈み、挫折してゆく。

ジェニファー・ハドソンの成功と転落がこの物語の大きな柱。荒削りながら存在感と歌唱力はさすがで、この役は彼女の爆発力により、実に印象的に成立している。アカデミー助演女優賞には異議なし。むしろ主演と称しても不思議ではないほど。ビヨンセ・ノウルズが一応主演ということになっているのだが、シナリオ上「声に魂と深みは無いが美貌を買われてリードボーカルを取る」という役柄であるから、ストーリー上の存在感そのものが最初からちょっと薄く、損をしている印象あり。

では、ビヨンセがハドソンの役やればアカデミー賞が獲れたか。そもそもこの映画が焦点を当てているのは、モータウン・ミュージックが従来の泥臭いR&B、黒人音楽の枠を脱し、人種を超えて受け入れられるポップスとしての成功を収める過程であり、美貌のビヨンセからファンキーなハドソンにリードボーカルが交代すると、話が無茶苦茶になってしまうのであった。

しかし、シュープリームスを嚆矢として、コケティッシュなセクシー系黒人女性3人組というのは、いまやポップスの中に橋頭堡として確立した黒人系音楽であって、最初にこのプロモーションを考えた人はなかなか戦略家であった。映画ではジェイミー・フォックスが演じている。もっとも、それは本当の我々の音楽ではないと感じる側もあり、そちらを代表する役が、エディ・マーフィーとジェニファー・ハドソン。マーフィーも、シンガーの栄光の絶頂と転落を描いて、実に印象的な好演。

そして、ミュージカルだから当たり前だが、なにしろ全員歌が上手いのには感心。音楽も素晴らしい。ただ、急に演技をストップして歌いだすのだけはどうにかならないか。それがなければミュージカル映画じゃないと言われればその通りだが、慣れないとやはり違和感がある。

機内では音声は英語、中国版字幕あり。ところで、題名「ドリームガールズ」の中国訳は、「夢幻女郎」なのである。妙なことにムヤミに感心した。





2007/03/29 「ラスト・キング・オブ・スコットランド」

日本滞在中の土曜に映画館で見た。本年度、アカデミー主演男優賞映画。機内で見た映画も何本かあるので、ボチボチと映画編を続けるか。

医師免許を取ったばかりのスコットランド人の若者が、国際協力の医師としてアフリカに渡る。到着したウガンダではちょうどクーデターが起こり、軍人が大統領に就任したばかり。彼はほんの偶然からこの新大統領の知遇を得、侍医兼特権的側近として重用される。そして、この出会いは若者を、独裁者の狂気に翻弄される恐ろしい運命へと導いてゆくことになる。

同名の小説が原作であるが、「この映画のストーリーは事実に基く」と最初にキャプションが出る。そう、この大統領は実在していた。独裁者と化し、政敵、側近、そして何十万人の国民を虐殺し、「人食い」と称された、ウガンダのイディ・アミン大統領である。

このアミン大統領は、一度アントニオ猪木と異種格闘技戦をやるとの話も持ち上がったから(実現前に彼は政変で国を追われるのだが)アメリカよりも日本のほうが一般的知名度は高いかもしれない。

クーデターで政権を奪取した軍隊指導者は、当初、陽気に民衆と歌い踊り、新たなヒーローとして大衆的人気を博する。しかし権力を掌握すると、国家を私物化し、財政を破綻させ、敵対者を殺戮する独裁者となる。独裁者の政権奪取の裏に潜む旧宗主国の影、しかし、政権が暴走し利益に反するようになると、旧宗主国はこの独裁者の排除を検討し始める。

ウガンダの話ではあるのだが、この映画が印象的に描いた政治的悲喜劇は、北に収奪され続けるアフリカのいたるところで繰り返されている。無知と貧困、そして政治的不安定は本当にアフリカ自身の責任か。映画を見て去来するのは、そんな問いだ。

アカデミー主演男優賞受賞、フォレスト・ウィテカーは確かにハマリ役ではあり、好演なのだが、独裁者イディ・アミンがどんな人物であったかについて幾許かの予備知識があるなら、その演技はイマジネーションの範囲を超えない無難なもの。極端な驚きはない。「ロード・オブ・ウォー」にも同じようなアフリカの独裁者が出てきたなと思い出したりして。むしろインパクトを感じるのは、映画のラスト、ほんの数ショットだけでてくる、本物のイディ・アミン大統領の映像。

しかし、映画全体を通じて、この作品のアミン大統領像に効果的な陰影を与えているのは、やはり回りの脇役の存在。冒険を求めてアフリカに渡り、アミンとの邂逅により運命の泥沼に陥って行く白人の若い医師。若いが故の尊大で無分別な狂気と、心の奥底に潜む白人としての優越感。感情移入はできないのだが、彼はアフリカと欧米とのかかわりを象徴する、一種の狂言まわしの役割を果たしている。そして、本国から遠く離れた赴任地で疲れ果て、シニカルで虚無的な雰囲気を漂わせる英国代表部のエージェント。「CIAは何をしていた?」を思い出した。





2007/03/28 花粉症 / ノイズ・キャンセリング・ヘッドフォン / カジノロワイヤル

日本出張時の備忘録は更に続くのであった。

(花粉症)

東京でも、すでに花粉は飛んでいるようでマスクした人を多数みかけた。私自身は一昨年から症状が出たのだが、今回の出張で街を歩いても、全然大丈夫。その年に花粉を吸い込んだ累積が、一定の閾値を超えないと症状が出ないのではなかろうか。アメリカでも花粉は飛んでいるが、日本の杉花粉とは種類が違うし、今年は日本の花粉はほとんど吸い込んでないからなあ。

以前読んだ「国家の罠」で、佐藤優が、「ロシアに赴任すると花粉の種類が違うので花粉症はいったん出なくなるが、3年も住み続けるとロシア版花粉症が発症する」なんてことを書いていた。今のところアメリカの花粉には反応してないのだが、いずれアメリカ版の症状が出て来るだろうか。アメリカでしばらく暮らしてから日本に帰ると、日本の花粉症がしばらく起こらないというのなら素晴らしいんだが。


(ビジネス・クラス)

本社では海外出張にはビジネス・クラスが使えるのだが、現地法人の規定では、特別にG.M.が認可しない限りエコノミー使用が原則。自分で自分のビジネス・クラス利用を承認してもよいが、やはり部下にしめしがつかない。つい先日、社内弁護士が、ロンドン出張にビジネス・クラス使ってよいか聞いてきた時にも、8,000ドルすると聞いて、コスト・ダウン考えろと却下したばかりでもある。そんな手前、一番安い運賃、1,200ドルでフライトを予約。ただ、United航空は商売が上手く、ネットでEasyCheck-inする際、ビジネスに空きがあると600ドル追加してアップグレイドしないかと聞いてくる。疲れを考え、つい自腹でアップグレイド。日本発の便はオンライン・チェックインできないから、この手は使えないのだが。

(ノイズ・キャンセリング・ヘッドフォン)

先日購入したBOSEの新製品、QuietComfort 3というノイズ・キャンセリング・ヘッドフォンを機内に持参。

これはなかなかの優れものであった。ただ、ケースだけはあまりにかさばる。他のヘッドフォンの袋に入れ替えて持参。ところが変換プラグを入れ忘れたため、日本行きのビジネス・クラス座席では機内映画の音声がこのヘッドフォンで聞けなかったのがちょっと残念。ビジネス・クラスのヘッドフォンにも、一応ノイズ・キャンセル機能がついてるのだが、聞き比べると、明らかにBOSEのこちらのほうがノイズをカットする機能において優れている。


(007 / カジノロワイヤル)

機内で見たので感想など。なぜか新ジェームス・ボンドは、オックスフォード出たMI6の工作員ではなく、モスクワ大学出たKGBに見える。プーチンにちょっと似てるからかね。

一頃は宇宙を舞台にしたこともあった従来のシリーズに比べ、今回の007物話の舞台とそのスケールは小さい。もっともイアン・フレミングの原作自体が、そもそもヨーロッパの観光地を巡るかなり小さな世界を描いているのだから、原点回帰とも言えるだろうか。題名通り、カジノでのポーカー(?)の場面が多いのだが、ルールを知らないもので、どこが手に汗握る駆け引きのポイントなのかあまり分からなかった。昔見た「麻雀放浪記」は、麻雀知らなくても実に面白かったのだが。

腕にはオメガ、PCはバイオを使い、手にはソニー・エリクソンの携帯を持つボンド。タイアップが露骨なのも面白い。もともとジェームス・ボンドの物語は、イアン・フレミングが作り上げた男の寓話。ヨーロッパの風光明媚な高級観光地を舞台に、スパイが暗躍する。そして、高級車や美食と同様、使い捨てにされるアイコンとしての女達。

