この人この1曲(一発屋)  (2010年7月16日)
    
(追加4曲はこのページの後半にあり)

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たった1曲の大ヒット曲だけという歌手がたくさんいます。  
いわゆる”一発屋”というよくあるテーマですが、今回はこのテーマについて、私なりに述べさせていただきます。
 たとえ1曲でも大ヒット曲があれば歌手としては大成功だと思います。
また歌謡ナツメロ番組などで、こういう一発屋の歌手の出演のおかげで一層楽しく感じることがあります。


花村菊江「潮来花嫁さん」
                柴田よしかず 作詞 水野富士夫 作曲(昭和35年)

 軽快で華やかな伴奏に続き、可愛いらしい声で♪潮来花嫁さんは ふーねでゆーくー♪と入り、♪ギッチラ ギッチラ ギーチラコー♪と擬音語のメロディーが印象的です。橋幸夫の「潮来笠」と同じ年に発売されたのも何かの縁でしょう。きれいな花嫁を乗せた舟が、川をゆったりと流れていく、昭和の姿が受けたのでしょう。      


大下八郎 「おんなの宿 
                 星野哲郎 作詞 船村徹 作曲 (昭和39年)  

この歌を初めてテレビで聞いた時、ジミな歌で、とてもヒットする歌とは思えなかった。それを大下が粘り強く唄い続け、何度も聞いている(聞かされている)うちに、深い味わいが出てきた。
2番の♪たとえ ひと汽車遅れても・・・・わざと遅らす時計の針は 女心の悲しさよ♪などグッと来る歌詞である。
大下八郎が煙突から吹き抜けたような声で、しっとりと歌ったのもよかったか。


松村和子 「帰ってこいよ」
                 平山忠夫 作詞 一代のぼる 作曲 (昭和55年)

長い髪にパンタロンはいて短い振袖姿(?)の女の娘(こ)が、三味線をかき鳴らし、かん高く通る声で ♪帰ってこーいよー ♪と歌っているのが印象的だった。
特に私は、3番歌詞の♪こーんなに きーれいな あーかね空♪ のところが好きです。
ヒットの要因は、お岩木山が見える日本のふるさと情景に、恋心などをうまくミックスさせたのがよかったのでしょう。
歌唱力のある松村が元気いっぱい歌っているのもいい。


久保田早紀 「異邦人」 
                           久保田早紀 作詞、作曲 (昭和54年)

2拍子系の心地よいリズムに合せて、トルコ風の流れるようなメロディーで♪子供たちがー 空にむかい・・・・・・・・ちょっとふり向いて みただけの 異邦人♪と久保田のちょっともの悲しい歌声が流れる。
今でもベストテン番組などでリクエスト第1位になるなど、非常に生命力の強い、歴史に残る名曲である。
軽快なメロディーを久保田が伸びやかに歌い、そしてアレンジもよく工夫されていて面白く、そのあたりが受けたのでしょう。
第2弾がないのが惜しまれる。


斉条史朗 「夜の銀狐」
                 水沢圭吾 作詞 中川博之 作曲 (昭和44年)

斉条史朗という歌手を知らなくとも、この歌を知らない人はいないでしょう。夜のムード歌謡でも一級品です。
♪ソーロ・グリース・デ・ラ・ノーチェ 愛しているのさー♪ と泣き叫ぶようなサビが印象的です。
ちょっとバラード風で、タイトルも”銀狐”などと変わっているのが面白い。
斉条史朗はナツメロ番組などにも出場しないので、久しぶりに 元祖のナマの歌声を聞いてみたい。


石橋正次 「夜明けの停車場」
            
丹古晴己 作詞 叶弦大 作曲 (昭和47年)

最初、歌の感じから舟木一夫が歌っていると思った。出だしのイントロがきれいである。ほんとに夜明けの停車場の雰囲気が出ている。♪嫌いでもないのにー なぜかー♪ のサビが印象的である。
静かながら哀愁ムードがただよい、せつない叫びが石橋のハスキーがかった声によくマッチしている。


追加4曲>(2010年8月23日)

矢吹健  「あなたのブルース」
                       藤本卓也 作詞、作曲(昭和43年)

この歌の特徴はなんと言っても、”あなた あなた” という言葉が、12回も出てくるところでしょう。
最初は悲しい胸のうちを静かに歌い、その後 ♪あなた あなた・・・♪ と感情を盛り上げていき、 ♪ルー ルルルルルラー♪ と最高潮に達し、最後に ♪あなーたの ブルース♪ とビシッと締めている。
矢吹がハスキーボイスで、何度も出てくる”あなた”を、聞き手に飽きさせないように強弱をつけて歌い、また作詞、作曲した藤本卓也の曲構成も見事である。  

千賀かほる 「真夜中のギター」
              
吉岡治 作詞 河村利夫 作曲(昭和44年)

昭和44年頃、ラジオの深夜放送で毎晩のように聞こえてきました。当時は「夜明けのスキャット」なども流行っていました。メロディーも単純で覚えやすく、また千賀かほるのやさしく、やわらかな歌声が耳に聞きやすかった。
真夜中の静かな雰囲気の中に、ギターの音が響き、♪愛をなくしてー 何かを求めーて さまよう 似たもの同士なのーね♪ という所が、深夜に一人でラジオを聞いている青少年に受けたのでしょう。


一節太郎 「浪曲子守唄」
                 
越純平 作詞、作曲(昭和38年)

一節太郎が和服の着流し、スポーツ刈りの頭で、浪曲調のあのしわがれ声で、♪逃げた女房に未練はないが お乳ほしがる この子が可愛い♪ と唄い出す。発売以来、まもなく50年を迎えようとしている。
この歌のヒットの秘密は下記だと思います。
  @まず歌手名、曲名が簡潔明瞭でわかりやすい
  Aイントロも古めかしい日本調で、メロディーも覚えやすい
  B歌詞のストーリーが哀れを感じさせて、日本庶民に受けた
  C”泣くんじゃネエ 泣くんじゃネエよ おいらも泣けるじゃねえか” 
       というセリフも効果的

この歌の作詞、作曲の「越純平」が遠藤実のペンネームであることを最近になって知った。
やはり、単純そうに見えるが洗練された遠藤メロディーである。
息の長い、ほんとに”一発屋”として1、2位を争う名曲である。


笹みどり   「下町育ち」
                   良池まもる 作詞 叶弦大 作曲(昭和40年)

 昭和40年代のお昼のTVメロドラマが全盛の頃に、悲しい身の上の芸者の悲哀を歌う名曲が生まれました。
♪三味いとー(チャッ チャチャ)踊りはー(チャチャチャ) 習いもするーがー 習わなくても 女は泣ける♪ と笹みどりが、小唄で鍛えたような甲高い声で、感情こめて、せつせつと歌っているのが印象深い。聞いているだけで、哀れさがヒシヒシと伝わってくる熱唱である。ヒットの要因は、正に、この笹の全身全霊をかけた歌唱に負う所が甚大である。もちろん、詞も、曲もよい。

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