Half Moon(「飲めや歌えや雑文祭」参加文)

Half Moon

月を見るのは好きだ。それが喩え三日月であろうが満月であろうが。
尤も、こうして今日見る月は月見る月ではない。所謂下弦の月。
時間は27時過ぎ、こんな時間に月を見るほうがどうかしている。

秋でもないのに一人寂しく酒など飲んでいると気が滅入ってくる。
せめて月を迎え入れ、自分と影と、三人で飲もうじゃないか。
月は酒など飲まないし、影は私の真似をするだけ。とは言え、
こうして共に酒を飲むほどに其々人格を帯び、会話も弾むものだ。

私が寂しさを愚痴れば影がそれを笑い、月がそれを諌める。
そうして酌み交わしながら寂しさを紛らせるのだ。

そのうちに空が白み始め、それと共に頭はどんどん重たくなる。
頭の中で100人のデーモン小暮がシャウトするような騒ぎになる。

そろそろ三人の飲み会もお開き、明けていく空に月も光を
薄れさせながら消えていき、影もその姿を失っていく。
今日もまた、一日が始まろうとしている。
私も一眠りをしてせめて頭痛を紛らせようか。
今日は神が与え給うた第七日目なのだから。

月よ影よ、また酌み交わすとしようじゃないか。
Night time's past, still it lasts Moon Live!

・作者から一言('02/06/16)

ひょんなことから「飲めや歌えや雑文祭」というものがあることを知り、
「駄文書き」を自称することだし参加してみたくなって書いてみました。
詳しくは該当ページを参照していただくとして、ここでは簡単に解説(言い訳)を。
先ず、テーマとした酒……じゃない、歌は小暮伝衛門(言わずと知れたデーモン閣下)の
「Half Moon」です。この歌は元々、李白の「月下独酌」を下敷きとしていますので
私流に勝手に解釈してみたわけです。その詩については下で解説しておきます。
で、縛りは「頭の中で・・・しているような」。閣下に敬意を表して登場していただきました。
もう一つの縛りは「決め台詞」。これは勝手に拡大解釈させてもらい、R・キャパの
「神はこの世を六日間で創り給うた。そして、第七日目には、二日酔いを与え給うた。」を
織り込んでみました。それと、最後の英文は閣下のHalfMoonから持ってきました。
ふぅ、ちょっと遅くなりましたがやっと終わりました。
#実はこれに辿りつくまでに二本書いて没、構想で終わったものが二本...

月下獨酌

 
花間一壷酒      花間 一壷の酒
獨酌無相親      獨り酌みて 相い親しむ無し
擧杯邀名月      杯を擧げて名月を邀え
對影成三人      影に對して三人と成る
月既不解飲      月 既に 飲むを解せず
影徒随我身      影 徒に 我が身に随う
暫伴月將影      暫く月と影とを伴い
行楽須及春      行楽 須く春に及ぶべし
我歌月徘徊      我歌えば 月 徘徊し
我舞影凌乱      我舞えば 影 凌乱す
醒時同交歓      醒むる時 同に交歓し
醉後各分散      酔いて後 各々分散す
永結無情遊      永く無情の遊を結び
相期遥雲漢      相期す 雲漢遥かなり
'02/06/16 by 清水悠