今回の映画が面白いのは、若きスパイが007となるまでに焦点を当てて描いたという部分。たった一人本気で愛した女の手ひどい裏切りとその死。若き敏腕スパイ、ジェームス・ボンドの心を石に変えたエピソードを描き、映画の最後は、「My name is Bond, James Bond」という、お馴染みのセリフで締めくくられる。人間臭いボンドから、007の誕生までを描いた、なかなか印象的な映画だが、二作目以降作るとしたら、また昔の趣向に戻ってしまうんだろうか、



2007/03/27 桜 / 成田エクスプレス / つかさ

昨日に続いて、日本出張時の備忘録を。

(桜)

ちょうど滞在中に開花するとの情報。1年ぶりに花見が出来るかと期待してたのだが、土曜日に昔住んでいた浅草花川戸付近の隅田川沿いを散策するも、ほとんど咲いているところはなかった。靖国や上野公園のほうがちょっとは咲いてたのかも。一気に咲いて一気に散る。桜は日本の春の象徴のような。今住んでるアメリカのこの辺りにはほとんど樹が無い。日本人が昔から何度も植樹したのだが、冬を乗り切れずに枯れてしまうのだと聞いたことがある。ソメイヨシノの気候的な北限を超えてるのだろう。東海岸の桜は結構有名なんだが。

(成田エクスプレス)

前から不思議に思ってたのは、日本に来た外国人が、よく成田エクスプレス使って移動できるなということ。日本語が読めないと結構、不親切にできている。その昔、韓国出張の際、駐在員から、空港からバス乗ってもソウルまで簡単に来れるよと言われたのだが、実際にバス乗り場に行くと、ハングルの表記だらけでサッパリ地名や行き先が分からない。結局タクシー使うことにしたのだが、日本の成田に降り立つ日本語できない欧米人は、同じような感想持つのでは。

これは帰りの話だが、成田に向う東京駅のホームで待ってると、白人が英語で、「このチケットの席はどこから乗るのですか」と尋ねてきた。切符を見ながら、これがトレイン・ナンバー、これがカー・ナンバー、そして最後のこの部分がシート・ナンバーだとまず解説。確かに切符に「10号車、3番A席」と打ち出してあっても、漢字が読めないと何のことか分からんだろう。NEXだけでも、英語併記するとかできないのかね。

そして、ホームが普通列車や急行と共用で、号車表示が何種類も入り組み、日本人でも分かりにくい。一応、一番分かりやすそうな、線路にある白い看板を指差し、
「あそこに書いてあるのが、NEXのカー・ナンバー。ここは10号車だから5号車はもっとあっちだよ」
と教えると、彼は今度はホームの柱に表示してある番号を指差し、
「では、これは何の番号?」
と聞いてきた。確かにホームの白い柱にはデカデカと連番が打たれてるのだが、何なんだこれは。分からんなあ(笑)。
「Well, it's a good question but I have no idea. I guess it has nothig to do with the car number」
と回答したら相手も
「本当に、なんの番号なのかね、これは」
と笑う。ただでさえゴチャゴチャしたホームに、柱にまで余計な番号打って、JRもまったく何考えてんだと言いたい。

あと、東京駅での車両連結も混乱をまねく。東京駅で後部に何両か連結するのだが、事前に知らないと、乗車位置が間違っており、列車が通り過ぎたように見える。英語でのアナウンスも一応あった。しかし、おそらく分からなかったのだろう。大船からの車両が前方に通り過ぎて止まると、中国人の団体が慌てふためいて大荷物を引きずり、ドタバタと前方に走って行く。慌てるな、乗る車輌の番号を確認せよとアドバイスしたいが、中国語はひとつも分からんしなあ。

もちろん前方に走っていっても、車両の号車番号は違う訳である。しばらくして新規連結車両が後ろからやってきてガチャンと連結。ようやく事情が判明したか、同じ中国人の団体が、前方から「アイヤー」と大騒ぎしてドタバタ戻ってくる。いやあ、面白いなあ。というか、漢字が分かる中国人でも間違えるんだから、やはりJR東日本の駅にある表示や案内が不親切なのでは。

(築地「つかさ」)

そうそう、「つかさ」にも寄ったのであった。日本到着のその日は、フライトが遅れると迷惑かけるので、どこにも夜の予約は事前に入れていない。しかし飛行は順調で成田には定刻に到着。しばし考慮して、空港から築地「つかさ」に電話。名前を告げると、相変わらず快活で腰の低い親方が、「いや〜お元気ですか、大丈夫です、どうぞどうぞ」と。

都内まで移動してホテルに荷物入れてからタクシーで。なんたる偶然か、フジタ水産の藤田さんがカウンタにおられたので、久しぶりのご挨拶。なぜ遅くまでと思ったら翌日が休市日であった。最近よいマグロがなかなか無いとのこと。「だから、ここのマグロ脳天スモークも大好きだけど、遠慮して追加注文するのを止めてるんです」と。次回の来日時には、是非、お店と市場を見学させてもらって、朝から市場でご一緒して飲みたいもんである。面白いだろうなあ。最近の築地市場は、外国人の観光客にも大人気だという。

お酒は常温。ツマミをいただく。ヒラメは上品な脂で旨味あり。トリ貝、サヨリはやはり春を感じる種。トコブシ塩蒸し、タコ桜煮。店の名物、マグロ脳天スモークはワサビ添えで。アナゴはツマミ用の塩焼き、車海老は茹でたてを。お酒も結構飲んで割と酩酊。魚はやはり日本に限る。適当なところで握りも親方にまかせて。相変わらずスッキリした酢飯が種にマッチして実に美味い。スミイカ、コハダ、赤身、中トロ、アジ、ウニ、アナゴなどなど、日本の寿司を堪能。最後はいつもの鉄火巻き。マグロの香りと酸味が、ここの酢飯と海苔に実によく合う。





2007/03/26 日本出張記 鴨志田穣 / 面白い泡沫、外山恒一 / しみづ訪問

しばし更新をお休みしたのは、先週の木曜、金曜と打ち合わせがあり、日本に出張してたから。その間の出来事を備忘のために思い出すままに。

(鴨志田穣氏)

時差ボケで早朝起床し、ホテルの部屋からネットに接続していて、「酔いがさめたら、うちに帰ろう」の著者にして、漫画家西原理恵子の元旦那、鴨志田穣氏が腎臓ガンで死去したことを知った(最初、肝臓ガンと書いたのは間違い)。著作でも、アルコール依存症以外の大きな病気の発生が暗示されていたのだが、やはりガンだったのか。それにしても42歳は死ぬには若すぎる。残された家族が実にお気の毒。依存症にもなったアルコールの大量摂取とガンとの間には何らかの因果関係があるのだろうか。肝硬変から肝臓ガンはよくある道だが、腎臓ガンとは。もっとも、肝臓を痛めつけると、身体全体が衰弱するし、免疫にも影響して、全体としてガンの進行も早めたのではという気もするのだが。

(東京都知事選挙と、久々に面白い泡沫、外山恒一)

土曜の朝、これまた時差のせいでムヤミに早く目が覚めてホテルのTVをつけると、東京都知事選挙の政見放送をやっていた。それにしても、政見放送は、いつもとんでもない時間にしかやらない。黒川紀章も石原慎太郎も、言ってることはたいして面白くない。ドクター中松にも新鮮な驚きはもはやなく、予定調和の伝統芸能のごとし。

しかし、参議院全国区が無くなってから全体に小粒になったとはいえ、「泡沫」系候補には、結構面白いのがいる。都知事選あなどるべからず。なかでも、外山恒一が群を抜いて面白かった。ある意味圧巻。演説を聴いて、何度も爆笑。「異端的極左」と自称するが、主張は一種のアナーキズム。YouTubeにもすでに画像が上がり大人気だから、見た人は多いだろう。ひょっとすると時ならぬ外山ブームになるのでは(笑)。

「私には建設的な提案など何もな〜い!」、「この国を滅ぼせ!」、「有権者諸君の大半は私の敵である。そして私は諸君を軽蔑している」、「少数派の諸君、政府転覆の恐ろしい陰謀を共に進めてゆこうではないか!」などなど、久々に面白いものを見せて頂いたという感じ。今、東京に住んでたら、プラクティカル・ジョークとして1票入れたい気がするな。泡沫の中では結構票が集まるのでは。

供託金300万円で自由にTV出演でき、自分の主張を検閲無しに好き放題言えるのだから、日本も逆に実によい国なのだ。もしも彼が、この主義主張を本気でやってるのだとしたら、おそらくどこに生まれても根っからの少数者の道を歩んでいたはず。ロシアや中国、北朝鮮に生まれていたら、気の毒にもうとっくの昔に投獄され、どこかで殺されていただろう。

(「しみづ」訪問)

