これまでのあらすじ 
「梅川」と「忠兵衛」はやっと新口村にたどり着きました。この村は忠兵衛が生まれ育った故郷です。公金に手をつけてしまった忠兵衛には追手が迫っています。この村にも探索の手が回り、すでに二人の噂も伝わっていました。梅川を張り合う「八右衛門」までもが追って来ています。
二人は死ぬ覚悟ですが 死ぬ前に故郷に行きたい、亡き母親の墓参りに行って嫁と姑の対面をさせたいと思って来たのです。
二人は昔からの知合い忠三郎を頼りますがあいにくの不在、彼の「女房」に忠三郎を呼びに行ってくれと頼み留守家に身を寄せます。障子から外を窺うとまた雪、そこへ「道場参りの人々」が通り過ぎて行きます。その道場参りが誰なのか忠兵衛が昔を懐かしむように語り説明していると、父親「孫右衛門」が通りかかりました。二人は格子越しに手を合わせ、涙にくれます。
そのとき孫右衛門が薄氷に滑って転んでしまいました。梅川が外に飛び出して上り口まで連れてきます。足を洗ったり、鼻緒をすげたり親切にしてくれるこの女性が誰なのか孫右衛門には分かりませんでしたが、自分の舅に似ているという話を聞き、やがて目の前にいる女性は嫁なのだと気付きます。
涙を押し隠し苦しい胸の内を語る孫右衛門。梅川は忠兵衛に会わせようとしますが、会えば世の義理で私が縄をかけねばならな
いと孫右衛門は拒みます。ならば顔を見ないようにと二人に目隠しをして親子を引き合わせます。抱き合う父と息子・・・
「追手」
が迫っているのに気付き、孫右衛門は村を抜ける近道を二人に教えます。だんだん遠ざかる息子と嫁をいつまでも見送り、どうか無事で逃げてくれと孫右衛門は手を合わせます。
|