第十企画:チコタン〜僕のお嫁さん



私が小学生の頃、音楽の授業である合唱曲を聞かせてもらった事があります。
タイトルは「チコタン」。
 
この合唱曲は、1番から5番がそれぞれ別の曲になっており、ストリーを展開していきます。
歌詞や楽曲をそのまま乗せると著作権の問題なども発生する恐れがあるので、概要だけの説明とさせて頂きますが、現在もCDで入手可能ですし、検索エンジンで「チコタン」を検索するとアホほど出てきます。
 
bP:なんでかな?
これは、少年がチコタン(本名:ちえこ)に恋しているという事を自覚する歌です。
そして、どうしてチコタンが好きなのかを自己分析します。
 
チコタンは飴玉みたいな目で、マシュマロみたいな鼻をしているらしい。
そして、身長はクラスで低いという肉体的特徴を持っているようです。
キャラクター的には、よく笑う明るいキャラクターの様です。
 
少年は、このチコタンの事が食べてしまいたいくらい好きだと表現しています。
 
「僕はあなたを…食べてもたろか!
 
少年らしいといえば、少年らしいのですが、思わず『パリ人肉事件』を彷彿させる表現です。
 
 
bQ:プロポーズ
これは、少年のチコタンへのプロポーズです。
実際にはプロポーズはしていないとは思うのですが(後ほどしている)、少年がどれくらい真剣なのかは、彼が誓っている内容を見れば一目瞭然ですね。
 
・勉強する
 わかりやすいです。まるで、子供が親におもちゃを買ってくれたら勉強するから!と言ってるみたいです。
 つまり、それくらい真剣なんだと…。いやいや、彼の場合、チコタンの為に勉強するのでしょう。
 チコタンを嫁にもらうのにアホではアカンと思っての決意に違いありません。
 
・よい子になる
 これで、少年がガキ大将である事がわかります。
 自分でも悪ガキである事を自覚しているくらいなのですから…。
 もう少し成長し中学生くらいになると「俺は不良や」と勘違いするヤツもいるのですが、小学生ではなかなか居ないでしょう。
 ですから、きっとクラスの女の子のスカートをめくったりする極悪な子供だったに違いありません。
 親にテストを見せないとか、宿題があるのに「今日はないねん」とか…
 
・そうじもさぼらない
 そうじの時間になるときっとほうきを使って、悪友とチャンバラをしていたに違いありません。
 いや、ほうきをバット、雑巾を丸めてボールにしての野球かも。
 兎に角酷いヤツです。
 
・ハナクソを飛ばさない
 言語道断です。
 公害を撒き散らしている様なガキです。段々許せなくなってきました。
 って、大体の子はこれくらいやってますね。
 まあ、食わないだけマシかも知れません。
 
・女の子を泣かさない
 これは小学生レベルでの「泣かさない」なのでしょうね。
 まさか玩んでポイする様な事はないと思います。
 きっと、「やーい、ブス!」とか、ちょっと発育のよい女の子に「ボイン星人!」とか言って、泣かせていたのでしょう。
 この少年の素直な性格から、殴るなどはやっていない様に思えます。
 
bPではチコタンのキャラクター、bQでは少年のキャラクターが明らかになりました。
 
 
bR:ほっといてんか
ここで彼は失恋してしまいます。
それも、彼自身の問題ではなく、彼の家庭環境が原因で彼は失恋してしまうのです。(ただの勘違いですけど)
なんとも許せない話です。
本人の問題ではなく、彼の家庭環境が恋愛に影響するなど…。
それでは、彼の家庭環境の何が問題だったのか?
 
・核家族
・家業
 
上記の2点が問題だった様です。
核家族、つまり彼は跡取息子であるわけです。当然、親の老後の面倒も見なければならないのですが、年端も行かない子供がそれを意識するとは思えません。
そうなると最大の問題は家業。彼の家は、
 
魚屋
 
何故、魚屋がダメなのか?
実はチコタンは魚が嫌いだった様です。
そんな事だから、クラスで一番背が低いんだなんて事は言ってはダメです。
私は魚、牛乳が大嫌いでした。ほとんど口にしていません。しかし、平均よりデカイです。
 
この中で少年は母に対して「何で一人しか生まんかったんや!」と怒りをぶつけています。
 
少年よ、それは母だけではなく、父にも問題あるんだぞ。
 
 
bS:約束
ここで彼は起死回生の大逆転をやってのけます。
魚が嫌いなチコタンは、エビ、カニ、タコは好きだったのです。
そこで少年は、自分が魚屋を継いだ暁には、エビ、カニ、タコしか売らない魚屋(というのか?)にする事をチコタンに約束するのです。
 
するとチコタンは、にっこり笑い、オッケーと返事をするのです。
 
そして二人は指きりげんまんをするのです。
※げんまん【拳万】約束を必ず守るしるしとして、たがいに小指と小指をかけあわせてひっぱりあうこと。
 
個人的な意見を言わせていただくと、チコタンは少し変った性格をしていますね。
魚が嫌いだから、魚屋の息子はダメ。でも、エビ、カニ、タコは好きだから、それしか売らない店ならいいという考え方。
お前、少しは男の為に嫌いな物も好きになる努力はできんのかい!と説教してやりたいです。
しかし、なんとほのぼのしている事でしょう。
少年の純愛が微笑ましく思えます。
流石は、小学校で聞かせる合唱曲です。
 
多分、私がこの曲を初めて聞いたのは、小学校の3年生か4年生だったと思います。
放送部のお姉さんがお昼休み、給食時間に音楽を流してくれていた時に初めて聞きました。
 
クラス中、爆笑の渦。
確かメニューはカレーシチューだったと思います。
ヤホー!ヤホー!と連呼し、うれしさを力一杯表現した少年にクラス中が共感したものです。
拍手すら起こりました。
 
ほんと、ここで終ってくれていれば…
 
 
bT:だれや!
少年は暗い声(実際に歌ってるのは女の子なんだけど…)で嘆きます。
 
結婚しようって、約束したのに…
結婚したら、日本一の魚屋になろうって…
指きりしたのに…
 
おいしいエビ、カニ、タコ食べさせたろうって…
勉強もしたし、ええ子になったのに…
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
チコタン死んだ
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
はあ?( ̄□ ̄;)
マジですか?楽しかった教室の雰囲気が一変しました。
最初、理解できませんでした。
するともう一度…。
 
チコタン死んだ
 
間違いありません。
横断歩道で、ダンプにはねられたみたいです。黄色い旗を握ったまま…。
 
少年は怒りに震えます。
少年は泣きます。
チコタンは花の中で、写真の中で笑っています。
 
笑うな!チコタン!
 
少年のやり場のない怒り。
犯人はわからない様なので、恐らく轢き逃げだと思います。
 
僕のチコタン、殺したん誰や?
僕の嫁さん、殺したん誰や?
 
少年の怒りが爆発します。
 
 
あほぅ!
 
 
教室では泣き出す女の子もいました。
さっきまで騒いでいた男の子もしゅんの介(しょんぼりしている)です。
 
こんな結末があっていいのか?
いや、こんな歌を子供に聞かせていいのか?
 
先日、玉屋で「チコタン」の話題を出したところ、知らない人が同世代でいました。
家に帰って、妻に確認したところ(妻は隣の小学校の出身)、妻も知らないという事でした。
 
この歌を知っている私は、幸せなのか?それとも…。
 
確かな事は、35歳になった今でも、私の記憶の中にチコタンは今も黄色い旗を握っています。
 
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