仕事を終えた週末、土曜の夜に「しみづ」訪問。埼玉のAご夫妻、最多来訪記録F氏と同席。F氏は昨年大記録を打ち立てたのだが、今年は更なる記録更新を目指す勢いだとか。

お通しはホタルイカ。お酒を常温でもらいツマミから初めてもらう。本日の白身はタイ。鳴門だとか。アメリカの日本飯屋で出る養殖のタイは、まずベットリと舌にラードのような脂がからむ。このタイは実に上品な脂、軽い甘みと香りが鼻に抜けてゆく。サヨリは小口に切って生姜醤油で。平貝もアメリカではとんとお目にかからないが、炙ってから大振りに切ってもらうと、かみ締める稠密な繊維の中にある旨味が素晴らしいのだ。

トリ貝は買ってはいるものの、まだ納得ゆかずほとんど賄い行きだとか。いつも使ってる大型で肉厚のが出るのはもう少し先。タコも身肉に旨味が無くなり、しばしお休みとのこと。何が置いてあるかより、何を置いてないかに店の仕入れにかける情熱が伺える気がする。

オレンジに輝く青柳。小柱はあっても、この店で青柳が出るのは実に珍しい。独特の癖があるのだが、その香りと歯応えがよい。最近、江戸前でもずいぶん良品が出ているのだとか。小柱もその後で。同じ貝の違う部分とは思えないほどだが、塩で頂くと甘みが更に増す。アジは肉厚の立派なもの。子持ちヤリイカの煮付け、漬け込みのハマグリも実に懐かしい旨味。赤貝はむろきゅうりの小口切りと合わせて。ウニもつまみで貰い、お酒をフィニッシュ。

お茶に切り替えて握りを。マグロは脂の具合を変えて3貫。塩と酢のしっかり効いた酢飯に実によく合う。コハダを2貫。旨味を閉じ込めたしっかりしたこの〆は一度食べると癖になる。カスゴを1。これはホロホロと崩れるような身肉の旨味。アナゴ2の後、昨年から薄焼きに変えた玉子を1。玉子は、ここの酢飯にはこのほうが合うだろう。アナゴはいつものとろけるような食感にやや欠けた。まあ、悪い時期なのかもしれない。最後はいつものカンピョウ巻で〆。すっかり長居してしまった。

(「しみづ」の太巻きを機内で)

日曜はフライトの時刻からすると11時には東京を出発しなければならない。そんな話を土曜の訪問時にしていると、親方が日曜10時過ぎに店に寄ってくださいと。ホテルをチェックアウトした後、立ち寄って太巻きをお土産に頂く。営業時間外に店を覗いたのは初めてだが、親方が先頭に立ち、仕込みに大車輪。実に忙しそうだ。

日本からアメリカへの機内で「しみづ」の太巻きを。しっかりした酢飯をベースに、仕事を施した種が満艦飾。そうそう、これがしみづの酢飯だったなと、昨晩食べたものがフラッシュバックする。レクター博士は「ハンニバル」の中で、警察の追及を逃れ欧州からアメリカへの機上、エコノミー座席に、フォションに誂えさせたランチボックスを持ち込んだ。まあ、日本人ならフォションのランチボックスより絶対に「しみづ」の太巻きですな。確かレクター博士は、隣にいたガキにじゃまされ、せっかくのランチボックスを食えなかったんではなかったか。私のほうは邪魔が入らなくてよかった。はは。




2007/03/18 ドタバタ東京都知事選

東京都知事選は、なんだかドタバタしてるうちに、桜金造も出馬の意向だとか。ちょっと前はヘンなタレント弁護士も出馬検討してたっけなあ。大阪でその昔ノック、前回宮崎ではそのまんま東が知事になってるのだから、別に出馬しても不思議ではないが、元コメディアンにして現俳優(?)のこの人は、なにか政治的な活動とかしてたのだっけ。

と思って一夜明けると、今度は、ドクター中松も出馬表明。この人は確か以前も何度か都知事に立候補していた。しかしこうまで色んな人物が立候補すると、石原批判票と浮動票がそれぞれ割れるほうに動くから、石原知事は漁夫の利で大歓迎なのでは。

石原慎太郎の尊大な自負心は好きになれないが、青島幸男よりはずっとマシな事をやったのではないかと思っている。ただし強大な権力は必ず腐敗する。出張費問題や四男への公費支出問題はおそらく氷山の一角に過ぎない。もうご本尊もお年でもあり、年々頑迷固陋さも増しているだろう。2期勤め上げた今が引退の潮時だと思うがな。

もっとも問題は、他の候補に見るべき者が見当たらないということ。浅野史郎は救世主ではなく、スタンドプレイが大好きな官僚出身者に過ぎない。黒川紀章は石原を下ろすために出たというが、その立候補は反石原票を分断し、結果的に石原を利するだけに終わるだろう。それが実は真の狙いなのだとしたら、なかなかの策士であるが。

まあ、今は海外在住で東京都民ではないから、関係ないといえばその通り。前回の都知事選挙は2003年。当時は都内に在住していたのだが、果たして誰に投票したのか、思い出そうとしても思い出せないのだ。石原慎太郎だったっけ。それとも投票に行かなかったのか。





2007/03/17 ホリエモン実刑 / 「世界屠畜紀行」〜世界でどうやって動物が肉になるか

ホリエモン実刑判決は、やはりちょっと驚いた。証券取引法違反だけで執行猶予無しの実刑がいきなりというのも、結構厳しい判決の感じがするのだが。これはもちろん、同じ粉飾決算の日興コーディアルが、ケロっとして生き延びるのが決定した直後だから、余計にそう思うのかもしれない。

裁判で実刑判決だと、普通、判決後はそのまま刑務所に収監されるらしいが、5億円の保釈金積んで即日保釈。金さえあればムショに行かなくても大丈夫。しかし、我々普通の会社員が有罪判決食らったとして、保釈金と言うのはどれくらいなんだろうか。ちょっと興味がある。前回拘置所から出た時はずいぶんスリムになっていたホリエモンが、すっかり昔のデップリ体型に戻ってたのは、まあ、そんなもんかなと。



「世界屠畜紀行」(内澤旬子/解放出版社)読了。

肉が家庭の食卓に上がるためには、世界のどこであれ、誰かが動物を殺し、それを食肉に仕上げる必要がある。そしてそれを流通させる仕組みも必要。この本は、著者が、 日本だけでなく、広くに世界各国に取材し、動物を食肉にする「屠畜(著者は屠殺という言葉を使わない)」の過程をルポルタージュしたもの。著者自身で描いたイラストが多数掲載されており、文章もたいへんに読みやすい。

日本の食肉加工の現場については、「ドキュメント 屠場」という、先行する優れたルポルタージュがある。この本も、日本の屠畜場について、牛だけでなく豚の処理、そして皮の処理に至るまで広く取材している。しかし、この本のもっとも面白い部分は、本の大半を占める、海外屠畜の実情取材を描いた部分。

韓国、バリ、エジプト、イスラム諸国、チェコ、モンゴル、インド。著者が訪れた国で、人々はどのように「屠畜」に接しているのか。そして、その差別意識は。どのように家畜が食肉となってゆくのか。世界の実に様々な国で、家畜を食肉にする「屠畜」という行為が、それぞれの国の伝統を反映しながらも、一般家庭の食卓にどれだけ密着した祝祭的行為であったかということを、真摯な著者の取材は生き生きと描き出して見せる。特段のイデオロギー臭を感じさせることなく、世界の国を珍しい角度で俯瞰したエッセイとして出色の出来。


著作の後半、アメリカ、巨大工場の如し食肉加工場を取材する部分は、以前読んだ、 「だから、アメリカの牛肉は危ない!」(原題は、「Slaughterhouse Blues(屠畜場ブルース)」)にも描かれていた通り。

著者の、世界の食肉処理の現場に「差別」がどのように影響しているかを知りたいという問題意識も、この著作の随所に印象的な陰影を与えている。屠畜の場を訪問して、純粋な好奇心にあふれ、嬉々としてあちこちの場面を見て回る著者は、一般的な日本の常識では、ちょっと変わった女性であるとも思える。しかし難しい理屈を意識せずとも、実に興味深い紀行エッセイとしても成立しているのが、この著者の書き手としての可塑的な力量を感じる部分。読み応えのあるノンフィクション。




2007/03/14 満員の通勤電車の中で、アザラシの眼球を解剖する男

Amazon.co.jpで検索して、思いつくがままに発注した本がドッと届いた。まずは手軽な新書から、「解剖男」(遠藤 秀紀/講談社)を読了。

著者は、京都大学霊長類研究所教授にして獣医学博士。動物の遺体を解剖して、生物進化の系統や謎を探求し、解剖した遺体を博物標本として後世に伝えるという「遺体科学」を提唱する著者が、彼の学者としての活動やその理念を素人に分かりやすく、かつ興味深く解説した本。

新書の帯や本文にも著者の写真が掲載されているのだが、これが秋葉原系オタクを思い出させるような独特な風貌。要するに、学問でもパソコンでも鉄道でも何でもよいが、見るからに「何かに没頭する系」の人を思わせる。

