晴れた午後、紅茶の美味しい喫茶店にいつもの仲間が集まった。私も、
仲間と語らううちに今日は月蝕だという話になった。そのまま話の流れで、
道中美しい満月を見ながら(湖に写る月の美しさと言ったら! )、店に着いた。
ほどなく月が欠け始めた。ふと、圏外になっている自分の携帯電話を<妹>が
嬉しそうに彼氏に電話を掛けて楽しそうに様子を話す<妹>を見ていて、私も
残念ながら彼女は電話に出なかったけれど、できれば月蝕が終わらない中に
月の蝕まれていく様子は店の中から食事をしていてもよく見えた。
そうこうするうちに食事も終わり、後数分ほどで皆既になるという頃には
暗さに慣れてきた目に僅かに残っていた光も穏やかな闇の中に吸い込まれて
思わず感動して、<妹>と顔を見合わせた。我知らず、涙が流れていたのかも |
半ば魅入られた様に赫い月を見ていた私の耳に、話し声が遠くから聞こえる。
そこにげんちゃりに乗った若者の集団が通過。<妹>と二人で「おまえら、
「素晴らしい」とはしゃぎ回る<妹>に「でも彼氏と見たかったんじゃない?」
いつまでもそこに居るわけにもいかないし、道が順調なら皆既が終わる頃には
帰り道の途中で、彼氏に電話を掛けた<妹>は家に着いても話し続けている。
その癖、テンションは上がりっぱなしで取り付く島もありはしない。
その<妹>に見送られ、私は自分の家へと向かった。途中、抜け道に利用した |
・作者から一言('00/11)
実はこの話、実話なんです。勿論心理描写などは創作ですが。
月蝕を見に行った日の印象と、ラストシーンを絵にしたくて
私のサイトで先行公開をしていましたが、成瀬さんに素敵な ・追加('01/09)
残念ながら成瀬さんの「蒼の館」は休館になりましたので、 ・更に追加('02/02) レイアウト及び、タグをちょっとだけ整理。ついでにリンクも整備。 |