2024.8.12
楽曲エッセイ:
Expecting To Fly/Buffalo Springfield 羽の縁に立つ?
初めて聴いたのは1978年の夏であった。
それまでレコードを持っていなかったバッファロー・スプリングフィールドを聴いてみようと思い立ち、コンピレーション・アルバム "Retrospective" を銀座山野楽器で手に入れた。
この曲は1967年リリースの彼らの2ndアルバム "Again" に収録されているニール・ヤングの作品で、彼の最高傑作は?と問われればこれを挙げたい。
心を捕らえたのはコード進行で、2番目に来るマイナーコードである。
メジャーから始まってマイナーへの変化は多々あるが、この変化球は初めてだった。
当時は何を語っているのか解らなかったが、冒頭の一節 "the edge of your feather" はとても美しい響きがあった。
それから暫くした或る日の朝、ラジオニュースは、南米(?)の山中に飛行機が墜落した事を伝えていた。
なぜかその日は朝から晩まで "Expecting To Fly" が頭の中をグルグル回っていた。
おそらく "Fly" が連想ゲームのように繋がったのだと思うが、それ以上にこのコード進行が山中への墜落という状況と離れがたいものになっていた。
頭の中ではおよそ1時間毎に遥かなる現地の様子が浮かんでは消えて行った。
その後、この曲を聴く度に少しづつ意味が判ってきて、最近、歌詞検索で確かめてみた次第である。
一見、失恋がテーマに思えたが、ニール・ヤングの詞は比喩が深過ぎて様々なシナリオが浮かんでくる。
いつも引っ掛かっていた "Fly" に、はっと気が付いたのである。
飛行機が墜落して生存者が山中で見た幻影だとしたら?
実は1985年のJAL123便の御巣鷹山墜落事故で、小学校の幼なじみだったI君が亡くなっているのである。
I君には婚約者が居たとの事である。
今年は亡くなってから39回目の夏を迎える。魂よ安らかに。
Expecting To Fly
君は君自身の羽の縁に立っていた
空に向かって飛び立とうとしていた
僕は手を振ろうかどうか迷って、笑うしかなかった
君は行ってしまうんだろうな
夏が来ると気持ちが優しくなって
僕らはさよならを言った
そんな気持ちで過ごしてきた年月は
悲しみで幕を下ろした
悲しみとともに
僕はとても立っていられず
つまずき、地面に崩れ落ちた
笑うことさえ辛くて
手探りで見つけた愛に手が届こうとしていたのに
消えてしまった
君無しで生きていくなんて
わかるかい、僕はここで果ててしまう
君に愛を伝えるために
わかるかい、やってみるよ
僕も飛び立つよ。
written by Neil Young
from "Again"、"Retrospective"
youtube
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