本書の冒頭は、満員の通勤電車の中でアザラシの眼球を解剖する著者のエピソード。この人は本気で電車の中で解剖やってるのかと一瞬度肝を抜かれるが、実はこれは著者が、その蓄積した知識を総動員して自分の頭の中で解剖を再構築し、遺体に隠された真実を見極めようと思考の限りをつくす、いわゆる「脳内解剖」を行っている場面である。本書の題名や、わざと珍妙に映った自分の写真も含め、まあ著者独特の計算による一種の韜晦的ジョークだ。

動物園で亡くなった2トンもあるサイを引取り、解剖するエピソードも圧巻。この解剖は、サイの気管支の構造から、その進化の系統を明らかにし、種の分類にも示唆を与えた著者の論文として実際に結実している。動物の遺体解剖を専門にする著者は、どの動物園でどの動物がどこで死んだら、どのように運び出すかさえ、常に頭の中にあるのだという。

悪くいえばオタク系の香りがする話でもあるが、この本の全体を通じて伺えるのは、著者の、生命の不思議とそれを解明する「知」への純粋な憧憬、そして真摯な探求心にあふれた学問への情熱。駱駝のコブの不思議、牛の胃の奇妙な構造、腎臓の構造から推察できる、ゾウが昔は水生の動物だったのではないかという仮説などなど、次々に披露されるエピソードも興味深く、文章がまた上手でなかなか読ませる面白い本。

読み終えた後で、一緒に届いた他の本の中に同じ著者の「人体 失敗の進化史」を発見してちょっとびっくり。Amazon.co.jpの、科学関係カテゴリーの売れ行き順リストから、題名と解説で適当に何冊か発注したのだが、この人の本は最近、結構売れているようである。まあ、確かに読みやすく、興味深い「センス・オヴ・ワンダー」に満ちた本。





2007/03/13 日興コーディアルグループは上場維持ねえ

日興コーディアルグループは上場維持との東証判断。日経衛星版の1面にもデカデカと記事が。確かに意外なニュース。日経の編集部自身が、「なぜ上場廃止と報道してきたか」を説明した囲み記事も。何度も「上場廃止が決定する」と紙面で報じてきた訳で、結果的には大誤報となったのだから。しかし、世の中の大勢も上場廃止ではと思ってたはず。なぜかというと、自然なことながらライブドアとの比較である。

同じく決算粉飾の疑い。かたや経営者は逮捕され塀の中に落ち、会社は上場廃止。かたや制裁金は課せられたものの刑事罰はなく、会社は上場維持。どこからこの差が生まれたのか。

そもそも東証の上場廃止基準自体、ずいぶん古い代物で、数値基準がなく実に曖昧。適時開示に関するルールには、売上の10%とか利益の30%とか、ある程度の目安があるのだから、上場廃止にももう少し定量的基準を設けたほうがよい気がするな。

西武鉄道やカネボウと違い、会社の組織的関与が証明できなかったというが、「旧経営陣の一部が主体的に関与していた」との日興自身による内部調査が公表されている。逆にホリエモンは、裁判で「自分は粉飾に関与してない」と証言。経営陣がハッキリ関与してたと証明できるのは、いったいどちらか。株主保護の観点とも解説があるが、ガラガラと株価が下落し最終的には紙くずになったライブドア株主は、果たして保護しなくてよかったのか。東証の上場維持に関する理屈は、どうも後から取ってつけたようなモノでしっくりこない。

もっとも、ライブドア上場廃止も、正式に決まるまで、東証の対応は、実に煮え切らないノラリクラリとしたものであった。こんな対応を見てて思うのは、東証というのは、基本的にお役所を見て仕事する体質が染み付き、責任を取るのを嫌い、外部の圧力にはとんと弱い組織だということだ。

ただ、本当に政界、官界からの圧力があったとしても、いったいどんな筋からで、何を目的としたのか、そこがイマイチよく分からない。シティが既に発表していたTOBとの関連も、果たして判断に影響したのかしなかったのか。そのうち、なんらかの背景が報道されるだろうか。まあ、今にして考えると、ホリエモンはちょっと気の毒な気さえしてくる。この16日に判決だそうだが、有罪になったらまさに踏んだり蹴ったり。まさか実刑にはならないと思うのだが。




2007/03/12 なにも願わない手を合わせる / 渋谷 

「なにも願わない手を合わせる」(藤原進也/文春文庫)と「渋谷」を続けて一気に読了。 「黄泉の犬」を読んでから、一緒に発注した藤原進也の本。

前者は、ガンで亡くなった実兄の供養のため、四国八十八ヶ所霊場を巡った著者が、旅に去来する心の動きや、先々で出会った不思議な出来事について語るエッセイ。

なぜ人は遍路を歩き、祈るのか。著者自身は、「自分自身の死者に対する残念を浄化することが死者への供養」との考えを述べている。「なにも願わない手を合わせる」とは、死後の世界や輪廻転生を前提にした死者への祈りではない。肉親のあまりにも不条理と思える死を目の当たりにして、現世に残された著者が、最終的に帰着した、自らの心にだけ問いかける祈りの姿である。

著者が出会ったエピソードでは、「死蝶」も忘れがたいが、ひとりでお遍路を歩く93歳の老女の話が印象的。夫婦で一緒に四国を回り始めたのだが、夫は18番の札所で亡くなった。「寺で死んで本当にありがたかった。何から何までお寺さんがやってくれて、きれいさっぱり成仏できた。家族にも連絡していない。誰にも迷惑かけることなくあの世に行くのが老人のつとめですから」とこの老女は恬淡と語るのである。

ずいぶん前、「お遍路入門」という本読んだ時に思ったことではあるのだが、仕事をリタイヤしてやる事が無くなったら、まだ元気なうちに家も車も一切合財売り払い、身体ひとつで四国を巡礼したい気がする。そして、どこかの札所の宿坊で、翌朝、隣の人が起こしてくれようとするともう息をしていない。遍路に死す、そんな最期もいいなあ。

本の見開きに四国札所地図がついているのを見ながら、ちょっと本気で考えたりして。

「渋谷」のほうは、渋谷でふと出会った女子高生の心象風景に著者が踏み込んでゆくドキュメント。世の中に正対して、そこに必ず何かの意味を見出そうとする藤原信也の探求は、確かに無骨で剛直で不器用にも感じられるのだが、おそらくそれは、現実の世の中のほうが虚飾に満ち、信ずべきものが何一つ存在せず、その場その場でチャラチャラと移り変わる蜃気楼のようなものに成り果ててしまったからかもしれない。そんな事をつくづく感じ入るエッセイ。

色彩を失った少女の見た渋谷の街は、無機質で心を麻痺させる、どんよりしたトーンに鈍く輝いているのだ。



2007/03/11 夏時間に切り替えの朝

この日曜日からアメリカは夏時間に切り替え。このあたりは先週まで、まだ雪が降ってたりした。季節のほうも、まさか慌てて帳尻を合わせようとした訳でもないだろうが、土曜の日中は華氏55度まで気温が上昇。日差しも強く、路肩に残っていた雪もみるみると溶けてゆく。

Forest Preserveの中もだいぶ雪が溶けたのではないかと歩いてみると、まだ木陰のトレイルは雪で覆われている。しかし、すでにランニングしてる人が何名も。自転車はさすがに雪が溶けてからか。大型犬の散歩させてる人も多かった。冬になってすっかりランニングを休んでしまったので、リハビリがてら1時間ばかりウォーキングを。これが結構疲れる。秋口までは4マイル32分で軽く走って快適だったのだが、一冬ですっかり身体が鈍った感あり。まあ、気温の上昇にそってボツボツと運動量を増やしてゆかなければ。

土曜の夜は、いつもの日本料理屋の寿司カウンタ。録画で先週の女子ゴルフ中継見ながら、店のオヤジとDaylight Saving Timeが始まる時は時計をどっちにズラすのだったかしばし確認。滞米何十年のオヤジも毎回迷うというのだが、確かに言われてみると、ちょっと考えないと思い出せない。要するに日を長くするため早起きしようという趣旨であるから、時計を1時間進めればよいのだということで最終結論。日本との時差も一時間短縮に。日曜の午前2時をもって切り替わるのだが、基本的には土曜の就寝前に時計を調整しておけばよい。

今朝起きて、TVのニュースで時刻を確認。おお、ちゃんと1時間進んでいる。<当たり前。Enegy Policy Act2005という法律で今年から開始日が変わったのだが、Windowsのほうもupdateしてればもう対応済みなようだ。そういえば、留守電とかTVとかの時刻表示はまだ直してなかったな。





