2015.8.29
”ゐれき” が ”えれき” になった理由

 えれき=エレキという響きは60年代の象徴であろう。
”エレキの若大将”という映画は、加山雄三自身がエレキギターを弾きこなすほどの腕前だったことで、それ以前のギターを抱いただけの人気スターの映画出演とは違っていたことも話題になったものである。ベンチャーズの影響は言うまでもないが、当時 ”エレキにしびれる”という語法は100点満点だったように思う。

 "ゐれきせゑりていと" とは平賀源内がオランダから江戸に持ち込まれた見せ物、”エレキテル” = ”elektriciteit” を日本語で表記したものだそうだが、頭の ”ゐ” は ”い” である。
であるから源内はオランダ人の説明を聞いて、イレキ...と聴こえていたのではないかと思われる。
エレキテルの中身はガラス瓶とそれを摩擦する機構が組み込まれており、発生した静電気をガラス瓶に蓄えたのちにそれを放電させて光る様を見せ物にしたものであるが、興味深々の源内ならばこんな現象にも気が付いたのではないだろうか? 
 ”あれ、ガラス瓶を擦ると埃が表面に集まってきたぞ、なんか細かい糸くずのような埃が、”ピッ” と立ち上がっているなあ” 
そこで源内はなにを連想したかは判らないが...

 ジミ・ヘンドリクスの1968年のアルバム、”ELECTRIC LADYLAND” に、”HAVE YOU EVER BEEN (TO ELECTRIC LADYLAND)” という曲があるが、”電気仕掛けの女達の島って行った事ある?” と表現すればよいのだろうか? なんとなく意味は判る。ただ、これが一文字間違えて "ERECTRIC" になると "勃起した女達の島?" になり、こちらの方がジミヘンのイメージにより相応しいような気がするし、”しびれる”。 
 ネイティブの発音に注意してみると、”ELECTRIC” は "イレク...” と聴こえるが、"ERECTRIC" は ”エレク...” と私には聴こえるのだが。
恐らく、当時エレキテルを発明したオランダ人のみならず、なにか物を擦ると空気中の埃が集まって来て”ピッ” と立ち上がる様を見て静電気というものを認識したのではないだろうか? そして ”立ち上がる、勃起する” 様を表現する言葉は "ERECT" があるが、何を思ったか、"ELECT" と少し発音を変えてみたのではないだろうか?
専門家の意見を伺ってみたいものだが、言葉の成立の順序として "ELEC" の方が後? 静電気の発見の際に生まれた歴史の浅い言葉なのではないだろうか?
 もしそうならば、日本では源内がエレキテルの復元に成功した1776年(安永5年)の ”ゐれき ELEC” が1960年代に ”えれき EREC” に先祖帰りしたことになる?。
すなわち、加山雄三は ”勃起の若大将” ということになり、青春映画としてのエッセンスをより的確に表現しているように思うのだが。

Mosriteエレキテル

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