『AILAA』/YEN 制作ノート〜音の遠近法

 かねがね一度はしてみたいと思っていた(どこかで言ったよーな・・・・)現地フィール ドワーク&自らも加わったライブセッション録音、そしてサンプリング東京再構成と でも言ったふうなアルバムを作ることができました。

 事の始まりは3年ほど前から始めた僕のライブ『Yen Calling』での小林(由明)さ んとの出会いでした。このころ僕は自らのヴォーカリゼーションのスタイルをいろい ろ模索している時期で(それは今も続いていますが)、そのヒントにはいわゆるエスニ ックな物も多く含まれていました。ちょうどその頃小林さんも音楽を中心に"彼の地" に"ハマ"り始めていた頃で、彼の地の音楽を数多く聞かせてもらっていました。その うち彼が彼の地で独自にDAT録音してきた物をサンプリングして曲を作って遊んだ りしているうちに、コリャ自分でもぜひ彼の地に行ってフィールドワークしなくて は、との思いが募ってきた頃、いよいよ今回のアルバムの話が持ち上がりました。

 と言う訳で、ミュージシャン、エンジニア、スタッフを含め総勢4人の極小集団は 成田を発ち一路マラケシュへ!

 彼の地では6組のバンドというかフォルクローレのミュージシャンの音を主に録音 してきましたが、それだけに留まらず、街頭や環境音いわゆるSE、そしてもちろん 僕自身も加わっての『Yen Calling in +++++++』とでもいったふうなセッシ ョンも録音してきました。そしてその多くがかねてよりしたかったバイノーラル録音 で成されました。作る(再構成する)音楽のタイプとしては「アンビエント(環境音楽)」 をヒントにした物にしようと思っていたのですが、さらに3D、バーチャルな感じを 付け足したいと思ったのです。(エンジニアの岡部潔くんが自作のダミーヘッドを持 ってマラケシュの町を歩く様は実に異様でした。当然のごとく周りは黒山の人だか り。ビデオを見せたい!)

 ということですったもんだの約2週間の現地での作業は終わり、パリなどに目もく れず一路また東京へ!

 これらの音を東京に帰って再構成する作業は実に楽しいものでした。単に東京にい てCDやその他の音源からサンプリングして作るということはよくしてきたのです が、今回はひとつひとつの音をサンプリングして聞く度に、現地での人の顔、風景、 風、その他諸々のことが体を駆け巡り、魂はTOKYO〜+++++++間を行ったり来 たり(その直前中国にも行っていたせいか少しばかり北京にも立ち寄らさせていただ きました)といった風情でタイトなスケジュールの中「早く作らねば!仕上げなけれ ば!」とは思っているのですが、ついついボーッとして夢の中に埋没してしまうので した。改めて僕(ミュージシャン)にとって作る作業そのものが一番楽しい事なんだな あと再確認させてもらいました。(スンマセン、贅沢です!でもこの気持ちがアルバ ムから感じてもらえれば大変うれしいですが)

 こういう現地でしかもスタジオ以外の場で録音された非常にレアな音、音楽と、今 僕自身が住む東京でのコンピュータを使ったDTMの作業。言わばまったく対極の周 辺にある音楽表現ですが、僕にとっては今ここの部分が一番面白いのです(オオーこ れはワシの"edge ofchaos"か?)。この両極端の表現方法を自分の声、体を通じてミ ックスしていくという方法は、言わば僕にとっての音楽の"遠近法"です。このことを 続ける事によって自分自身もどう変わっていくかとても楽しみでもあります。

 最後にこういった機会を作っていただいた、日本、彼の地のスタッフに、そしてこ のアルバムを買っていただいたオーディエンスのみんなに感謝を込めて。

『AILAA』
福岡ユタカ('97年6月2日 自宅にて)