2007/03/09 「双六で東海道」〜元気な80代もいるんだなあ

新刊が出るたびに、不思議になんとなく買って読んでしまう本というのはあるもので、私の場合だと、丸谷才一のエッセイなどがそのひとつかな。

少々遅れたが、「双六で東海道」(丸谷才一)読了。

古今東西の歴史と文学を縦横無尽に往来して、ゴシップあり、学問的知識あり、雑学あり、戯言あり、興味深い考察ありと、手馴れた語り口ながら、バラエティに富んだ内容のエッセイ。いわゆる「歴史的仮名遣」を用いた独特の語り口は、まさしく落語の名人芸を聞くがごとく、安心して読むことができる。根強いファンがいるのも納得。

ある意味「暇人の清談」であるが、社会科学や自然科学系の類にはまったく何の関心もなさそうな恬淡とした態度もまた、一連の著書に一種独特の雰囲気を与えている。円熟した文学的教養の一種の極致を惜しみなく披露した「雑談」だな。著者はもう80歳過ぎてるのだそうだが、老いを感じない柔軟な知性にはやはり感心。元気な80代もいるんだなあ。いや、元気でないと80まで生きられないというのが正しいか。



2007/03/07 ノイズ・キャンセリング・ヘッドフォンの実力

ノイズ・キャンセリング・ヘッドフォンの威力は、99年に世界一周出張した際、UAビジネスクラスの座席についていたヘッドフォンで試したのが初めて。実に感心した。雑音と逆位相の音を発生させ、ノイズを中和する技術。ただ、日本ではあまり必要性も感じなかったから、自分で購入などしなかったのだが、こちらに来て、飛行機でのアメリカ国内出張が多くなると、乗る時間は長いし、機内のエンジン音がやかましい。

Amazon.comで調べて、Sharper Imageの携帯型ノイズ・キャンセリング・ヘッドフォンなるものを購入したのが昨年夏。機内でかけるとかなりエンジン音などが軽減して快適。折りたたみできるのが優れたところ。

しかし先日、機内で隣に座ったオッサンが使っていたBOSEのヘッドフォンに目が留まった。UAの機内誌にもちょうど同じヘッドフォンの広告が。コンパクトでなかなかの優れもののようだ。これはいいなと思ったが、それきりすっかり忘れていた。ところが先日、部屋で酔っ払ってネット接続してる時にフト思い出し、Amazon.comでこのヘッドフォンを見つけていきなり衝動買い。BOSEの新製品、QuietComfort 3というノイズ・キャンセリング・ヘッドフォンである。。

昨日届いたので、今持ってるSharper Image製ヘッドフォンと聞き比べ。BOSEのは、ノイズ・キャンセル・スイッチを入れると、一瞬耳が聞こえなくなったのかと思うくらいスパっとバックグラウンドのエアコン動作音などを消し去る。前のヘッドフォンでも確かにノイズは軽減しているのだが、聞き比べると、やはりボンヤリとした雑音がバックグランドに残っているのがハッキリ分かる。

次は、iPod Nanoに接続して音楽の聞こえ具合を比較。BOSEのほうが、明らかにクリアでエッジの立ったシャープな音。一度これを聞くと、Sharper Imageのほうは、実にモッタリとくぐもって不鮮明な音に感じる。ヘッドフォンなど、どれでもあまり変わらないと思っていたが、意外に違うもんだな。一度BOSEのほうを聞くと、もうSharper Imageをつける気がしない。

まあ、しかし、公平を期するためにいうと、性能差があって当たり前。なにしろ、Sharper Imageが34ドルなのに、BOSEは349ドルする。10倍も値段違えば性能に差があって当然。10倍払う価値があるかの判断が問題だが、なにしろもう買ってしまったから、あまり仔細に検討しても、もはや詮無いことなのである。

もっともBOSEのほうにも難点はある。乾電池ではなくリチャージャブル・バッテリー使用なので、使うには充電が必要。コンパクトとはいえ、ケースも含めるとやはりかさばる。まあ、しかし、買った以上、今度の出張には携帯して使わないと元が取れない。酔っ払ってAmazonに接続すると、不要不急の余計な物買うという見本のような話であった。




2007/03/06 タダで1万2千ドルもらった気分

早いものでもう3月。2005年にブッシュがサインしたEnergy Policy Actによってサマータイムの開始が今年より早くなった。今度の日曜が、Daylight Saving Timeの始まり。この辺りではまだ道端には雪が残り、気温も摂氏零度以下。ちょっと早すぎるかな。

アメリカ上陸してこれまた早いもんでそろそろ1年。いつも使っているUnited Airlineのマイレージは、この1年間でおよそ18万マイルとなっている。実際に飛んだ距離は5万マイルちょっとだが、クレジット・カードのポイントが7万マイル弱。それに加え、ボーナスマイルやらホテルやらレンタカーのポイントの集積。

前回駐在時は、アメリカにいる間一度も使わず溜まる一方。50万マイルばかり溜まったマイレージが、有効期間の延長を知らず、危うく一気に失効するところだった。放置しても航空会社の都合で航空券やアップグレイドへの交換率が変更になる可能性もある。利息つくわけでもなし、溜め込んでいてもしかたない。ある程度溜まる都度使ってゆくかと、暇な時に使途をちょっと検討。

Savor Awards というのは使うマイルは少なく、ブラックアウトが無いとはいえ、やはり席数に制限あり、意外に席が空いてないもんである。しかしUnitedのサイトで検索してると、今年年末の日本往復便は、まだ結構空いてることを発見。まあ、ずいぶん先の話なのだが。

実際にお金でチケット買ったらいくらするのかも比較すると、これもクラスによって大きな差がある。しかし、必要なマイル数は、意外にチケットの値段ほどの差はない。チケットの値段と、マイレージで乗るのに必要なマイル数、これから換算したマイレージ、1マイル当たりの交換率は下表のようになる。

United Airline ORD-NRT往復と必要なMileage
Price($)Mile neededPrice/Mile
Economy1,22560,0000.02042
Business8,87590,0000.09861
First12,473120,0000.10394

路線と時期によってチケットの値段は大きく変動するが、必要なマイルは、アメリカー日本間ならいつでも同じ。エコノミー・クラス、1200ドルチケットと交換に必要なマイルが6万マイル。ファースト1万2千ドルの交換に必要なのが12万マイル。マイレージというのは、エコノミー・チケットに交換すると1マイル2セントの価値しかないのだが、ファーストに交換するとマイル辺り10セントの価値があるということである。

航空会社の採算がどうなっているのか知らないが、それにしてもずいぶんと交換率が違う。航空会社の観点からすると、マイレージと交換で、タダで座席を提供することによって喪失する期待利益が、エコノミー2回とファースト1回でほぼ等値であるということか。ファーストクラスというのはエコノミー何席分も使ってるから、確かにあんまり儲からないかもしれない。

もっとも、客のほうから考えると、1万2千ドル相当のチケット1枚をタダで貰うのと、1200ドル相当のチケットを2枚もらうのでは、どう考えても1万2千ドルのほうが得という気がするなあ。ということで、今年年末のプライベートな帰国は、マイレージを12万マイル使用してファースト・クラスをブッキング。気が早いが、タダで1万2千ドルもらったような気分。まあ、年末までに異動で帰国なんてことになったら困るのだけど。





2007/03/05 「The Lost Tomb of Jesus(キリストの失われた墓)」

日曜の夜は、Discovery Channelで、「The Lost Tomb of Jesus(キリストの失われた墓)」特別番組を。Webにも特集記事が上がっている。

7時からは、露払いというのか、再放送らしいノアの箱舟探求の1時間番組が。これは意外に真面目なお話。旧約の洪水物語には、実は古代シュメールに伝わる同様の伝説が投影されているというのは、楔形文字で記されたシュメールの伝説研究から導き出された割と有名な仮説。ウルの発掘でも古代の洪水跡が見つかっており、当時の人にとってチグリス・ユーフラテスの氾濫が、全世界を水没させた大洪水に思えたとしても確かに不思議はない。箱舟ではなくとも、何かの乗り物で実際に助かった人がいたのかもしれない。

さて、肝心の「The Lost Tomb of Jesus」特番は、CST 8:00pmから。エルサレム郊外で1980年に見つかった墳墓から石灰岩の石棺が9つ見つかった。当初は重要な物とも思われてなかったのだが、この墓碑銘から、イエスとその一族を思わせる名前が次々発見されたというもの。石棺と書いたが、棺おけというよりも実物は骨箱に近い。ダンボール箱程度の大きさの石の箱。

同じ墳墓に「ヨセフの息子イエス」、「イエスの息子ユダ」と書かれた骨箱が存在し、、そして母親マリアの骨箱も、ギリシャ風表記で書かれたマグダラのマリアと思しい棺もあるという。もっとも、Jesusと表記するとまるで無条件でキリストのようだが、「ヨシュア」というユダヤ名前は当時の社会では実にありふれた名前。マリアも女性の4分の1につけられた名前だったという。マグダラのマリアの表記方法が、福音外伝などに見えるイエス死後のマリアのギリシャ圏での活動を伺わせると言われても、イマイチ眉唾な気が。結局のところ、同じ墓にあるこれらの名前の組み合わせが、福音伝承にあるキリストの家族に一致しているというのが根拠。骨箱に、救世主イエスと書いてある訳ではない。

