『神道集』の神々

第四十二 摂州葦苅明神事

摂州難波の浦に夫婦が居住していたが、前世の行いが良くないため苦しい暮らしをしていた。 いろいろ手を講じたがどうにもならず、ついに二人は離別する事となった。
夫は難波の浦で葦を刈り、市に出て暮らしを立てていた。
一方、妻は縁者の世話で然るべき人に嫁す事になった。
妻が輿に乗って婚家に向う途中、夫が葦を背負って浜で休んでいるのを見つけ、「今日は父母の命日なので、追善の為にあの男に小袖をあげて下さい」と言った。
小袖を貰った夫が輿に近寄って御簾の中を覗くと、別れた妻の姿が有った。
夫は葦を棄て、
 君なくて葦苅けりと思より いとどなにわの浦そ住み憂き
と詠んで海に身を投げた。 妻もその後を追って海に飛び込んだ。
その後、二人は海神の通力を得て、難波の浦の葦苅明神として顕れた。
男体は文殊菩薩、女体は如意輪観音である。

葦苅明神

難波の浦は現在の大阪市中央区付近に相当するが、葦苅明神に該当する神社は現存しない。

本説話は『大和物語』[LINK]や謡曲『蘆刈』[LINK]などでも知られるが、夫婦が神と成る件は見られない。
なお、類話である「釜神事」では夫が釜神と成っている。
垂迹本地
葦苅明神男体文殊菩薩
女体如意輪観音