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おわりに

 今回の自転車ひとり旅はサイクリング中のふとした思いつきが引き金となり、単に「行けそう」という気分だけで行動を起こした。行動を起こした後は、あたかもボールが坂道を転がるようにひとりでに転がっていった。坂道には想像もしていなかったような沢山の障害物が横たわっていた。ボールはそれを見事に乗り越えて我が家というスタート地点に戻ってきた。ボールは自力で障害物を乗り越えて戻ってきたようにみえる。しかし、冷静に振り返ると、ボールが無事に戻ってこられたのはたびかさなる幸運と大勢の人たちの善意という支えがあったからだということがわかる。福島で9つのトンネルを無事通過できたのは幸運以外の何ものでもない。青森で深夜寒さに凍え死にそうになったとき、そっと温かい手をさしのべてくれる人がいた。釜石と大船渡の間の国道で夕方、冷たい雨にびしょ濡れになって憔悴しきって自転車をこいでいたとき、自分の車に乗せてくれたのも一面識もない通りすがりの人だった。またとない幸運とこれら大勢の人たちの善意がなかったら、ボールは我が家というスタートラインには二度と戻って来られなかったかも知れない。当然のことながら、人は皆、運という自分の力ではどうすることもできない要素と大勢の人たちの善意によって生かされている。この当たり前のことを今回のひとり旅によって再認識することができた。旅でお世話になった大勢の方に心からお礼を申し上げたい。本当に有り難うございました。

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