骨箱に残った残滓のDNA鑑定についても疑問。イエスの棺とマグダラのマリアの棺から抽出したDNA鑑定で血縁関係は証明されなかった。だから夫婦だったと乱暴な結論を出すのだが、DNAで血縁が証明されなかったことで分かるのは、2人が他人だったという事だけ。夫婦だった何の証明にもならない。

むしろ、そんな事を調べるより、父ヨセフと母マリア、そしてイエスのDNAを比較して、マリアとは血縁があるがヨセフとは無いことが証明されれば、(ま、骨箱がキリストのものだったと仮定して)処女受胎を示唆する驚天動地の結果なのであるが、両親の骨箱には何の残滓物がなかったという実に不可解な説明。テストした残滓にしても何が入っていたのか分かったものではないのだが。

骨箱が見つかった墳墓に入ってゆく場面。封印を開け、ナレーターが墓に入ってゆくショットの次には、墳墓の底のキャメラからの画面に切り替わる。なんだか昔の「川口探検隊」を思い出して笑えるなあ。棺の表面を刷毛で払って刻印を調べる場面など、実物ではなく再現シーンであることがはっきりしているシーンが多用されており、かなり演出色の濃いドキュメンタリーである。

番組の後半では、本来10個だった石棺のひとつが失われており、これこそが「イエスの弟―ヤコブの骨箱発見をめぐって」で扱われたイエスの弟の骨箱であると結論づけているところは、なかなか面白かった。この本の感想も過去日記に書いたことがある。ただ、この骨箱にも偽造説などあるらしいが。

2時間番組が終わった後、今度は考古学者や宗教家を呼んで、この番組の信憑性についての検証ディスカッションが一時間。パネリストからも厳しい批判が相次ぎ、司会者も懐疑的。製作者の反論は、かなり分が悪いように感じた。「タイタニック」のジェームズ・キャメロンがプロデューサーだが、元々Discovery Channelが主導して作成した番組ではないんだな。

考古学的手法や論証の過程についての批判が相次いだが、いわゆるキリスト教関係からはそれほどの感情的批判なし。ある宗教大学の教授である司祭は、「これが本物であるかどうかは、私の信仰にはまったく影響を及ぼさない」と最初に語っていた。それは確かにその通りであろう。

新約最古のマルコ伝は「空虚な墓」のエピソードで終わっており、その後の復活物語は後世の加筆だというのが通説。福音書成立のごく初期からイエスの遺体は消えていたとの伝承があるのに、骨箱が存在するというのもちょっと不思議な話ではある。最初はファンダメンタリズムの影響を受けた番組かと思ったが、明らかに新約の記述とは違う、マグダラのマリアとイエスの婚姻説を唱えている。どちらかというと「ダヴィンチ・コード」系の亜流といった話であった。





2007/03/01 今更ながら、iPod Nanoなど買ってみた。

出張でアメリカ国内線に乗ると、無聊な時間も多い。春先からはランニングも再開する予定。そんな時は音楽など聞くのもよいなとふと考えて、今更ながら、iPod Nano 8G なんてのをAmazon.comで購入してみた。色はblack。発注後中1日で到着。

8Gで2000曲入るとスペックにあるが、本体サイズの小ささに、これまた今更ながらびっくり。その昔、カセットテープを使ってたウォークマン等と比べると、まさに隔世の感あり。半導体技術の凄まじい進歩を目の当りにする感慨。

ただ、iPod Nanoを購入してから思い出したのだが、手持ちのCDは全て、残地荷物として日本の倉庫に置い来たのであった。今頃思い出しても遅いよという感じだが、iTunesにアクセスすれば、1曲99セント、アルバム単位でも昔のものなら9.99ドルと、実に安くダウンロード可能。気ままに検索して、昔懐かしい曲を中心にバカスカとダウンロード。これを「オトナ買い」というのかね。<それは無駄使いと称します。

Eagles, Billy Joel, Queen, David Bowie, Gary Numan, Lou Reed, Jimi Hendrix, Bruce Springsteen, Toto, Boston... ま、しかし、考えてみると、FMのClassic Rock Stationで普段流れるラインアップとちっとも代わり映えしない。ラジオ買っても同じだったなと思いつつも、買ったからには使わないともったいないし。ま、しかし、iTuneというのも実にうまいこと考えた商売ではある。

ポッドキャストで日本のラジオ番組もダウンロードしてみたが、Amazon.comで買ったアメリカ発売iPodのディスプレイに、何事もなかったかのように番組名がきちんと日本語で表示されるのをみて、またやたらに感心。

その昔、アメリカで最初に自分で買ったノートPCのOSはWindows3.1の英語版。日本語処理できる妙なパッチを当てるソフトを搭載して使ってたが、メニューが文字化けしたり、インターネット初期の日本語ページがモノによってはまったく読めなかったりと、まあ無駄な苦労が色々あった。世界はやはりテクノロジーによって進歩したなあ、となんだか年寄り臭い感慨も浮かぶのであった。



2007/02/27 The Lost Tomb of Jesus「キリストの失われた墓」

映画「タイタニック」の監督、ジェームズ・キャメロンらが率いるチームが、イスラエルの郊外でイエスの墓を発見したとNYで記者会見。発見の詳細は番組になってDiscovery Channelで3月4日に放映されるとか。ま、しかしあそこも時々ずいぶんヨタな話を放送するから、うかつに信じる訳にはゆかない。

なんでも、洞窟で見つかった石灰岩の棺桶の墓碑銘と棺に残った残滓のDNAテストによって、洞窟がイエスの墓でありことが分かったのだという。もっと驚くべきは、マグダラのマリアと、その間に生まれた息子ユダの墓も一緒に見つかったというのであるが。1980年に既に発見されていたこの石棺には、「ヨセフの息子イエス」、「イエスの息子ユダ」と書いてある、そして「マグダラのマリア」の石棺には、マグダラのマリアと特定できるようなギリシャ語の記述があるというのだが。。。

前にも、「イエスの弟〜ヤコブの骨箱発見をめぐって」という本を読んだ事があるのだが、これも棺の墓碑銘に「イエスの弟」と書いてあるからキリストの弟だというお話。しかし、「イエス(ヨシュア)」という名前も、父の「ヨセフ」という名前も当時の古代ユダヤでは実に普通の名前。それが救世主たるイエス・キリストの歴史的実在を証明する証拠にはならないよなあという印象。

もっとも、今回の報道にも、すでに考古学者や宗教学者から、デタラメだと批判が相次いでいるらしい。確固たる信仰をすでに生きている人には、キリストの歴史的実在を証明してもらう必要などどこにもあるまいが、この手の熱心な探求には、やはりどことなく「ファンダメンタリズム」の匂いがする。時折伝えられる、ノアの箱舟の残骸が見つかったとか、紅海に沈むモーゼの出エジプトの証拠が見つかったなどのヨタ話もみんな同様。今回の話も実に胡散臭い。

Discovery Channelは、まだ見ぬ番組の予告編は常に面白い。しかし実際に見ると、大したことないのがほとんど。日曜の番組は果たしてどうだろうか。




2007/02/26 第79回アカデミー賞授賞式と「不都合な真実」

昨日の夜は、アカデミー受賞式をTVで。アメリカで見るのも実に久々。Wikipediaにも、すでに79th Academy Awardsという記事がアップされているのだが、ボランティアで更新する人も凄いもんだよなあ。

「Mistake」の項目では、「ディパーテッド」の解説で、元ネタの「インファナルアフェア」が香港映画なのに日本映画と間違えたとか、ペネロペ・クルスの出身について、スペインではなくメキシコと間違えたなどの小ネタも掲載されている。しかしまあ、普通のアメリカ人にとっては、日本と香港は、ほとんど区別つかないかも。スペインとメキシコくらいはさすがに判別つくとは思うのだが。

渡辺謙はカトリーヌ・ドヌーブと一緒にプレゼンターとして舞台に登場するなど堂々たるもの。もっともやはり「外国人枠」での登場という印象ではある。

Jennifer Hudson がアカデミー助演女優賞。この人は初めて見たが、素人タレント発掘番組「アメリカン・アイドル」できっかけをつかみ、「ドリームガールズ」のオーディション合格して出演し、大人気となったのだという。まさしく絵に描いたようなオーバーナイト・サクセス。このアメリカン・ドリームの爆発力には、やはり菊地凛子も勝てないのであった。こちらの新聞でも一面にデカデカと記事が。なんでも地元Chicago出身なんだとか。なるほどねえ。



最優秀ドキュメンタリーには、アル・ゴアが訴える地球温暖化防止を扱った「An Inconvenient Truth(不都合な真実)」が。ゴアはしかし、昔と比べるとずいぶん太った。Global warmingも問題だが、Personal Growingもなんとかしたほうがよいんじゃないか。「地球温暖化はもはや政治的な問題ではない、モラルの問題だ」とゴアのスピーチ。最近、「地球温暖化仮説」に反対する本を2冊ばかり読んだのだが、懐疑論に逆に懐疑的になり、地球温暖化は実は本当ではないかと思い始めてきたところである。

「An Inconvenient Truth」DVDのパッケージには、「温暖化防止のために我々が出来る10のこと」、という提言が記載されている。内容は、「電球を止めて蛍光灯にしよう」、「車を使わずにもっと歩こう」、「もっとリサイクルしよう」、「タイアの空気圧を適正に」、「使うお湯の温度を下げよう」、「過剰包装を避けよう」、「エアコンの設定温度を控えめにしよう」、「木を植えよう」、「無駄な電気は消そう」など、実に異論のないごく当たり前のことばかり。確かに政治的な提言ではなく、むしろ日本人なら「もったいない」の精神と理解できることしか提言していない。ただ、この当たり前のことが、世界一のエネルギー浪費国アメリカではちっとも当たり前ではないことこそが大問題。やはりアメリカ人にこそ、もっとこのDVDを見るように薦めたいな。

「Best Original Song」には、同じく「不都合な真実」の主題歌、Melissa Etheridgeの歌う"I Need to Wake Up" が。女性の歌手なのだが、受賞のスピーチで、「Thanks to my wife」と語るのでちょっとびっくり。客席の「奥さん」もキャメラが捉える。この人は、Wikipediaによると、同性婚を実践するゲイ・アクティビストなのだそうである。番組中では分からなかったが、司会進行を勤めたEllen DeGeneresもゲイなのだそうだ。なるほど。アメリカに住んでこんなことでビックリするようでは、まだまだ修行が足りませんな。はは。



主演女優賞の Helen Mirrenは、確かに「QUEEN」でのエリザベス女王がハマリ役。名演ではあったから順当な結果。主演男優賞のForest Whitakerは、まあ、一発芸がツボにはまって当たったという感じだろうか。監督賞のプレゼンターに出てきた、コッポラ、ルーカス、スピルバーグ3名は、まるでかけあい漫才のようなスピーチ。そういえば、ルーカスは監督賞獲ってなかったか。アカデミーは昔からSFには冷淡である。

最優秀監督のマーティン・スコセッシは、「タクシー・ドライバー」「レイジング・ブル」「キリストの最後の誘惑」など幾多の名作があり、ずっと昔にオスカーを手にしていても決して不思議ではなかったのだが、ようやく念願を果たした。作品賞も同監督の「ディパーテッド」。予告編しか見てないので、そんなに凄い作品かどうかは分からないが、全編日本語の「硫黄島」がオスカー取るには、いくら監督がクリント・イーストウッドとはいえ、少々無理があったかもしれない。

しかし、音楽やら編集など含めた全ノミネーション映画の中で、私が見たことあるのは、「Letters from Iwo Jima」「An Inconvenient Truth」「Pirates of the Caribbean: Dead Man's Chest」「The Queen」の4本だけだから、その点では実に語るにおこがましい話なのであった。紹介されるショットを見た限りでは、「Pan's Labyrinth」というのはなかなか面白そうだったが、アメリカでもDVDはまだ出ていないようだ。



2007/02/25 「霞っ子クラブ 娘たちの裁判傍聴記」

「お笑い裁判傍聴記」というのはなかなか面白かった。その流れもあって、週刊新潮に、裁判マニアの女性達が書いた「霞っ子クラブ 娘たちの裁判傍聴記」の広告が載った時にAmazon.co.jpに発注。届いたのはかなり前なのだが、ずっとそのまま放置していた。この週末に読了。

裁判の傍聴はしたことがないのだが、著者達のレポートはなかなか軽妙で実に面白い。面前で明らかになる、様々な他人の人生の真実を覗き見する不思議な感覚。裁判官や検事、弁護士の人間臭い横顔がレポートされているのも興味深い点。

そもそもは、本家のブログがあって、それを本にしたらしいが、ブログのほうもなかなか面白い。ただ、最近、共同著者でもあるオリジナル・メンバーのうち2名は「霞っ子クラブ」を脱退したらしい。ひょっとして仲間割れでもしたのだろうか。たった4人のグループの動向にも、世の中の無常を感じるな。


この本は、刊行当時から、「厳粛なる裁判を馬鹿にしている」「被害者の気持ちを考えろ」など、主として匿名の批判がネットで一時集中したらしい。裁判とは、大岡越前の頃のお白州ではあるまいし、そんなに平伏して受け止めなくてはいけないものだろうか。公開されている以上、傍聴もどんな感想持つのもそれは自由であると思うのだが。この本にカンカンになって激怒する人は、おそらくTVのワイドショーで気に食わないことがあると、突き抜けんばかりの筆圧で抗議の葉書を書き、送りつけてるような類の人々という気がするのだが。あるいは新聞の投書欄の常連とか。

それにしても日本では、この手の本を例外とすれば、裁判の実態はまったく一般に知られていない。裁判員制度なるものも、誰が望んだのか知らないが、なぜか急に決まって、最近週刊誌などでも周知する広告が出るなど着々と進行している。しかしあの制度を導入して、社会に何か益があるのだろうかね。

まあ、もともと、アメリカで起こったことは何でも日本でも起こる。エンロン事件後には、委員会制度など企業統治も似たようなのが急に導入になるし、最近では監査法人もヘマをやると潰れるようにもなった。法律面では、法科大学院制度も作られ、アメリカに負けじと弁護士を増やし、アンビュランス・チェイサーもたくさん育成し、今度は大訴訟社会を作ってゆくというのが日本の進むべき道なのだろうか。どうもそのへんになると、ちょっと違うのではないかという気がしてくるのだが。






2007/02/24 春より前にサマータイムが来るのかも。

Webで日本のニュースを読んでると、国公立大の2次試験が始まったとのこと。そういえば、そんな時期だったか。もう遥か昔、私が受験した時は、なぜか自分の高校が受験会場。阪急電車の駅を降りて六甲の山にずっと坂を登ってゆくのだが、ずっと通い慣れた道を登ってると、なんだか大学受験に行く気がしなかったっけ。ちなみに、村上春樹はうちの高校の先輩で、聞くところによると、この、海を見下ろせる高台にある母校の想い出が投影された描写のある小説もあるのだとか。

校門のところでは、担任の教師が立っていて、「おう、頑張れよ」などと言うし、試験の部屋が、これまたちょうど私が1年生だった時のクラスルームだったりしたもんだから、そんな点ではずいぶん心理的なアドバンテージがあった。中学同窓で高校の時に別れてしまった友人と何人も再会したり、それほど得意ではなかった数学で、3問全部完答したと意気揚々と会場を出て、予備校が配ってる正解を見たら、第一問の空間座標の答えが全然間違えてた事が判明して青ざめたり。受かったからよかったが、不合格だったら、懐かしいとも言えなかったかもしれない、まだ春浅き日の想い出。

アメリカでは、2005年にブッシュがサインしたEnergy Policy Actにより、今年から、Daylight saving time (DST:いわゆるサマータイム)の始まりが3月の第2日曜からになる。これまではずっと4月の第一日曜で、ちょうど去年、私がアメリカに4月に再赴任して次の日がそうだった。今年の場合は、3月11日。もうあと2週間でサマータイム。しかし、本日夕刻から、このあたりでは雪が降り出し、少しばかり積もってるのである。まだ春も来てないのにサマータイムってのもなあ。



2007/02/22 日本への確定申告。

昨年4月からこちらで給料貰い、183日以上働いていたから税法上でもアメリカの居住者。今回のTax Returnはアメリカでファイルすることになる。もっとも、駐在員の分は、会社が一括して会計事務所に委託しており、イントラのページから質問に答えて入力してゆくと先方で書類を作成してくれる仕組み。こちらのほうは手間いらず。

ただ、非居住者になった日本でも、住居を賃貸に出しているので不動産所得が発生している。これについては日本で確定申告の必要があることは事前に把握していた。出国前に「納税管理人の選任届け」なるものを納税地の税務署に提出済み。しかし、実際に確定申告に必要な書類を作成にかかると、あれこれ分からないこと多し。

国税庁ホームページには、情報があれこれ掲載されているのだが、年度の途中で海外に居住して不動産所得が発生したというケースについて専門に解説してあるわけではない。仕事柄、会計も法人税も専門である。ま、海外から日本の税理士に頼む必要もあるまいと自分で申告書類作成することに。申告所得を導く理論そのものは、法人税も所得税も実に似ているのは分かっていたが、ただ、申告所得税については、実際のケースに応じた細かいことが、やはり国税庁ホームページの一般情報だけではハッキリしない。かといって、逐一所得税の基本通達など調べる気もしないし。

例えば賃貸の収入は6月から発生しており、7ヶ月分と礼金の総額が総収入。減価償却費は内訳表見るに使った月数だけ按分で計上するようだ。では、自己の居住の用に供さなくなってから賃貸人を募集していた2ヶ月の費用は計上してよいか。収入を獲得するための費用であるからして、入居者募集の期間にしても損金とみなされてしかるべきと思うが、詳しい解説はどこにもなし。

いったん、募集期間も入れて費用を月数按分で計算し、収入から引いてみると所得が赤字になってしまう。7ヶ月分プラス礼金で収入がおよそ2百万弱あるわけだが、住宅ローンの金利というものが、いかに高いか再認識。赤字の場合、給与所得と損益通算できるのか調べると、土地に関する借入金利は損益通算できないとか何とかややこしそうな規定がある。面倒なので募集期間中の費用は除外して再度所得計算。

支払利息に関しては、月払いと賞与払いとあり、元本返済と金利と分けて月数按分計算するのにエクセルで手段表まで作成。世の中には悪意で脱税してる輩も大勢いるのに、私は実に真面目だなあ(笑)。ま、ようやく収支内訳表を作成し、4月までの源泉徴収票からのデータを使い、国税庁ホームページ申告書作成コーナーに入力して確定申告書を作成すると、支払い税額は1万円にも満たない。このまま放置しようかとも思ったが、駐在から帰国後は、休止している「住宅借入金特別控除」を再開しなければならないし、まあ仕事の立場上もコンプライアンスを考えねばいかんよな。という訳で、申告書は海外郵便で、税金の支払いは納税管理人に立てた妹にこれまた郵送で依頼。

しかし、なんと。送付してから、国税庁の申告書作成コーナーの注意書きを再びチェックするに、「非居住者は利用できない」と書いてある。そんなことを今更言われても困るのだが、では「非居住者」はどうすればよいのか。申告書作成コーナーで作成する何の部分が使えないのかも書いていない。自己申告納税制度を標榜してるのに、非居住者については税理士雇わないと申告できないというのも、実に不可思議な話ではないか。

ま、今更そんな事言われても、もう国際郵便で送付しちゃったよ。もうあとは知らん(笑)。文句があったら更正するなり好きにしてくればよいだろうと開き直って放置することに。基礎控除の計算など、非居住者特有の調整項目があるのかもしれないが、そんなことはもともと国税庁ホームページの説明にも書いてない。まあ、所得の計算が間違ってなければ、理論的にはそんなたいした増差になるはずもないだろう。とはいえ、送付してから、何か計算に根本的な誤りがなかったか心配になってくるのも確かなのであった。



2007/02/21 電話代の請求が倍になったと思ったら

月曜から急に気温上昇。ついこの前までマイナス10℃やら20℃だったのに、本日など日中は8℃。おかしなものでこれだけ差があると、まるで春が到来してシャツ1枚でも外歩けるような気さえするが、やはり8℃ではちょっとまだ寒いか。

AT&Tから電話代の請求明細がメールで届いた。そんな電話するほうでもないので、DSLのネット接続料込みで普通は70ドル程度。今回請求は、なぜか140ドル。冬場にガス代やら電気代がかかるのは理解できるが、なんでそんなに高いんだとwebのアカウントサービスに接続して明細見ると、なんのことはない、先月の請求が未支払いになっていた。2ヶ月分の請求が来たら、それは倍になるのも道理だな。はは。

しかし、なんで先月払い忘れたのかと考えてみたら、そういえば、だいぶ前にe-billにして、請求書を郵便で受け取らない選択したような記憶が。請求メールだけもらってそのまま失念してたのかもしれない。webからカードで即日支払して一件落着。やはり紙で請求来ないと忘れる危険がある。

請求チェックのついでに、インターナショナルコールの明細を見ると、オーストラリアに24分電話して1ドル92セント。日本に8分電話して64セント。1分10セントもしない。なんだかずいぶん安くなったもんだという印象。以前の駐在時は、SPRINTやらMCIやらAT&Tが毎日のように電話かけてきて、国際電話のキャリアを自分のところに替えたら、リベート・チェックを50ドルやる、70ドルやるなどとやかましく売り込みしてたもんだが、競争が行き着くところまで行って低値安定したというところだろうか。


2007/02/19 「クマムシ?!―小さな怪物」

月曜はPresident dayの祝日。06年度の過去日記ログをようやく整理。出来合いのブログサービス使ったら、自動的にカテゴリー別に編集されてゆく訳で、手作業でHTMLファイルを切り出すとは、まったく今時何やってんだとも思うのだが、まあ、いまさらblogに移行するのも面倒だしと、絶滅してゆくネアンデルタール人の如き感慨など。

「クマムシ?!―小さな怪物」(鈴木忠/岩波書店)読了。日経新聞だったかの書評で見て購入。

「クマムシ」というのは苔が生えた湿った場所や水辺にいるプランクトンのような微小な生物。昆虫でも節足動物でもない。分類上は、緩歩動物門というクマムシ類だけで構成される独自の門のなかに入るのだそうで、実に変わった生物だ。本の帯には、「乾くと樽型に変身、真空にも放射線にも耐え、レンジでチンしても平気 〜 クマムシ不死身伝説の真相は」などと興味深いキャッチが記載されている。

この本は、クマムシ研究の専門家である著者が、このクマムシの興味深い生態について語る本。世界中にもクマムシの専門家はそんなに数がいないらしいが、学問というのも実に細かいところまでカバーしているもんだと、ある意味感嘆する。この本を読んでも、我々の実際の生活には何ひとつ役立たないが、だからこそ面白いのだという気がする。科学的な研究には、また別にちゃんとそれなりの意味があるのだろう。図版も満載で、何の予備知識がなくとも読めるところもなかなか結構。



2007/02/18 雪の中、危機一髪で間に合った出張。

本社から来た出張者のアテンドが月曜の夜から。その夜遅くからスノー・ストームが始まり、火曜の朝、ホテルに出迎えに行く時には外は一面の雪。除雪があちこちで間にあっていない。乗っているLincoln LXは後輪駆動で、これが面白いように雪道で滑る。氷の上で働くABSも実に異様な感覚。オフィスまで、いつもの倍以上かかってしまった。

雪はなかなか止まず、オフィスも3時にクローズすることに。夜の会食も参加者と場所を変更して。雪の中を運転して帰らねばと思うと、さすがに飲む気がしないなあ。ま、ちょっとは飲んだのだが。

水曜朝は快晴。雪を降らせた雲は東に去った。ただ問題なのは、その雪が去った東海岸に今朝のフライトで出張者を連れて飛ばなくてはならないこと。昨夜のうちに携帯電話にUnitedのシステムからメッセージが入り、乗るはずだったフライトが既にキャンセルになっていることは把握していた。昨日のフライトもほとんどキャンセルされており、ゲートはごったがえしている。

朝8時半に空港に着いて、スタンバイしたり予約の変更をしたり、何度もRed Carpet内の窓口と往復してドタバタ。昨日からのキャンセルの嵐で、予約システムも大混乱。係員によっても言うことが違い往生したが、出張者のチケットを確保。自分もスタンバイしたフライトに最後の最後になって乗れたのが午後の2時。これに続く夕方からのフライトはまたキャンセルになっていたから、まさに綱渡り。危機一髪で間に合ったというところ。お昼も食べそびれて、これまた実に消耗した。

ホテルはマンハッタン。部屋は狭いが造りはよく考えられており、なかなか快適。木曜、金曜と、夜の会食に出るほかは、ホテルの会議室に缶詰となって打ち合わせ。金曜の夜にようやく全日程終了。

土曜の朝、出張者はLimoでJFKまで。私はホテルの前でタクシーを拾い、LGAまで。ゲートはユナイテッド便だと告げると運転手は、「JetBlueじゃなくてよかったな」と笑う。水曜のJFKでこのJetBlueエアラインは、着陸後のオペレーションが大混乱し、飛行機に乗ったまま乗客をゲートで下ろすまで、ひどい便だと10時間近く待たせたのだ。議会で、乗客に飛行機から降りる権利を明示する法律を作る動きが出るなど、結構大騒ぎになっている事件であった。ゲートの雪かきが間に合わなかったのではないかと思うのだが、10時間も機内で待たされるくらいなら、最初からキャンセルしてもらったほうがありがたいよなあ。

土曜のフライトは定刻通り。午後に帰着したが、もう何もやる気がせず、ただグッタリと。日曜の本日は、残務整理のため、朝から午後2時まで出勤。明日の月曜は、President Dayの祝日だ。

ふと自分のページのカウンタ見ると、「1212120」。本当は「1212121」にしてからスクリーンショットを取りたかったのだが、リロード防止機能がついてるのでカウンタは進まない。10分後、CSTで午後2時過ぎにもう一度アクセスすると、すでにして「1212122」であった。